土木学会誌1月号モニター回答
公共工事見直し論

 民活、個別採算性を掲げた大規模プロジェクトの失敗例や、完成後の供用度の低さが目立つようになってきている。私は、大型公共工事推進論者ではないが、国家としての骨格や顔を論ずるときに、事業の商業ベースの側面のみを重視しすぎているのではないかと考える。大公共と小公共という概念で問題を把握し直すと、今後、感情的でない、本質をついた議論ができるはずで、論旨には共感できる。
 特集“21世紀の未来都市の祖型”を読み進めるうちに、公共事業と都市計画を自分なりに関連付けて把握できるようになり、久しぶりに、“知的な”香港での旧正月の休みを過ごすことができた。
 だが、待てよ、日本における土地所有制度の問題の解決は?今後の基本計画策定は誰がリードしていくの?とか現実的なことを考えているうちに憂鬱な気分になってしまった。
(西松建設 林 謙介)

 「@如何に合意を形成するのか」「A公共性を理解してもらう努力」「B公共性が認知された場合の迅速な遂行」いずれも正論であるものの、それらを如何に実行するのかが困難であると考えます。
 特に「公共性が認知されたとすれば」との前提はあるものの「土地を収用法等で速やかに確保されるような努力」とは、実行は困難ではないか、どのように認知させ、どこまでの理解を得ればよいのか、等々考えざるを得ません。
 主に土木技術者を対象とした土木学会誌に記載される「見直し論」であればもう一歩掘り下げて論じて頂き、それら諸課題の解決のヒントを頂ければ、参考となり役立つのではと感じます。
(電源開発  國崎剛俊)

 確かに、公共事業の見直し論が出てくることには必然性はあるが、不要論は性急すぎると思います。本文中に定義されている「大公共」と「小公共」との違いを踏まえて、今後の公共工事の在り方について、日本という国としてのビジョンを明示する必要があると思います。
(大成建設 小池真史)

 公共事業見直しにおける考えについてわかりやすく述べられていた。現在、ナショナルミニマムレベルがほぼ達成されたという認識がある一方で社会資本はまだまだ不足しているということもよく言われていると思うが、従来の計画に対しての不足、欧米と比較しての不足といった短絡的な不足論を述べるのではなく、論文にあるようなその時代や後の時代に対する事業の必要性、各地域における事業の必要性に関する見直し論が活発化することを期待したい。
(建設技術研究所 田村浩敏)

 近年,高齢化社会が顕著になった日本では,社会保障制度に対する不安や国債の増大といった精神的動揺が国民の中をとりまく傾向がある.一方,公共事業による社会基盤整備は高度成長期のような迅速さが失われ,国民が納税者としての恩恵を実感しづらい環境にもなってきたというのが現実だろう.しかし,生産年齢人口の鈍化や既設社会基盤の老朽化等が刻々と迫る現状では,永続的な公共事業の遂行が不可欠であることは明らかである.
 最近のマスコミ報道等では「公共事業見直し⇒一元的な中止・凍結を!」と印象づける傾向があるが,現在の社会生活が公共事業の上に成り立っているのは言うまでもない.必要最小限のインフラが整備された今,土木技術者に求められているのは,@限られた財源に応じ公共事業の優先順位を評価すること,A体系的な事業分類と洗練された遂行能力を有すること,B最大公約数的コンセンサスを形成するための説得・推進力を持つこと,と考えている.それだけ,これからの土木技術者が担う課題は非常に重大であると感じさせられる内容であった.
(電源開発 中山義紀)

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