土木学会誌2月号モニター回答

特集 社会基盤の維持管理と再生を考える

 例えば、下水道普及率は東京で95%を超えたが、そのうち都区部の管渠の8割は50年を超えているということである。これは下水に限ったことではない。今回の特集で維持管理、再生の必要性を痛感した。これからの土木工事において再生という分野が大きく成長していくことは確実と思われる。 
(戸田建設(株) 小林 修)

 昨今、コンクリート標準示方書施工編が耐久性照査型に改訂されたこともあって大変興味深いテーマだった。特に座談会は維持管理という業種の難しさを知ることができた。維持管理の重要性がクローズアップされるようになって、かなりの時間が過ぎたように思われるが、未だに系統的なシステムも確立されていないし、維持管理業務・技術者が大幅には増えていない現状を考えるとかなり根の深い問題かもしれない。計画・設計段階から構造物の耐久性向上を意識することと今以上に維持管理の重要性をPRすることが必要だと感じた。
(北海道開発コンサルタント(株) 田中雄太)

 構造物の疲労の多くが初期故障の段階であるという専門家のご意見には、我が国のインフラにとって希望がもてる見解であると感じました。
 しかし、土木構造物(例えば首都高)を人間に例えて、現在、青年期?あるいは壮年期?、老年期? と聞かれたときに、「青年期なのであと何十年持ちます」と自信をもって答えるのはかなり難しい。
 その答えを出すためには、既存構造物の合理的な評価法が必要となるが、本特集で紹介された「ブルフロード法」などは試験法の1つのよい事例だと感じた。各構造物で評価法が確立すれば、限られた予算の中で、既設、新設のうち何を重点化すればよいかが浮かび上がってくると思う。
 ライフサイクルエンジニアリング(LCC)については、概念の定着が第一で、詳細はまだまだこれからという感じがしました。
(清水建設(株) 石川 明)

 我が国の社会経済状況が成熟した段階にあり、社会資本の建設よりも維持管理が重要な時代になってきていることは既に周知のことであるが、依然として建設が華々しく取り扱われ、維持管理は地味で縁の下に置かれているのはなぜだろうか。たぶん、答は簡単である。維持管理は国民にうけないからだろう。国民、すなわち納税者にうけなければ、それに政策決定者が予算をつけるはずがない。
 本号の特集も大変よい企画である。問題は次の段階、すなわち、この号により維持管理の重要性を啓発された個々の土木技術者がこの号を読むことのない国民をいかにして啓発するかであろう。
 「構造物維持管理支援システム」には驚いた。自分の不勉強を恥じる話であるが、このような高度のシステムが研究開発されていたことを感心しながら記事を読んだ。一方で「橋梁マネージメントシステム」の記事にあるように、建設省ではシステムやデータベース構築の取り組みが行われている。両者の間に協力・連携があるのか、記事からは明らかではないが、このようなシステムの実用化、普及が望まれる。
(北海道開発局 池田憲二)

 「維持管理技術の必要性」という天に着いて、非常に考えさせられました.特に構造物はこれまで「造る」に重点を置いてきたのに対し、今後は「維持管理」まで含めた慎重な検討が必要になると思います。そのためには著者の言われる「維持管理の適切な評価」が重要な課題となるでしょう。しかしまだまだ注目度は低いように思われます。維持管理技術者の養成という点が重要だという意見はまさにその通りだと思います。
(建設省土木研究所 林 昌弘)

 維持管理の現状についていろいろな分野について様々な観点からの分析があり、土木技術者にとっては非常に有益な資料である。
 しかし、学会誌を手元に「こんなに日本は大変なんだよ」と家内に話すと「マンションの維持管理と同じで業者が考えたって良くならないわよ」ときつい一言。所有者(国民)が真剣にならないと維持管理はできないというのは正論。土木技術者向けの啓蒙も大事だが、学会としてはやはり世の中へ、特に主婦にアピールする必要があると痛感した。この特集は新聞総合誌にどんどん取り上げてもらうべきである。
(鹿島建設土木設計本部 太鼓地敏夫)

 本特集の中で,特に海外のケースとして,アメリカ・チリ・アフリカが取りあげられており,日本国内の異種の施設間の比較に終わっていないところが意義深い.アメリカの公認点検員制度などはコンクリート剥落事故を経験した現在,非常に参考になるものであるし,チリの造ることに主眼をおく点やアフリカの維持が十分行われていない点は,かって我が国が通ってきた道である.今我が国のいる位置を再確認し,目指すべき方向性についての考察を促す記事であると思われる.
(港湾技術研究所システム研究室 赤倉康寛)

 本特集は、社会基盤施設の維持管理とリニューアルについて、総論、現状、新手法、比較及び方向性の5つの視点から検討している。すべてを網羅すべく多分野からのアプローチは維持管理を考える上で質及び量ともに読み応えがあり非常に役立つ内容でした。一読者のスタンスとしては興味ある項目の興味ある箇所を読めばよいと思う一方で、多岐故に項目それぞれの考察が連携・収束しうるのか一抹の不安がよぎりました。各視点においてまとめがあれば門外漢のものにもより興味がわく内容となったのではないでしょうか。
(国立呉工業高等専門学校 市坪 誠)

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