土木学会誌11月号モニター回答

災害報告
1999.6.29福岡豪雨


 福岡豪雨、関東地方の豪雨と立て続けに都心部における水死者がでたことは、私にとっても大変ショックな出来事でした。まさか河川もない都心部で水死者が発生する事態が起こるとは思っても見ませんでした。門外漢の私は、当然これだけ地下施設が発達している都心部では、それなりの災害対策が講じられているであろうと思っていましたが、都市の意外な脆さに驚かされました。福岡の災害では、行政の責任は追及されなかったようですが、私は人災ということも言えるのではないかと思います。ただ計画降雨量を越える事態であったと一言で片づけるのではなく、施設の防災対策はどうであったのか、状況把握・避難誘導等の対応はどうであったのかをもう一度検証する必要があるのではないかと考えます。土木学会としても、災害報告のみではなく、都市部の水害に対する施設整備状況や危機管理体制等の検証に関する特集を組んでは如何でしょうか。
(大成建設 大矢敏雄)


 福岡の集中豪雨のニュースを東京で聞いたときは、とても驚きました。博多駅の地下街が浸水し、地下室の水没により被害者が出たということを知り、豪雨の恐ろしさを改めて再確認しました。大都市は、雪や雨に弱いと聞いていましたが、都市の開発による、自然の保水能力の低下がここまで問題になってきているとは知りませんでした。
 地下空間の利用は、環境保全の立場からも積極的に取り組まれておりますが、水害に対する対策を十分に考慮する必要があると感じました。
 都市開発のための地下空間の利用も重要だと思いますが、人工的に保水可能な施設や洪水に対して一時的に貯水できる地下遊水池など、水害防止のための施設も地下に求めてはどうかと思います。
(清水建設 藤野 晃)


計画降雨量を超える降雨量、都市化に伴う流出係数の増加、地下施設の拡大に対する防災対策の不備が原因で起きた災害であり、自然災害の恐ろしさを見せられた。
このような災害に対し、ハードの対策を順次推し進めなければならないが、今回のように計画降雨量を超えた場合は、ソフトの対策が重要になることを教えられた。
今後の対応として、河川の氾濫はカメラ等で監視できるし、急激な雨水の増加があっても警報・ラジオ放送等での避難勧告は可能であると思う。ただ、その判断が早急に行なうのは難しいため、今回の経験を無駄にしないよう、地域と協力して避難訓練等を行なう必要がある。次回に同じ過ちを繰り返した場合は計画降雨量を超えたとしても、「行政上の法的責任はなく、自然災害である。」という言では済まされないと思う。
(鉄道建設公団  倉川哲志)


 博多駅地下街は個人的には、よく利用する施設でもあるので豪雨によって地下街が水没し、しかも人命が犠牲になったニュースを耳にしたときは、正直言って衝撃を受けた。記事には施設管理者が災害対応を適切にとれなかったことや今後の水害対応についても具体的な手だてを講じるつもりがない管理者もいる報告などがあり、ちょっと信じ難い感想である。都市部での保水能力が貧困である現状では、地下街に対して確実な水害対策が必要と思う。それらを徹底させるためには、法政化を視野に於いた対応が必要ではないか。
(新日本製鐵 石田宗弘)


 都市化が進む中、他の都市においても類似の災害が発生する可能性は高い。被 害を最小限に食い止めるには、河川整備の他、下水道、地下河川等、ハード面で の整備が急務であるが、時間的、財政的に制約があるのは当然である。即効性の ある対策としては、防災対策の整備である。今回の災害の後行われた調査結果か ら分かるように、避難の迅速な指示、事前の浸水対策等、ソフト面での対策が不 充分であったことは否定できない。
 今回の災害を教訓に、他の都市においても関係各省庁、地方自治体、住民が連 携を取り、防災対策マニュアルの整備、訓練の充実が望まれる。
(電源開発(株)茅ヶ崎研究センター 下越 仁)

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