土木学会誌12月号モニター回答
微笑みの国タイでの揚水発電所の建設
日本の電力需要は成熟期を迎えつつあるが、東南アジアなどでは今後ともますます電力需要が高まって行く状況にある。また、エネルギー分野における日本の環境対策技術はトップレベルにあり、海外への技術移転は必要不可欠である。このような状況においては、日本のエネルギー産業は、もてる技術を国内だけでなく、東南アジアなどの海外プロジェクトに積極的に参画し、ビジネスチャンスを図っていく時代を迎えていると感じている。一方、東南アジアと一言で言っても、一国一国でお国柄も歴史・宗教・文化・地勢などが異なり、画一的に対応できるものではない。海外で働くためには、語学力は勿論、その国の文化などを受け止める努力が必要不可欠であると思う。
(中部電力 仲村治朗)
タイ国において、オーナーである電力公社と複数の国の請負業者との間にコンサルティングエンジニアとして立って、異質な文化や思想の交錯によって苦労している様子がビビッドに記されていた。 これまでの日本の土木は、国内での社会資本整備が中心であったが、将来パイが小さくなっていけば、土木技術者の行き場の一つとして海外、とりわけ社会資本が未整備な発展途上国が有望視されよう。しかし、そこには既に何十年も前から、海外に活路を見出そうと必死に市場開拓をしてきた欧米諸国の土木屋が待ち受けている。多民族国家の米国は、文化や価値観の多様性と国家世界戦略を、また、欧州は長い植民地政策で得た途上国に対する各種ノウハウを武器に、したたかに商売を行っている。 今後、日本の土木が本気で海外市場に参入しようとするならば、国家レベルの戦略が不可欠だと考える。例えば、国家レベルでのマーケティングのための途上国に関する詳細な調査、欧米諸国のエンジニアとの合従連衡、途上国プロジェクトへの直接投資、そして教育である。教育では、これまでおざなりになっているコミュニケーション、論理、イマジネーション、コラボレーション等を強化するとともに、文化や価値観の多様性を実際に経験する機会を持てるように工夫することが必要だと考える。土木学会も大学も、新しい仕事の種がこうした場所に転がっているように感じるが、いかがだろうか。
(室蘭工業大学 矢吹信喜)
私も十余年前に東南アジアで工事を行った経験があり、その時もLNG地下式貯槽という注目を集める工事であったので、本記事に記された大変さはよく分かりました。当時、民族が違うとものの考え方や価値観がこんなにも異なるものかとつくづく思いました。このタイでのプロジュクトでは多くの民族を相手にして調整されているわけですから、さぞかし大変であろうと想像します。ご苦労されている方々に心より敬意を表します。私の拙い経験から言うと、苦しまずに済ませる唯一の方法は、やたらと重い責任を広範囲に背負い几帳面にこなさなければならないと思いたがる日本人的な気質を一旦脇において、現地の人たちの発想の仕方にどっぷり漬かり込んでしまうことであろうと思います。 ((株)大林組 菅野 滋)
タイにおける二人の筆者の生活ぶりと電力事情はよく分かったし、参考にもなった。しかし、肝心であろうと思われるプロジェクトの詳細は伝わってこなかった。大体の概要は分かるが、もう少し詳しく説明して欲しいと思う。
(金沢工業大学 田辺義博)
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