土木学会誌1月号モニター回答

話の広場 21世紀の街づくりに自然林の復元を

 人間の営みはその殆どが、大なり小なり自然破壊につながると思う。土木事業においても多くの森林を消滅させるが、逆に森林を復活させることが出来るのも土木事業である。本当の意味で環境共生を目指すのなら、人間にとって見た目のよい自然ではなく、記事にあったような方法であろう。このような方法が、ますます一般化して欲しいものである。
(鹿島建設(株) 加藤康生 )

 非常に面白い取り組みだと思う。街のみならず、山間部の道路の周囲などにも植樹してみても面白いのでは?
(九州大学大学院 龍 崇)

 環境問題は全人類の共通の問題である。近年日本でも自然回復が叫ばれ、河川整備や海岸整備においてはコンクリートが排除、或は隠されはじめているのが現状である。しかしそれは確かに自然保護と言った概念よりも、むしろ景観面への配慮に対する比重が高いと思われる。より自然の状態に近い多層林の創出、そのための「ふるさとの森づくり手法」は今の社会に必要不可欠な技術である。しかし問題は人間を拒絶する自然と言う極端な考え。これは、植物を拒絶する都市とその考え方において、何ら変わりはのではないかと思われる。コンクリートやアスファルトで生態系を排除した償いとして、今度は濃密な緑の復元・保護によって人を排除する。街には様々な機能やそこでの様々な活動が存在する。拒絶するのではなくむしろ共存できる緑の手法はないだろうか。人と自然との関係性が生じるからこそ、そこに持続力がある。例えば昔の里山の雑木林のように、人の活動が許容され維持管理を地域住民が行わなくてはならないような、ハードだけではなくソフトの仕組みも覗える整備の方向性が肝腎である。豊かな自然と接して生活したいと望むことは人間の本能である。
((株)大林組 後藤嘉夫)

 森林では、枯れ木、枯れ葉がリターフォールとして、土壌へ供給される。これが、森林土壌に有機物として集積され、森林の自己施肥系という物質循環を支えている。この森林のもつ仕組みの素晴らしさが、最近見直されている。本論でも紹介されている自然林の復元をとおして、森林のもつさまざまな野生動物に対する働きについて評価してゆくことは重要である。紹介されているのは、都市緑化の事例であるが、自然林の回復の本質は、原生林に代表され一次的自然の保護、人手のはいった林業地等の二次的自然に対するものである。これを、契機に少し議論が広がればと期待しています。
(電源開発 喜多村雄一)

 昨今、地球温暖化が叫ばれるなか、タイトルにひかれて読ませて頂きました。沿道の緑化にまで植物社会学によるその土地固有の植生を考えた手法により行われた事例があるのを読み驚かされました。
 自然の復元度を測る指標として、土壌動物により評価する方法は、サンプルごとのばらつきが大きく定量的に判断できるのか、その辺詳しく知りたい。著者も述べていたが、自然林の効果というものは定量的に計測するのは難しいと思う。このような効果を数量で示せる手法が確立されれば、自然と開発の共生がスームズになるのではないだろうか。
(住友建設 水野克彦)

 私は、都市の景観を形づくる要素に、「建設構造物」「水」「緑」の3つがあると考えている。私の住んでいる横浜は「水」の都市のイメージが強く、水辺の空間にも親しみやすくて私は大好きである。
 ただ、「水」を主体とした都市と、「緑」を主体とした都市とでは、その形成過程が大きく異なるように思う。「水」の都市の場合は、川なり海なり既存の水辺の周辺に構造物をつくるイメージがあるが、「緑」の都市の場合には、構造物を建造した後に植栽としてスポット的に配置していくイメージがある。
 どちらが良いというわけではないが、都市造りというのは、公園の池の水とか沿道の緑といったスポット的な要素ばかりに気をとられて全体的な街並に気が回らないことのないようにしなければならない。
(大成建設 松葉保孝)

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