土木学会誌1月号モニター回答
特集U 21世紀未来都市の祖型

 一つだけの業務に集中していると視野が偏り、ともすると「木を見て森を見ず」的に、一構造物の設計、一現場における建設、一研究テーマの結論のみを追いかけ、土木技術者としての大きな意味での目的意識を見失いがちになります。
 「21世紀 未来都市の祖型」は、近未来の話でありながら、土木技術者への道を選んだ初心(過去)を思い出させてくれました。
 土木技術者として、「それらを実現するために」といった観点で、今現在行っている業務を再度見つめ直し、「もう一工夫」を付加することによって、未来都市建設の一端を担いたいと思う次第です。
(電源開発  國崎剛俊)

 一極集中を助長する開発を進めた結果、20世紀の都市は巨大化した。
 これは、雇用となるべき産業が一極集中したために引き起こされたものである。
 過去は地方(農村)でも雇用は多数あったはずである。
 たとえば、機械の開発導入などによる効率化を進めることによって、人手がかからず生産性を上げれることにより地方部の雇用がなくなるとともに、機械の生産など都市部に雇用が発生したことによる
 これに対し、故田中角栄氏は新幹線・高速道路・空港整備といった高速交通網の整備を促進することで多極分散型都市を創造しようとした。
 その結果が地方部における一極集中、公害の分散、地方部の東京化が促進されたのが20世紀であるように思えた。
 21世紀を迎えた現在、インターネットに代表されるIT革命が進むことにより、テレーワーク化が促進され、都市から郊外への居住空間の移転が起こることが期待されることは記載の通りであるが、全ての情報がオンライン化された情報になることはないと思われることからも、建設省(国土交通省)が計画している21世紀のグランドデザインは非常に重要な位置づけになるのではないでしょうか? 併せて、公共交通インフラの整備が困難な地方部においては今後も自動車など個人が所有する移動手段が有効な交通手段であり続けるものと思われることからも環境負荷を低減できる低公害車の開発は重要なものであるとともに、渋滞や交通安全といった問題を解決するためにもITS技術の確立の重要性が増すのではないか?と思う。
(鈴木雄吾)

 21世紀の未来都市を様々な切り口から論じた特集を、大変興味深く読ませて頂きました。
 特に伊藤教授のインタビューは、現在の都市計画の問題点とそれらの解決へ導くべき方向性を明快にされ、同感しました。私たちは経済至上主義が生んだ現在の都市を反省し、産官学並びに住民が互いに協力し合い、後世の人々から賞賛される未来の都市を作り上げていかなければならないと思います。
(鹿島建設 小室 悟)

 21世紀の未来都市を模索することを目的に、総論にはじまりライフスタイルと都市構造、環境論、土地所有、アジアの都市からの考察、伊藤滋氏へのインタビューと幅広い構成がなされ、読み物としては興味をもって読むことができた。しかし、テーマが大きいことからどうしても総論的な話、今後を占う先進事例の紹介的な内容が多くなってしまっているように感じられた。その点で、伊藤滋氏のコメントは思い切った内容もあり、興味を持った。
(金沢市 木谷弘司)

 新しい都市のあり方についての事例紹介や方策など興味深く読むことが出来ましたが、今後は地域ごとにこのような明確な都市計画のコンセプトがより必要となってくると思います。これまでよりももっと社会システムや生活スタイルが変化していくであろう21世紀においては、横並びの画一的な方策ではなくて、地域独自の計画を推進していくことが重要になってくると思う。
(熊谷組 蓮池康志)

 21世紀における都市の在り方について土木工学のみならず、様々な視点からまとめられており興味深く読みました。都市開発といっても、闇雲に建物を造り、アクセスの利便を図るだけでなく、都市の将来像を描き、永く機能するためのアイデア、プランを持つことが今後求められると思いますが、この記事に例として挙げられている都市を実現するには、社会的にコンセンサスを得られるシステム造りを先に行わねばならないと思います。ただ、記事の論点が様々であるので総括的なまとめがあれば良いのではと思いました。
(五洋建設 三好俊康)

 21世紀の未来都市はどうなるのか?土木の世界では、道路や河川などが多く、都市計画の分野はあまり知らなかったので、興味を持って読ませてもらいました。特集は、情報関連や建築分野からの話題提供的な構成であり、土木からのアプローチが少し欠けていたのは残念な気がしました。
 記事のなかでは、「テレワークは21世紀に有効なライフスタイルか」と題して、世代分類と共通体験、共通価値観をまとめていたのが、興味をひきました。自分は「断層世代」とのことですが、結構あたっているようです。21世紀のライフスタイル・シミュレーションもおもしろい内容でしたが、仕事と家庭と趣味がミックスしたようなライフスタイルが一般化するのでしょうか?どちらにしても価値観が多様化し、仕事も多極化してゆくのでしょうが、コアとなる部分は、相対的にますますハードワーク化してゆく気がします。
(芙蓉調査設計事務所 須賀幸一)

 21世紀を迎え、興味深い内容であった。特に、海外の事例として紹介されているリールやラスベガスの都市づくりは、刺激的なものである。都市づくりに限らず、現在の日本には活力あふれるような発想が乏しい気がする。多くの発想を持ち21世紀、日本も前進していけるよう日々考えていかなければならないと改めて感じた。
(電源開発 栗ア夏代子)

 「祖型」という耳慣れない言葉を含む特集の見出しを読んだとき,ああこれはきっと難解な4部門の話題だろうと思い,通常なら読まなかった記事であったと思う。しかし,モニターということで一通り読んでみると,意外と興味深く読むことができた。特に,逆都市化や田園都市といったことが,日本という国土,風土で本当に可能なのかと考えさせられた。さらに,特集中の他の記事は学術的で,門外漢の私が読みながら理解していくのは容易ではなかったが,「インタビュー21世紀未来都市を考える」は,わかりやすく,内容に相槌を打ちながら気軽に読むことができた。
(金沢大学 五十嵐心一)

 これからの都市づくりに関するこの特集を興味深く読んだ。地方都市に在住する私にとって、以前から地方都市のあり方について考えていただけに、ここで示されている情報は目新しく非常に興味を惹かれるものであった。この特集で示されているこれからの都市づくりを要約すれば、「集約・密集型」から、「機能分担・分散型」への移行ということであろう。そして、その例として欧米の実例が示され、田園都市論が展開されている。この特集を一通り読み終わった時点での実感は、日本の都市づくりには「論あって策なし」である。こう言えば「策あっても実行できず」と反論されるかも知れない。都市づくりには住民の合意が不可欠であり、結局はこれまでの公共事業において住民の合意形成を怠ってきたツケが回ってきているように思われる。その中で、平野氏の「森林都市づくり」は小さいながらも着実な一歩としておおいに共感できるものであった。
(福山大学 西原 晃)

 テーマ5のインタビュー記事は非常に興味深く読んだが、テーマ1〜4は説明が教科書的になりすぎていると思う。特集の企画趣旨の説明でテーマ毎の説明がされているが、ここの説明をもっと鳥瞰図的にして、都市計画全体について歴史、その諸問題等々をつかめるようにした上で、各テーマに入るようにしたほうがわかりやすくなったと思う。
(国土交通省 河藤千尋)

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