土木学会誌1月号モニター回答
田園都市の基盤としての賃貸都市の文化

 わが国が西欧の都市計画を参考にする上で賃貸都市としての文化が伝わらなかったことが、日本の都市計画がうまく進まなかった要因であるという論文であり、大変興味深く読ませてもらった。わが国の都市計画の運用において実情に反した高価な地価と公共の福祉と個人の権利のアンバランスが大きな阻害要因として考えられるが、これらの根拠のひとつとしても考えあたるものがあり、利益還元に関する話を含めて、大胆な切り口と感じられた。しかし、定期借地権の回復が賃貸都市の定着につながるという点については、少々短絡的とも感じるものであった。
(金沢市 木谷弘司)

 住宅については、これまでは個々の家族が土地資産の保有に関心を持って生涯所有し続けたり、その子孫が引き継いでいくことが多かった。しかし、都市部での核家族化が進む中、今後は、自由な住み替えを求めて、ライフスタイルや,ライフステージに合致した居住サービスを選択・利用する動きが増加することが予想される。このためには、住宅ストックの耐久性向上,さらに本論が示すような、社会全体として使用される資産として再生し、それを大切に維持管理、循環させる新たな居住水準向上システムの確立が求められている。
(五洋建設 中山晋一)

 学生時代より田園都市に関連する書籍・論文を散見してきたが、田園都市の基盤として「賃貸都市」なる文化的基盤があること言及された論説は初めてであり、非常に興味深く記事を読むことができた。しかしながら、田園都市の成立基盤が英国の文化に深く依存するものであればあるほど、他地域への「移植」は困難であるように感ずるのは私だけであろうか? 田園都市レッチワースを管理する財団と行政との関係について詳しい解説があれば、田園都市の理念と実践に関する理解がより深まるのではないかと思った。
(都市交通計画研究所 田名部 淳)

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