土木学会誌10月号モニター回答
1999年の台風18号による災害と今後の高潮・高波対策について
護岸の設計を例にとり、高潮・高波対策について性能設計という観点において筆者の考えをまとめている。この性能設計という考え方は、わが国の建築物ではすでに開始されており、また土木構造物や港湾施設の耐震設計においても採用されてきている。また、コンクリート構造物についても今後取り入れるべき検討中であると聞いている。このような動きは世界的な流れである。本稿では、高潮・高波のデータに基づき確率論的手法により、どのように再現期間を設定し、各レベルに応じた性能を設定し設計照査を行っていくかについての考え方が大変参考になった。今後の学会誌でいろいろな土木構造物についての「性能設計のミニ特集」的なことを取り上げていただくとありがたいと思います。
(千代田化工建設 空間設計2部 野本 均)
『内湾の穏やかな海を見慣れている人々にとって、朔望平均干潮位から5m以上の潮位や最高波高が1mに達する波を想像することは困難かもしれない』という文面がある。確かにその通りであり、そんなところへ災害は突然降りかかるものだと思う。災害は忘れた頃にやってくると言われるように、Xデーは明日に迫っているかもしれない。
最近、人命に関わるような公共事業に対しても住民の反対運動が起こっているようだが、果たして何パーセントの住民が大災害の危険にさらされていることを認識しているのだろうか。過去に死傷者の出た災害を直接見聞していないことから、災害認識が風化している地域が多いという話も聞く。
これに対処するため、市区町村単位での災害メモリアル館の設置を提案する。この災害メモリアル館は震災や水害などの対策が十分にとられており、万一の災害時には住民の避難場所にもなる。転入時には入館が義務づけられ、小・中学校においても教育がなされる。新たに死傷者が出た災害は記録に更新されていく。これを全国で展開するのだ。そして、これだけの社会資本を整備することによって、各地域の災害危険度はこれだけ低減するのですよ、といった情報を積極的に公開していく。こうすれば、少なくとも風潮に流された安易な反対運動はなくすことができるだろうし、災害認識の風化を防止することができると考える。
(五洋建設(株)水流正人)
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