土木学会誌3月号モニター回答

事故・災害 台風9918号による不知火海高潮災害

 私自身、熊本に在住している身であるがこの台風の記憶は、まだ新しい。同じ人間として今回の台風による被害者の方々には、お悔やみを述べる一途につきるが、コンサルタントとしてではなく地域住民としてある意味考えさせられるものであった。この前の震災に続く大きなものであったが、震災と違うケースとしては、来るべき災害に備えが出来たのでは?という面である。地震の場合、突発的であるが、今回の場合は、自治体、住民ともに危機意識の低さも大きな要因と言える。これらのことを考えると、人為的な側面も否定できない。災害の発生と技術の向上というものは、皮肉にも比例しているが、逆にいうと予測し得ないことが起こるから技術の向上があるわけで、自然に勝ちながらも本当に共存できる時代はいつ訪れるのか興味深いところである。
(株式会社タイセイプラン 月待隆信)

 1999年9月の台風9918号による熊本県不知火海の高潮被害は記憶に新しい。本論文は災害の概要についてわかり易く紹介してあり、大変参考になった。
本州とは違い台風が勢力を保ったまま接近・上陸する九州では、今後もこの種の高潮被害に注意する必要がある。
大きな爪痕を今後の教訓にするためにも、気象学的な視点など幾つかの論文でもっとこの災害を重く捉えたらどうだろうか。
(CRC松島研究所 小川真一)

 山中で育った私には、高潮といわれてもぴんとくるものがありません。伊勢湾台風時に苦労した父母の話を小さい頃に聞かされた程度でした。記事にもあるように、強い台風が最悪のコースを通ったという、最悪の条件が重なって起こった災害であることは推察できます。今後同じような被害が発生することのないように、原因と対策について徹底的に調査研究されることと思います。同時に、一般の方にも高潮の危険性について、改めて認識してもらえるような説明がなされればと思います。
(建設省土木研究所 林 昌弘)

 高潮潮位等の専門的な部分については分からないが、このような災害の発生時には、良く”最悪の条件が重なり合って発生したために引き起こされた想定外の災害である”との表現がなされる。設計基準で考慮する既往最大潮位を2.2mも越える高潮はとても想定されなかったとのことであるが、設計基準で想定されている潮位が、100%安全を保障するものでないことは明かである。したがって、設計基準で想定された潮位を越える高潮が発生した場合に、どのような事態が発生し、これに対して事前の対策や発生時の警報の発信、避難誘導等の対応を行えるようにしておくべきはずだったように思われる。兵庫県南部地震においても、”想定以上の地震力であった”との表現は使われていたと記憶している。想定以上の潮位や地震力が発生した場合に、その被害を出来る限り低減させるための方策が必要であることを、この災害報告は再認識させてくれていると考えられる。
(港湾技術研究所 システム研究室 赤倉康寛)

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