土木学会誌11月号モニター回答

付録:デザインコンペの可能性と限界


 デザインコンペ、技術提案型プロポーザルなどは最近よく目にするようになってきた契約方式、意思決定システムである。ヨーロッパのデザインコンペでは提案する各国の文化、特徴が顕著に表れ、非常に興味深いものがあるようである。さて、日本の文化とは何だろう? 建築物、公共施設などにおいて、日本の文化が現れているものと言えば、やはり「木」だろう。先日、タンスを買いに行ったのだが、店員さんから家具を選ぶ時にナラやサクラなど木の種類で選ぶのは日本人だけだそうだ。欧米人にはそのような感覚は持ちあわせていないらしい。是非、耐久性や耐震性など諸々の問題を一つずつ解決しながら、コンクリートやアスファルトでは見せることができない日本の文化を木によって見せて欲しいものである。
(都市基盤整備公団 天野 昇)


内容も大変面白かったのですが、駐車することで上空からは自動車メーカーのロゴが浮かび上がって見える「料金のもらえる駐車場の提案」の写真が、何と言っても印象に残りました。その提案の賛否はともかく、このような大胆な発想を都市空間にまで行いうるシステムを持つことは、市民によるデザイン管理で竣功して何年も立たない建物を取り壊す大胆さと併せて、ヨーロッパのすごさを感じさせます。
 デザインコンペというシステムは、「強烈なイメージをもつものが一等となり、実際につくってみると都市の中で調和しない」(日本で有名建築家が設計したビルを見ても感じることがある)、「一般の公共事業では採用しにくい」、「選定されても実施率が低い」などの他にも、多くの問題点があると思います。また、個々のデザイン意識が高いヨーロッパだからこそこのシステムの導入が可能だ、という見方ができるかも知れません。しかし、このシステムが持つ長所(自由競争による質の向上)と、上記の課題に対する有効な解決策を合わせれば、どの国、地域にも適する優れたシステム構築が可能ではないでしょうか。
 「となりの芝は青く見える」のかもしれません。それにしても、今、日本で感じている「漠然とした閉塞感」と比べれば、一介の若手建築家が「まちのヒーロー」になりうるヨーロッパは、何とも華やかに思えます。
(日本鉄道建設公団 岡田良平)


この記事を読んで、驚いたのは、サンタ・カテリーナ市場前広場の地下駐車場の話である。不適切なデザインという理由で排除したバルセロナの人々の決断、そして、世論の力を受け入れた自治体にも驚きました。自分たちの税金で作ったものを壊すのはどういう気分なのだろうか?もし日本なら、気に入らなくても、デザインが街に溶け込むのを長い時間待ったと思う。きっと、バルセロナの人々は、自分たちの街に誇りがあるのだろう。自分たちがより快適に暮らしていくには、街作りは、自分たちでしていかなければいけないと思いました。
(徳島大学 田中映子)

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