みなさんは砂場や砂浜で遊んだときにトンネルを掘ってみたことがあるでしょう。きっと砂のかたさや湿りぐあいで、掘りやすかったり堀にくかったりしたはずです。本物のトンネルも、地山(じやま)(トンネルを掘る岩や土のこと)のかたさ、トンネルを掘る場所などによって堀り方が工夫されています。その代表的な方法が、山岳工法、シールド工法、開削(かいさく)工法、沈埋(ちんまい)工法の4種類です。
ふつうのトンネルは、山岳工法と呼ばれる方法で掘られます。昔の山岳工法は、掘った地山がくずれないように木材で支え、そのあと木材を外しながらレンガや石を積んで仕上げました。大正時代にはレンガや石のかわりにコンクリートで仕上げるようになり、また昭和20年代の終わりには、木材のかわりに鋼材で支えるようになりました。
昭和50年代になると、ヨーロッパからNATM(ナトム)工法が伝えられました。これは掘ったあとにコンクリートをスプレーのように吹きつけたり、鉄の棒を地山に差しこむことによって地山の持っている強度を積極的に利用して支え、最後にふつうのコンクリートで仕上げる方法です。NATMは、地山の固さや崩れやすさによって、吹きつけるコンクリートの厚さや鉄の棒の本数を簡単に調節できるため、日本の複雑な地質に適した工事の方法として急速に広がり、現在では山岳工法といえばほとんどがNATM工法で行われています。
なお、固い地山では火薬を使って掘りますが、やわらかい地山ではドリルのような機械を使って地山を削るようにして掘ります。
NATM工法で建設された横浜市営地下鉄三ツ沢上町駅