倶多楽湖公園線 総合交付金A(改築)事業 倶多楽湖公園線立体プレハブ桟橋 架設工事 建設現場見学
倶多楽湖公園線の概要
倶多楽湖公園線は、登別市中登別町から支笏・洞爺国立公園内にある登別温泉街・倶多楽湖を経由し中登別町に至る延長約15kmの観光道路です。登別駅・道央自動車道等と登別温泉を結ぶ唯一のアクセスルートで、観光だけでなく、温泉街での緊急時には登別市外からの救急車・消防自動車などの緊急車両が通過する重要な路線です。また温泉街住民にとっては買い物などの地域に密着した重要な生活路線となっています。
倶多楽湖公園線は、観光バス等の通行車両が多いですが、現在の道路は線形が悪く急勾配区間を有しており、幅員も狭く歩道も無い為に歩行者や自転車など危険な状況での通行を強いられています。その為工事は、安全で円滑な交通の確保及び歩行空間を整備する目的で行われています。
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総事業費4,986百万円(道州制:185百万円/交付金:4,801百万円) 事業期間 平成16年度〜平成26年度 |
整備による効果
路線が整備される事により、線形改良並びに急勾配区間が緩和され、年間観光客300万人以上を数える登別温泉街へのスムーズなアクセスが可能になります。また、登別市内唯一の公的医療機関である登別厚生年金病院へ、救急搬送時のアクセス向上が期待されています。加えて、現況路線は周囲を急峻な地形に覆われており、大雨が降れば土砂災害や落石の危険に晒されてきましたが、線形変更を行う事で防災上の危険を解消する事が出来ると考えられています。
見学について
現場見学は平成24年11月2日、VISIT室蘭・苫小牧ブロックの室蘭工業大学、苫小牧工業高等専門学校の学生計22人が参加し行われ、倶多楽湖公園線 立体プレハブ桟橋の架設工事の現場を見学させて頂きました。VISIT室蘭・苫小牧ブロックでは昨年(平成23年度)も同工事現場を見学させて頂いており、現場訪問記を書かせて頂いています。(昨年度訪問記URL:http://www.jsce.or.jp/branch/hokkaido/visit/h2302.html)昨年度は立体プレハブ桟橋の架設手順を中心に訪問記をまとめましたが、今年度はどのような経緯で「メタルロード工法」が本工事に採用されたのか、そのプロセスを中心に構成します。
立体プレハブ桟橋(メタルロード)工法について
メタルロード工法は、主に中山間部の急傾斜面の道路拡幅に適した鋼製桟道橋で、狭小な道路工事においても部材の運搬・架設が容易で施工性に優れる利点があります。また、地形や植生など、自然環境への影響が最小限で済む点、手延式施工により、既存交通を確保しながら拡幅工事を行う事ができる点などの特徴があります。
立体プレハブ桟橋(メタルロード)の構造概要 |
メタルロード工法採用のプロセス
路線の工事においては当初、切土案、橋梁案、立体プレハブ桟橋案の3つが検討されていました。それぞれの概要・利点・問題点等を示すと以下の様になり、3案の比較検討により立体プレハブ桟橋工法が採用されました。
(1)切土案
概要: | 切土により線形を確保する案。現道交通の確保の為に2車線幅員の仮桟橋が必要。 |
利点: | 土工が主であり、高度な技術を要さない点。 |
問題: | 施工時に現道交通の確保の為に仮桟橋が必要な点。長大法面が必要で自然改変が大きい点。法面保護、緑化対策が必要な点など。 |
評価: | 切土法面の積極的な自然復元対策を行う事で環境への影響は縮小できる。線形も目標である最小曲線半径R=100m以上を確保できる。しかし仮桟橋の工費が高価な為事業費が大きくなる。 |
(2)橋梁案
概要: | 現道に影響無く構造物を施工し、道路線形を重視した案。 |
利点: | 平面線形が大幅に改善され、現況法面の落石対策が不要な点。 |
問題: | 最も工費が高い。上部構造施工時に、工事用仮設道路が必要。施工期間が長期化する。 |
評価: | 平面・縦断線形が大幅に改善され、現道交通に影響なく施工できるが、工事用仮設道路が必要となり、施工手順も効率が悪く工期が長くなる。工費が他案と比較しても圧倒的に高価である。 |
(3)立体プレハブ桟橋案
概要: | 現道に影響なく構造物を施工できる点。大掛かりな仮設工が必要とされない工法。 |
利点: | 平面線形が大幅に改善される。大規模な仮設を必要としない事から、比較的工期が短く、現道交通に影響を与えない区間では、拡幅方式を採用できる為、構造物の規模が縮小できる。 |
問題: | 突き出した杭が多数並ぶ事から景観性に劣る点。 |
評価: | 現道への影響が少なく、比較的工期が短くなり最も経済的な工法である。 |
整備後の現道を遊歩道に
これまで使われてきた現道は、新道の完成後は歩道として残される予定です。それにより温泉街から景勝地(紅葉谷)への散策路、のぼりべつ文化交流館(カント・レラ)への移動ルートを確保する事ができます。
終わりに
この工事は、道内観光の拠点である登別温泉へのアクセス道路確保の為のみならず、温泉街病院への安全な患者の搬送、及び温泉街住民の重要な生活道路を維持するという、大変な意義を持つ工事であると感じました。また国立公園内の工事であるが故に景観面におおける制約がある点など、初めて知る事もとても多かったです。VISIT事業は、私たち土木を勉強する学生が、実際に稼働している現場を見学できる数少ない機会であると思います。ぜひ来年は、今年よりもより多くの学生がVISITに参加し、自身が勉強している土木についての知識を深める機会になればと思います。最後に、企画運営に携わられた関係者の方々、及びお忙しい中私達にお付き合い頂いた企業・機関の皆様に感謝致します。
立体プレハブ桟橋(メタルロード) 塗装は景観に配慮した色使い |
全員で集合写真 |