土木学会誌9月号モニター回答
社会資本と土木技術に関する2000年仙台宣言(案)
土木技術者の決意
仙台宣言(案)は、我々土木技術者が持つべき共通認識として大変意義あるものである。
内容について、仙台宣言(案)9項目のうち、1つだけ気になる項目がある。第6項「ビジョン・計画の明確化」である。第6項は方策−2として位置付けられているが、他の方策とは少し意味が異なるように思う。確かに「ビジョンを掲げる」ことは理念を具現化する方策の1つと言えるが、重要なのは「ビジョンを掲げる」ことではなく、「ビジョン」そのものである。ビジョンはまさに国や地域をどうつくるかという方向性を示すものであり、まず国民や市民から同意を得なければならないものである。ビジョンなくして「社会との対話」といっても話が始まらない。その意味で「ビジョンの明確化」は方策よりも上位に置くべきものではないかと考える。
また、ビジョンは国民・市民との対話においてベースとなるものであり、できるだけわかりやすい表現で示す必要がある。ビジョンを明確にすることは容易なことではない。どのようなビジョンが一般の人々にとってわかりやすく明確なのかを今後、学会内でも議論していく必要があるのではないだろうか。
(清水建設 藤田宗寛)
第一に,社会資本整備と公共事業の違いは何なのかが,一般の人にはよくわからないと思う。第二に,方策-1〜4の文章には主語がないので,土木学会,行政,土木技術者のどれが宣言しているのかが理解できない。最後の一文の主語が土木学会であるためにややこしい。第三に,既に実施された公共事業の評価・総括も必要である。第四に,社会資本の整備に関連している学会は土木学会だけではない。関連学会との同調も必要ではないであろうか。そうしないと,硬直化した予算配分に代表される縦割り行政の弊害を学会が被ることがなると思う。
(松江工業高等専門学校 河原荘一郎)
先に制定された倫理規定にも増して、社会に根ざした土木技術の適用を表明した宣言になっていると感じられた。社会資本整備に際しては「景気対策」等の名のもとに、政治面からの望まざる介入を避けることは出来ない。当然、政治も社会から負託されたものであるはずだが、形而上的な議論に終始して「国民不在の社会資本整備」という謗りを受けることがあってはならない。明文化された宣言を読み、技術者としての責務の重大さに改めて身の引き締まる思いがした。
(大学院学生 糸山 豊)
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