土木学会誌7号モニター回答
ドイツの環境共生型再開発プロジェクト
タイトルにひかれてページをめくったが、タイトルにある「環境共生型」の内容が最 後の半ページ足らずしかなかったのは残念だった。ページの制約はあったであろうが、最初に鉄道駅の再開発を計画するにあたり環境に対してどのような理念を持ってあたったのかを示し、従来の再開発計画の概念の違いを明らかにすべきではなかろうか。
現地で「風の道」に関する情報を収集されてきたとの記述もあり、その情報の蓄積が今回のレポートに反映されていないのが残念である。
また、最後に「ひょっとすると地権や合意形成をめぐる背景が日本とは異なる途上国がトップダウンで先進事例を作ってしまうのではないか。そんな懸念を抱くのは筆者 だけではないだろう」という部分について、私は途上国が先進事例を日本よりも先に つくっても一向に構わないと思う。まちづくりは工業技術ほど最初に実施することに意味はない(この場合は2番以降ではあるが)。この理念が途上国においても有効であるならば、実施すべきであるし、日本がそれに遅れたからといって懸念することはないと思う。
(大阪大学 松村暢彦)
題名をよくみないで記事を読んでいたので、最初は利便性を追及することによって環境破壊につながるという記事なのかと読みすすめていくと、全く逆であった。利便性、デザイン、経済効果、環境問題すべてに対してプラスの効果を生みだすプロジェクト。そんな前衛的な再開発が日本で行われない、そのうち途上国がトップダウンで先進事例を作ってしまうのではないかという筆者の危惧で締めくくられていた。技術的には無理ではないだろうそのような前衛的なプロジェクトがなぜ日本でできないのだろうか。
(大成建設 古池章紀)
シュツットガルト中央駅の頭端式駅舎に入ると、広い吹抜と重厚なたたずまいに圧倒される。「Stuttgart 21」というプロジュクトは、ドイツを旅行した際友人から聞いた記憶があり、興味深くこのリポートを読んだ。地下化される鉄道部は近未来的なデザインへと変わるようである。きっとあの荘厳だがどこか古めかしい駅舎も取り壊され新しくなるのだろうと少し寂しく思ったが、今回の想像図を見ると、あの駅舎はそのまま残るようである。古いものを大切に保存し新しいものとマッチングさせるドイツ人の国民性を見たような気がする。さらに盆地という土地柄、風をうみだす建物規制を全面的に推し進めているという。日本は地権等の問題で難しいが、新しい思想を取り入れる勇気も必要である。
(大林組 佐藤晶子)
環境共生、都市再開発、交通ネットワークの効率化といった複数の切り口から、頭端式を通過式に切り替えたドイツのシュツットガルト中央駅のプロジェクトを興味深く読ませていただいた。日本における代表的な頭端駅の一つである函館駅は、現在、駅前再開発と連動した建て替えが予定されているが、函館空港との高速アクセス、新幹線との接続、歴史的価値の高い市電の効果的活用といった課題解決に本プロジェクトから学ぶところが多いのではないかと思う。
(北海道開発局 梅沢信敏)
都市の再開発プロジェクトは日本の至る所でも行われているが,環境面でここまで徹底して配慮された都市開発が日本にあるのだろうか.最近,郊外に大規模なショッピングモールができ大きな駐車場をもてない駅周辺にある商業施設は衰退の傾向にある.便利になることはいいが,世の中に逆行した開発ではなく,日本がもつ鉄道と道路という2つの交通システムを有効に活用できる環境を考慮した開発をしてほしいとおもう。
(日本鉄道建設公団 佐々木養一)
日本と違って大胆な都市再開発のあり方に感動しました.ヒートアイランド現象、大気汚染、中心市街地の空洞化、慢性的な交通渋滞などに悩まされている日本の主要都市の再開発もかく行ってほしいものだと思います.
(愛媛大学 二神 治)
シュツットガルト市街地を囲む丘陵地帯で夜間の放射冷却により生成され、都市に流れ下る冷気流を遮らずに都市内に導入するような都市利用、建物の配置を行うといった、自然や気候までも利用して都市の効率性を高める試みを行っていることは興味深かった。今後日本においてもそういった自然環境を保全しながらも、環境との共生といった視点についても考慮していく必要性があると感じた。また、リポート内での「風の道」という都市計画についても、どういったものか知りたい。
(日本道路公団 伊藤孝広)
海外では良くお目見えする頭端式の駅舎。本文中では「わが国では鉄道が敷かれてから都市が発達した経緯があるために,このスタイルの駅舎はほとんど見られないが・・・」との記述がある。都市の発達形態として,わが国と海外でなぜこのような違いが生じたのか知りたい。
(大成建設技術研究所 石井裕泰)
題材としては相当面白く期待して読んだが,あまり面白くなかった。文章の最後に,「日本でもこのような前衛的な再開発ができないものだろうか」とあったが,なぜドイツでこのような再開発が可能なのか,その原因についてレポートし,日本の技術者に対するメッセージのようなものがあればもっと面白かったのではないかと感じた。
(東京大学 細田 暁)
記事を読んで改めてドイツは環境に対する取り組みは日本の数歩先をいっていると痛感した。まだまだ日本は諸外国に学ぶ点が多いと思う。
(水資源開発公団 塚本 守)
日本では,ドイツの事例のような大規模な鉄道網の再開発は,なかなか見られないと思う。それがドイツでは,いとも簡単に実施されようとしていて,大変うらやましく感じた。
一利用者から,世界に誇る日本の鉄道網について意見を述べさせてもらうと,その利便性は,世界一とは言い難いと思う。もちろん,経営する鉄道会社は,サービス向上に努力をされているが,それとは別に,既存の鉄道の路線や駅の設置場所の決定は,必ずしも利用者のことを考えて行われたとは言い難い。鉄道を使って移動する際の乗り換えの利便性は,特に異なる鉄道会社間の場合は悪いことが多い。私は,乗り換えに10分も徒歩で移動しなければならないという体験をしたこともある。このような時,もう少し駅が北よりにあれば...とかと思う人は多いと思う。過去の経緯からそこに駅が設置され,簡単にとはいかないが,こういう改良は,皆が意見を言えば,市民の力で公共の事業として実現するのではないかと思う。
今回のドイツのシュツットガルトの再開発プロジェクトは,上記のような視点から生まれてきたものであると感じた。非常によく考えられていて,環境,経済,人間に与える影響を良く分析しているようである。また,少しでも利用者の便を向上させようとする前向きな姿勢が感じられ,鉄道に限らず,ドイツの公共事業の神髄を見たような気がした。なにより,市民の声をよく聞き,情報を公開しながらプロジェクトが実施されているという印象であった。日本の再開発プロジェクトも,こうあってほしいと感じた。私自身もそんなプロジェクトに是非関わりたいと思った。
(鹿島建設 藤澤 理)
私はシュッツットガルトに鉄道駅の調査に行ったことがある。頭端駅であるシュツットガルト中央駅は、日本の幹線鉄道の駅(例えば東京駅など)と比べて、構内の空間が広く、駅というよりは人々が集う広場的な役割を果たしており、ゆっくりとした時が流れていた。
当該駅は交通施設としての駅というよりは、都市施設として、人々の豊かさを演出しており、非常にいい駅であると思っていたが、時代は鉄道の高速化を要求しており、ゆっくりとした時が流れるあの駅がなくなることは寂しい気がする。
しかし、ドイツはやはり先進国であるということを実感せざるを得ない気がした。駅改良により、鉄道の高速化を図ることだけに留まらず、環境を考慮した設計と、駅を地下化し、その上空を広場にしてするという計画は絶賛に値する。駅近隣の一等地を日本であったら、直ぐに、商業ビルにしようとする計画が立ち上がるのに、ドイツは空間を確保することに努めている。文化の違いか、考え方の違いか、改めて圧巻された。
海外リポートは日本の良い点、悪い点を知る上で、非常に役に立つ。日本では中々実現しにくいであろうと思われる計画などを積極的に紹介して頂きたい。
(日本鉄道建設公団 依田淳一)
題を見て,ドイツの環境共生型再開発プロジェクトであるStuttgart21についてのリポートと言うことで,期待して読み始めたが,プロジェクトにおける環境との共生についての記述はわずかしかなく,また,掲載されている図や写真の内の数枚がピンぼけであった.やや期待を裏切られた感じを受けた.
(運輸省港湾技術研究所 森屋陽一)
環境先進国ドイツの「風の道」関連の研究について深い関心を持っている。ドイツでは環境に対する国民の意識が高く、またそれに伴い、あるプロジェクトの際には必ず環境面からも評価が行われており、その情報が国民に簡単に届くシステムができていると聞く。近年日本においても「環境」について意識が高まっている気運があるが、このように具体的なプロジェクトはまだないのではないだろうか。大学などの研究機関のみにとどまらず企業などを巻き込み、環境に対する「真剣な取り組み」が行われていくことを期待する。
(東京工業大学 渡辺倫樹)
21世紀を迎えるにあたり,環境への配慮がますます問われる時代となる.わが国でも,環境保全に対する意識は高まってはいるが,その対策に関しては十分とは言い難い. 本プロジェクトは,「環境に配慮した開発と経済効果の両立」をキーワードに進められている.また,都市気候保全にまで配慮した総合的なプロジェクトであり,ドイツ人の環境保全への意識の高さを認識することができた.さらに,景観や機能性等に関しても学ぶべき点が多いプロジェクトであると感じた.
(住友建設 高橋直樹)
記事そのものは非常に興味深かったのですが、いくつかの図が鮮明でなく(解像度が悪い?)、ちょっとわかりにくかったのが残念でした。こうした海外の先進的なプロジェクトを紹介して頂く御努力には敬意を表しますが、記事をわかりやすくするいま一歩の詰めをして頂ければと存じます。
(京都大学 市川 温)
現在、各地において駅前再開発などが計画・推進されているが、それと照らし合わせながらこの記事を興味深く読んだ。日本でも、都市景観、環境保全、環境調和に関してはかなり配慮させつつあるように感じているが、「都市気候保全」については検討項目としてあまり重要視されていないのではなかろうか。都市部においては、ヒートアイランド現象やビル風など特有の問題が存在する。これらを克服するためには、点での検討には限界あり、面としての検討が必要となる。大規模な戦略なくしては、実現不可能であろう。また、限りある資源を有効利用するためには、今ある自然の活用が望まれる。今後の開発には、「都市気候保全」の考えを組み込むことが必要不可欠と感じるとともに、日本でも首都機能移転における都市計画においてこれを実践できれば、新都市は世界的なモデル都市となり得るのではないかと感じた。
(住友建設 松元香保里)
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