土木学会誌9月号モニター回答
特集2 個性豊かな地域づくりビジョン

 本特集では、住まい・自然環境・経済・建設の各分野から、21世紀の地域づくりに必要な視点が述べられ、あらためて豊かさを実感できる社会について考えさせられた。21世紀の地域づくり計画に、各分野から提案された考え方を、どのように盛り込めるのかも興味深く、そのために本特集の「国土計画の総合調整機能と地域開発」にあるように、「調整機能」が重要であると考えられる。ただしここでは、具体的な「調整」方法は示されていない。どのような基準で「調整」を行ったらよいのかも今後考えなければならない課題であろう。「総合調整」の一案として、各分野から提案された考え方を総括してもらえると、さらに興味深い特集になったと思う。「豊かさの実感できる社会の実現に向けて」では、地域づくりの具体例が示されてイメージしやすかった。東北開発計画の基本目的から「自然共存型の21世紀システムへの転換目標のため、多彩なライフスタイルの展開が可能で、暮らしやすく活力ある東北を創出」へ至った経緯を詳細に述べてもらえると、地域の主体性を考慮した地域づくり手法の一例として、さらに面白かったと思う。
(長野工業高等専門学校 柳沢吉保)

 今年は、火山の噴火や地震、渇水、豪雨災害と、自然災害が多発しています。われわれは本当に厳しい自然条件の中で生活しているということを実感しています。しかも国土が非常に狭いわけですから、池谷氏が指摘しているように、災害に遭う危険性の高いところにも人が住まなければならない状況となっています。山崎氏はアメリカにおける交通・通信ネットワークを例にあげて、中枢都市の計画的な分散配置の重要性を指摘していますが、アメリカのように広い国土を持つ国では計画的な国土開発が比較的容易です。我が国のように非常に狭い国土に多くの人が住む国では、話はそう単純ではないと思います。しかし狭い国だからこそ計画的な国土利用が必要でしょうし、様々な知恵・技術を創出していかねばならないと強く感じました。
(京都大学工学研究科 市川 温)

 昨年、今年と「社会基盤整備」がキーワードとなるような特集が続いているような気がします。そのせいか、新鮮味や面白さに欠ける面があるように感じました。特集記事は、多岐にわたり、かつ話題性に富んだものを期待します。
(住友建設(株)松元香保里)

 総説「21世紀の社会像・土木像」で課題が整理され明確になった。総説で指摘された食料、資源・エネルギー等の備蓄といった仕組みと一体化した社会的リスク対策としての社会基盤整備については、以下の各論では触れられていませんが、今後取り上げられることを希望します。「住まいの多様化を考える」は個人主義への過度の期待、幻想があるようで気になった。「国土計画の総合調整機能と地域開発」では興味深い問題指摘があったが、農業・林業の振興策にあまりに否定的であることが引っかる。総説での社会的リスク対策との関連を考慮したビジョンを示してほしかった。「21世紀の土木像」は総説と重複するテーマである。望むらくは前の各論3編と後の研究開発編を受けての行政側の具体的なビジョンを示す内容であってほしかった。
(新日本製鐵(株)藤井康盛)

 豊かさとはどんなものなのだろうか。災害に強い、移動するのに便利、安定したエネルギーの供給等いろいろあり、土木学会には過去の成果とこれらを1つ1つ丁寧に取り上げてもらい、学会としての豊かさの定義をわかりやすく提示して欲しいと考えます。
(水資源開発公団 塚本 守)

 たいへんな力作だと思います.土木技術の目指すところはわかりました.だた,土木のしろうとの目から見ると,どうやってそれを技術として実現していくのか具体的な像が見えませんでした.交通インフラの整備がその一つということはわかったのですが・・・
(秋田大学 林信太郎)

 最近、公共事業の見直しが叫ばれているが、土木構造物は完成・供用する時期が計画する時期から大きく時間がたつことが多いことが、社会的評価のうえで極めて難しいところだと思う。
 計画時だけでなく供用時まで見越してコストや利便性などにおいて合意形成できることが望まれるとの指摘は、まさにそのとおりである。
 計画段階で将来の社会像まで考えるためには広く他分野の人たちの声を聞く必要があるのはもちろんである。しかし、専門家には計画時点での多様な意見に単に惑わされるのではなく、それを踏まえたうえで結論を出し、その過程を発信していく情報公開の姿勢が求められよう。
(住友海上火災保険株式会社 後藤多美子)

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