北海道横断自動車道北見市橋梁上部工事、土の安定処理工施工および排水性舗装施工箇所見学
現場見学について
北見地区の現場見学会は当初11月9日に開催する予定だったが、悪天候だったため1週間延期し、11月16日に北海道開発局網走開発建設部北見道路事務所の方の協力の下、北見工業大学の学部生4人、大学院生2人の計6名が北海道横断自動車道北見市橋梁上部工事、土の安定処理工施工および排水性舗装施工箇所を見学させていただいた。
北海道横断自動車道で実施している自然環境保全対策および道路監視システムについて
現場見学を行う前に、北海道横断自動車道を建設するにあたって、どのように自然環境保全を行なっているのかについて説明していただいた。北海道開発局網走開発建設部では、植物に関しては、北海道横断自動車道を建設する際、工事箇所に存在する環境省・北海道レッドデータブックの選定種に関しては、株移植や切り株移植を行うなどの対策を行い、その後の時間経過などのモニタリング調査を行うことで、植物の保全対策が行われている。また生物に関しては、環境省・北海道レッドデータブックの選定種に対し、工事前後で生息状況調査の実施、移植を行い、その後のモニタリング調査を実施するなどの保全対策が行われている。
さらに、北海道開発局網走開発建設部では独自に環境保全に向け、北見道路事務所と工事請負業者と建設コンサルタントの三者による環境に係る協議を実施することで、工事区間における環境配慮事項等に関する勉強会が行われている。また、近隣小学校との植樹会、北見工業大学学生との植樹会など住民参加による植樹会・育樹会を行うことで、道路法面における緑化の効率化、地域の人々による道路への愛着を目指した活動が行われている。
以上のようなことを北海道開発局網走開発建設部北見道路事務所の方から教えていただき、私達工学者は世の為、人の為になるように活動を行うが、自然環境保全に向けた活動に関しても積極的に活動するべきであると再認識することが出来た。
最後に、北海道開発局網走開発建設部北見道路事務所管内の峠などに設置されているライブカメラおよび道路情報を管理する情報処理室が北見道路事務所内にあり、その中を見学させていただいた(図−1)。今まで、私達が旅行などの遠出をする際に利用していたライブカメラなどの情報が道路事務所内で管理され、市民の生活に有用な情報を提供していることを知り、貴重な体験をすることが出来た。
図−1 北海道開発局網走開発建設部北見道路事務所内にある情報処理施設 |
北海道横断自動車道北見市上常呂川橋上部工事について
北海道横断自動車道は、道央道と接続する千歳市の千歳恵庭JCTを起点とし、北見市までを繋ぐ高規格幹線道路である。その中で今回は、足寄ICから北見方面への建設される道路であり、周辺施設や市民の生活用水として取水している常呂川を跨ぐ、河川橋長179mの3径間連続PC箱桁橋である上常呂川橋の橋梁上部工事を見学させていただいた(図−2)。
当日は、施工中である橋梁の上部だけではなく、橋梁の内部を見学させていただいたことで、実際にプレストレスト・コンクリートがどのように施工されているのか見学することが出来た(図−3)。
> 図−2 橋梁上部工事の説明を受ける学生 |
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図−3 PC橋の内部 |
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土の安定処理施工および北海道横断自動車道北見市貴田の沢改良工事について
次に、橋梁や道路の建設等で発生する現地発生材(土砂)を再利用するために行う、土の安定処理施工現場を見学させていただいた(図−5)。北見市周辺から発生する現地発生材は含水率等の関係から、そのまま再利用することが出来ない場合がある。そのため、現地発生材を再利用するために固化材を用いた安定処理施工が行われている。まず、発生材の含水量の測定を行い、どの程度固化材が必要であるかの確認が行われる。その後、実際に発生材をホッバと呼ばれる機械の中に投入し、土質に応じ、設定した固化材(ここではセメントが用いられていた)を定量的に添加し混合することで、改良土の作成を行う。残念ながら、見学当日は安定処理施工が行われておらず、実際に改良土を作成しているところを見学することが出来なかった。しかし、既に作成された改良土が見学現場に存在しており、セメントはアルカリ性であるため、確実に発生材とセメントが混合されていることを確認するために、フェノールフタレイン溶液を改良土に吹きかけ、赤く発色することを見せていただいた(図−6)。ここで作成された改良土を盛土材や埋め戻し材、土地造成などに再利用されている。
図−5 土の安定処理施工現場見学 |
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土の安定処理施工現場を見学させていただいた後、北海道横断自動車北見市貴田の沢の擁壁工事現場を見学させていただいた。ここでは周辺が農地となっており、土地利用の制限が多いことから、壁面勾配を垂直に構築するアデムウォール工法が利用されていた。アデムウォール工法は、アデム(図−7)で補強された補強盛土体と壁面材の間に排水層を設けて施工を行う二重壁構造であり、壁面材に補強盛土体の土圧が作用しない構造となっているため、十分な締固め度を得ることが出来る工法である。様々な工法がある中、周辺の土地利用や環境保全を考え、工法の選択が行われているということを学ぶことが出来た。
図−7 擁壁工で使用されているアデム |
排水性舗装施工現場
現場見学の最後に、既に施工が完了し、平成25年3月頃に開通予定の自動車専用道である北見道路を見学させていただいた(図−8)。北見道路は、排水性舗装を採用しており、これによりハイドロプレーニング現象やスモーキング現象が排水効果により減少するため、事故の低減、走行安全性の確保が期待されている。しかし、排水性舗装では表層に使用される排水性混合物は空隙率が高いことから、砂や埃などが空隙に詰まった場合、排水性舗装の効果が無くなってしまうため、定期的に砂や埃を取り除くなどの清掃作業を行う必要があるということも教えていただいた(図−9)。
最後に、開通後は歩くことが出来ない自動車専用道を北見道路事務所の方のご好意で歩かせていただいた。普段では自動車専用道路を歩き、舗装などを見学することは出来ないため、非常に貴重な体験をさせていただくことが出来た(図−10)。
図−8 平成25年3月頃に開通予定の北見道路 |
図−9 北見道路で使用されている排水性舗装 |
図−10 北見道路上において撮影した北見道路事務所の皆様とVISIT参加者の集合写真 |
終わりに
今回私たちは、北海道横断自動車道北見市橋梁上部工事、土の安定処理工施工および排水性舗装施工箇所を見学させていただいた。見学では、北見道路事務所内の情報処理施設内や橋梁上部工事、橋梁の内部、土の安定処理工施工現場、排水性舗装を施した自動車専用道など、普段見ることや体験することが出来ない現場を見学させていただき、私達学生が講義等で学んだことが現場でどのように生かされているかということを見ることが出来、非常に貴重な体験をすることが出来た。今回は学生6名の参加であったが、このような貴重な体験をより多くの学生に経験してもらい、より土木への関心・興味を抱いていただきたいと思う。
<謝辞>
今回VISIT事業北見地区の現場見学会に快くご協力いただいた、国土交通省 北海道開発局 網走開発建設部 北見道路事務所の皆様には大変お世話になりました。ここに感謝の意を表します。