土木学会誌12月号モニター回答

「魚のすみか」をはかる

 不勉強でこの様な研究がなされていることは初耳であった。ユニークな語り口での説明とも相まって、専門とは関わらず興味深く読み進むことができた。ユニークなのは語り口だけでなく研究の視点についても言えるだろう。文字通り「魚の目」から河川工学の世界を調査するということは、例えば都市デザイン研究者が集団人間行動を調べることなどから考えると、当たり前の様でいて盲点であり、あくまでモノをつくる技術者の目からの調査であったのではないだろうか?物理的特性だけで魚のすみかの適正がわかる、つくれるという単純な問題ではなさそうなことは文中にもある。事実、人間を相手にした都市計画ですら様々な問題を抱えているのが現状であるし…現実の計画の際においては、住民の意志や参画、他の技術などとの総合的な検討の中での一要素として扱われるべきであるものなのだろう。特に、研究者の手を離れた場所で安易にこの様な基準が乱用されてしまうことがない様に慎重に活用され、この様な新しい視点が、現実の計画をより豊かにしていくことを願う。
(都市計画設計研究所 平井一歩)

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