土木学会誌8月号モニター回答
■今月の表紙・背表紙
8月号の表紙・裏表紙は,昭和初期の東大・京大土木工学科学生の写真でした.講義や測量実習などの風景を写していて,ふつうの写真ではあるのですが,何か今の自分たちにはないくらいのエネルギーや力強さを感じます.非常に興味深い写真でした.
(東京工業大学 山口亮太)
今回の表紙の写真が、一見では何を表しているのか良く分かりませんでした。それと全面写真よりは、タイトル「土木学会誌」と特集の題名部は無地の中に文字を配した方が分かりやすいし、軽快な印象を与えるのではないでしょうか。
(日本鉄道建設公団 荒木 聡)
古の土木工学科の卒業アルバムからのセピア色の写真が並べられた表紙カバーは、いつもの学会誌と趣が違っていて興味深かった。真っ先に目がいったのが「測量踊」の写真。測量実習というと、夏の炎天下で号令に合わせて鋼尺を引っ張っていたことと、夜は酒盛りに興じたことを思い出す。チームワークで作業にあたることを体感する伝統行事でもあったと思う。昭和初期の先輩たちは、どんな歌詞と節回しで「測量踊」を演じたのだろうか?当時のことを伝え聞く方がいたら、是非教えて欲しいものである。
(千代田化工建設(株)弾塚雅則)
旧制東京帝国大学と旧制京都帝国大学の往年の技術教育の先端性をみることができ大変よかった。しかし土木と教育ならば忘れては困るのが旧制第五高等学校である。1897年(明治30年)4月に旧制第五高等学校工学部として土木科と機械科が発足し,京都大学工学部と同年の創立である。となります。以来3万余名の卒業生を送り出し,我が国の科学技術の発展、産業の振興に多大の貢献をしてきた。
(熊本大学 重石光弘)
■新会長インタビュー 丹保憲仁
新会長に対しまして、親しみが湧くようなインタビュー記事で良かったと思います。現在、教育界では、小学校から高校まで、いじめ、不登校、校内暴力、LD、ADHD等、様々な教育に関する問題点が明らかになり、様々な指摘がされるようになってきているところだと考えています。このような現状の中で、高等教育機関である大学の姿勢として学生に研究にどのように打ち込んでもらうようにするかを考える良いきっかけになるような内容でした。
水道の分野の技術移転が武器輸出三原則にひっかかってくるという件は、初めてお聞きする話で興味深かったです。
(宇都宮大学 都筑良明)
丹保会長の「土木はナチュラルサイエンスであり、エンジニアリングのオーガナイザーなのです」「土木学会というものが、希望としてはあまり狭い専門家集団であって欲しくない」というご発言にドキッとさせられました。自分自身の就業以来、電気・機械・化学を専門とする技術者と業務を通じて関わっていても、いわゆる「土木屋」としての言動に終始していたからです。今一度、丹保会長の言葉を噛み締めていくべきであると考えさせられました。
(千代田化工建設 石川史郎)
そもそも学会とは何のためにあり、学会誌は何を目的としているのか、という問題なのですが、この記事は単に新会長の経歴やお考えを示すことを目的としているのでしょうか。
学会誌は「売り物」です。単に学会のPRの場とすべきではありません。個人の見解やインタビューを掲載するのであれば、今回の特集の伊藤滋氏のそれのように、特定の話題に対する専門家の見解を聞く、というようにその目的や紙面全体での位置づけを明確にする必要がありますが、この記事では学会もしくは学会誌が、今後どのような大きな目的のもと、どのような行動をとるのかが不明です。勿論、単なる提灯記事ではないことはわかるのですが、新たに就任したからインタビュー、ということではならないと思う。
(国土交通省 森橋 真)
丹保先生のおっしゃった『「産官学」から「産学官」へ』は、これからの大学のあり方そのものであると感じました。「学」は一番、自由に発想を形にすることが可能な立場であり、さらにあらゆることに縛られずに発言することが可能な立場であると思います。そのような立場である「学」がこれからはイニシアチブをとり、活動をすることが大事なのではないでしょうか。
また、先生のメッセージが胸に響きました。これからは広い視野をもつ土木技術者になれるよう、専門にとらわれず様々なことにチャレンジし、吸収していきたいと感じました。
(北海学園大学大学院 盛 亜也子)
会長インタビューが記事と言えるかどうか、議論の余地はあるが、読書の対象であるという点では、他の記事と同列であろう。
私のように土木に近いが土木と断定しにくい緑化分野の人間には、土木という概念が固定化しがちである。しかし、新会長が衛生工学のご専門であり、そのご経験を大所高所から語られておられるのを拝読し、あらためて土木は「市民工学」であることを再認識した。
折しも8月号の表紙は土木教育の歴史を示す写真等資料で飾られているが、この表紙の内容と共に、8月号では、教育の場からの訴えに強い影響を受けた次第である。
(有限会社テラパックス・テクニカ 川九邦雄)
土木屋のはしくれである私に元気を与えてくれるインタビューであり大変刺激的であった。人生の先輩、土木屋の先輩からいろいろな話を伺えることは大変幸せなことである。自分も大きな土木屋となり、いつしか次の世代の土木屋になにがしかを伝えられるようになりたいと思う。
(栗埼夏代子)
新会長からの土木屋に対する様々な意見の中で,特に興味を引いたものが,「専門家集団であって欲しくない」という言葉です。私は,土木工学が極めて経験工学的な分野に属し,かつ応用工学の学問である,と常々考えています。それゆえ,会長のこの言葉から,土木技術者に求めておられる,自分の目で見て,自分の手で触れて,総合的に物事を判断する力を養うということが分かります。私自身,河川に関わる業務に携わっており,このような考えに共感を覚えます。
仙台宣言で土木技術者の倫理規定が示され,これについての特集が過去に組まれましたが,新会長のこのような言葉を踏まえて,土木技術者論なる特集を組まれてみるのも面白いのではないでしょうか
(株式会社水建設コンサルタント 中尾 毅)
丹保会長の, 土木工学・衛生工学・化学と学んできたこれまでの経歴に驚かされました.改めて,土木工学という分野の幅広さを痛感します.また,このことは会長の「土木学会は狭い専門家集団であって欲しくない」という言葉にも表れているのではないでしょうか.
(東京工業大学 山口亮太)
土木以外にも衛生工学、化学など幅広く学んできたという丹保新会長のお話はたいへん興味深かった。土木にはハードとソフトがあるが、それぞれが独立していると思うことが多々ある。しかし、それをトータライズしていきたい、また土木学会は狭い専門集団であって欲しくないという丹保新会長の考え方に共感できた。また、学生に河川など実際に歩いて、目で見てもらいたい、それが許される環境にあるという言葉には、様々なことを経験してきた丹保新会長ならではだと思った。私もスケールの大きな土木屋になれるように、「土木」を目で見て、体験していきたい。
(山梨大学 今尾友絵)
8月号を手にしてパラパラとページをめくってみると,丹保新会長のインタビュー記事が目に付いた.
普段であればそうそう興味を引く記事では無いので飛ばしてしまうところであるが,小題に引かれて読んでみると,なかなか興味深い内容であり,話の内容も判り易く一気に読んでしまった.
新会長の,土木技術者にはトータライズして物事を考えることが必要であるという意見には大賛成である.大学院・大学教育においてこの考え方は今後最重要課題であり,スケールの大きな,トータルとして物を考え,造っていくことの出来る人材が,これからの土木屋の主流になるべきであると考えさせられた.ソフトな表現であるが,大学教員として刺激的なインタビュー記事であった.
(東海大学海洋学部 川上哲太朗)
インタビューの中で丹保会長が仰っていた「土木はナチュラルサイエンスであり、エンジニアリングのオーガナイザーなのです」という言葉が印象に残った。土やコンクリートなどは、他分野のエンジニアからは「皆目分からない複雑な材料」と思われている節が強く、土木屋が特殊な専門家と目される風潮にある。本来、基盤工学家として広い知識と見識を持ち、かつ専門分野の造詣もある... そんなエンジニアを土木屋は目指しているはず。技術革新の速さと過大な情報量を言い訳に、取り組みやすい狭い専門性にしがみ付いているかな、と自戒の念を抱いた次第である。
(千代田化工建設(株) 弾塚雅則)
新会長のお人柄を知ることができ大変良かった。野球と登山に熱中したバラ色の青春,フロリダ大学留学のお話。果たして現在の高校生や大学生が夢見るのは何だろう。土木学会のみならず,土木は狭い専門家集団であってはならないのに受験予備化された高校教育の中で土木を慕うか?子どもの頃遊んだ危険な建設現場は既にフェンスの中に消えてしまった。興味はわくのか?
(熊本大学 重石光弘)
丹保憲仁新会長が自分の生い立ちと土木教育、若手の育成に関して熱く語られていた。聞き手とのリズムもあっていたように感じた。新会長は、土木出身とはいえ、化学、衛生工学等を習得し、また海外留学経験もされている工学者とのこと。インタビューにおいて土木は、@トータライズすることが求められる、A技術・原理の棚卸をし技術の評価を進める、B原点に戻ることの必要性等の指摘をされた。
これらの意見に対して、今後の土木技術者像を垣間見るような気がした。また、専門領域にのみに縛られない教育・学習は、社会人としては取りかかりにくいが避けては通れない道であると感じた。
新会長の就任で、今後学会が他分野との交流が広くおこなわれ、技術交換のメリットが出てくるようになってくることに期待したい。また、学会誌においても他分野の関連記事を積極的に取り上げていくことを望む。
(西武建設(株) 三村 卓)
■時局を論ずる 省庁再編と技術官僚の役割
景気浮揚策として巨大化してしまった公共事業と、今後の技術官僚に求められる課題について、大変分かりやすく解説された記事でした。特に、今日の住宅問題に対する課題を「現代の科学と技術を素人の手にもってくる問題」と評されていたのが印象的でした。
私もこれからの公共事業は、一部の専門家のみで構成される閉じられた場所で進められるものではなく、多くの民衆により開かれた場所で進められて行くと思います。そして「いかに多くの人のニーズを満たすか」、「いかに多くの人の同意が得られるか」が、かなり重要な要素になってくると思います。
技術論の押し付けではなく、民衆の「想い」とともに進める事業。これは、技術官僚だけでなく、我々も含めた全ての技術屋に課せられた課題でしょう。
(建設技術研究所 福井洋幸)
話が飛躍しすぎて要点が分かりづらかった。
(西武建設梶@山本敏昭)
テーマには興味があったものの、難解な文章で理解しにくかった。
(西武建設(株) 三村 卓)
■特集 21世紀の都市問題
密集市街地について多面的にとらえてまとめてあり、全体的に密集市街地について考えるための非常に良い資料となっていると思います。
現実と規則(ルール)の乖離の状況と、その改善の必要性は様々な分野で今後10〜20年位のうちに整理していかなければならない課題が、山積みされていると考えています。都市計画の分野もまったく例外ではないのだなと改めて認識させられました。整理に際しては、無理に現状を肯定せずに、ここは良い、ここは悪い、ここについてはこの面は良いけれどもこの面はこのような問題がある、というように整理しておくことが大切だと考えています。
各記事についていくつか気が付いたところをコメント致しますと、越澤氏が「密集市街地の形成プロセスと今後の課題」の最後で、積極的な国庫補助の必要性を説かれていることに関して、現在のお金のない状況でどれだけの歳出が可能なのかが気になりました。私の住むJR宇都宮市駅東側は国体の時等に建設された広い国道(歩道も充分な幅が確保されているところが多い)で分割された区画の中は、駅から少し離れると、従来からの碁盤の目になっていない幅員3〜6m程度の細街路で構成されています。自転車を主な交通手段とする私はこの構成を甚く気に入っているところであります。この細街路が防災を目的として幅員を広げられ、自動車が容易に入ってくるようになると、自転車、歩行者、路地を遊び場とする子供たちには、交通環境の悪化にもなりかねないと感じています。
そこで防災に関しては、消火栓を充分に設置するというような方向で対応することはできないのかを教えて頂きたく思っています。また、仮にそのような事例があれば教えて頂きたく思います。
また、対談「木造密集市街地はどうしてできた?これからどうする?」の中で、伊藤氏が、「あまり使われていない公有地を、再開発の「たね地」として使う考え方」を説明されていることに関して、実際にこのような事例があれば教えて頂きたく思います。
また、「密集市街地の問題をどのように伝えるか」で飯田氏が、開発すべき評価手法についての考え方を示されています。是非ともこのような評価指標を開発して頂き、住民、市民にも分かり易いようなGIS等のビジュアルな表現手法を用いて示して頂けると、分かり易いのではと考えました。
(宇都宮大学 都筑良明)
密集市街地が防災性などの面から問題視されていることは記事を読んで十分理解したが,その反面密集市街地の持つ良さについては余り触れられていなかったのが残念に思った.「1.密集市街地を知ろう」の学生会員の方々からも,「住んでみたい」,「懐かしく,楽しく,そして暖かみを感じさせる」,といった感想があるように,密集市街地には,日本人が共通して感じる何かがあるように思う.これは,街並みなどのハードウェア,そこに住む人々というソフトウェアのどちらかひとつが欠けても成立しないものであり,そこに住んでいたメンバーが変わらずとも,防災性の高い集合住宅に移り住むことでそのバランスが崩れるように思う.密集市街地の持つ良さを十分理解し,それを生かしつつ防災性を高めるような議論が必要と感じた.
(京都大学 倉内文孝)
巻頭の「密集市街地探訪」は写真を中心に構成され、現在の日本における住宅事情や、土地利用の実態がよく分かって大変良かったと思う。また、密集市街地の問題点とその原因についても明瞭に論じられていた。改善を進める上では、区画整備を促進する必要があるが、そのためには土地をまとめた方が有利となるような税制を採用するなど、制度面での環境整備が不可欠であると感じた。
(大成建設株式会社 上野恭宏)
密集市街地については、これまで防災面や構造的な問題が主としてあげられてきました。今後、地域社会が参画して、総合的かつ戦略的な計画を実施する必要性を感じました。
(熊谷組 浅見恭輔)
たいへん意欲的な内容と構成で、興味深く読ませていただいた。「冒頭の密集市街地を必ずしも否定しないところからの導入」「形成プロセスや現状認識」「問題点の整理」「事例紹介の全体説明と個々の実践事例」「提言」という構成は分かりやすく頭の中を再整理できた。座談会も現場で苦労されている方の言葉は迫力があり共感した。世界の集住都市のコラムもおもしろく問題の根本を考えさせられた。ただ紙面の制約からか、省庁の方の事業内容の説明は分かりにくかった。法学の方や金融システムに詳しい方も加わっていたが、このような他分野からの情報や意見ももっと強化してほしい(紙面を割いてほしい)。土木技術者は工学的対応のみで問題を解決しようと努力しがちだが、他分野の知見のツボも理解しながらコーディネイト的な役割を果たしながら具体的な空間を作っていける資質がこれからの土木技術者に求められると思うからです。この特集の続きをぜひお願いします。
(山梨大学 大山 勲)
20世紀から引き継いだ課題である、密集市街地問題に取り組んだ、読みごたえのある内容であった。
阪神大震災の教訓を考えれば、多くの人が防災上、構造上の観点から再整備の必要性を感じていると思うが、独自のコミュニティー・文化を形成している住民の方々を説得し、意思統一を図るのは並大抵のことではないと思う。私も学生時代には今で言う密集事業区域で生活した経験を持つが、確かに住みやすく、防災上の危険性を論じるという雰囲気ではなかった。「死ぬときは住み慣れた家の畳の上で」的な考え方をもつ人が多かったと記憶している。
4.座談会の中でもあったが机上の空論ばかりに目を向けるのではなく、「人と語り合いながら飲みかつ歌う」のがこの問題を解決してゆく一番の早道ではないかと思う。
(大成建設(株) 松井俊二)
写真のレイアウトに工夫がこらされて密集した感じがでているとともに,写真ごとの説明もわかりやすい.しかし,各地域ごとの説明がもう少しあればよかった.現在の住宅密集地を現地に行かずに視覚的に知るには好適であると思う.
(立正大学大学院博士課程研究生 地理学専攻 横山俊一)
今月の特集は、今までとは違った雰囲気の構成になっていて、思わず写真やコメントを熟読してしまいました。また、COLUMNの「世界の集住都市」もいままでになく、ついつい読んでしまいました。今後もこのような特集の取り組みに期待しています。
(北海学園大学大学院 盛 亜也子)
多くの写真が掲載されており楽しく拝読することができた。密集市街地について様々な事実、問題点、見解などが紹介されており、そのひとつひとつが「なるほど」と思わされるものであった。どうするのがよいのか自分には解らないが、市街地開発事業等によって、旧来の特徴的だった街並みやその町名が無くなっていくのにはある種の寂しさを感じてしまう。
(大成建設 小原伸高)
今回の特集は現在の業務とは直接関係しないこともあり、これまであまり関心を持っていなかったが、「都市再生」は小泉内閣の重点施策のひとつでもあり、これを契機に「土木」がこの問題にどのような役割を果たすべきか考えていきたい。
(日本道路公団 福冨 章)
特集全般を通じて,「人不在」の都市計画に対する批判が随所に見受けられた.この批判は,都市計画の計画目標そのものを否定しているのではなく,目標を達成するための過程(プロセス)の重要性が指摘されているものと受け取れる.価値観の多様化が進む現代においては,都市計画の具現化において,過程を軽視してはならないということだろう.対談記事の中で,「実務を知らない大学の先生」という辛辣な発言も見られたが,これも過程の重要性に対する認識不足が指摘されたものとして,素直に受け止めたく思う.
(広島大学 山田忠史)
密集市街地の危険性は、大学の授業でもよく取り上げられる。しかし、今回の特集でも言われているように、「守っていきたい雰囲気」はこのような密集市街地に住んだことのない私でも感じるものがある。また、密集市街地が違法建築のトリックによって発生したというお話には驚いた反面、ある意味感動した。今回の特集では、たくさんの写真を用い、都市・地域ごとに密集市街地を探訪したことで、地域別の問題や雰囲気がよく伝わっていたと思う。
(山梨大学 今尾友絵)
「密集市街地を知ろう」というタイトルで最初に多くの写真とそれに関する学生会員のコメントが掲載されており,その目的の通り,ある程度実情をイメージで掴むことが出来て非常に良かった。しかし,それに続く幾つかの記事においては,法律や条例さらにはそれに関わる専門用語が頻出し,計画を専門としていない者にとってこれらの記事を読むことにはかなりの労力を要した。どの程度の知識をもった読者層を対象として記事を書くのかは,今回の特集に関わらず難しい問題である。従って幾つかの層に分けて,各々を対象とした記事が載るのは構わない。しかし,それらが混在すると,読者が途中で読むことをやめ,非常に貴重な提言が読まれないまま埋もれてしまうのではないかという気がした。
(高松高専 長友克寛)
この特集の主旨はよく理解できるし,その重要性も認識しているつもりである.しかしながら,目次の段階で非常に読みづらく見えてしまうのが残念である.似通ったタイトルが目次を埋め尽くしており,コラムさえ目次に載っているのは,編集上良策とは言えないのではないか.
また,内容的にも似た記事がいくつか有るように思える.(厳密にいえば違うことは理解できるが)
その中で,「2.この人に聞く」は単刀直入にこの都市問題に切り込む内容となっており,この特集の主旨をよく表している記事であった.
(東海大学海洋学部 川上哲太朗)
(防災上等問題のある)密集市街地の改良・再整備に関する事例がいくつか記述されていましたが、実際事業を進めていくにあたり発生した問題(反対する住民の意見:市街地の再整備等の必要性はある程度頭の中では理解していたとしても、実際には私有地の「買収」が発生するため、「役所が勝手に決めた事で今は特段の支障・不都合・不自由は無い。自分の所を変えてまでしたくない」と言う意見が大半以上を占めているとは思います)とそれをどのように解決(住民の意識を変え賛成に導いた方策)していき、改良・整備事業の成功に至ったかについて、1つでもいいから具体的・率直な記述が欲しかったです。(ただ、敢えて学会誌掲載用に削除したのかも知れませんが。)
(学会誌と言う)専門誌なのに、市役所等で配布している改良事業を紹介するパンフレットを少しだけ専門的に記述している感じがしてしまいました。
(日本鉄道建設公団 荒木 聡)
私にとって都市部の市街地密集地の問題を理解するいい特集号だった。「取材行脚班」による「密集市街地探訪」の写真報告は新鮮かつ衝撃的だった。一方で住宅密集の問題の解決も土木工学の守備範囲かと思うと、その分野には疎い私などは、気が重くなった。簡単に解決の着想さえできない問題が、縷々と述べられているからである。
日本の沖積平野に展開された住宅密集地の問題の解決は簡単ではない、少なくとも私が思っている安全で経済的な土木構造物を発注者に提供するという程度の狭義の土木工学の智恵では、この問題は解決しないことが分かる。
問題は山積で、さらに、座談会「密集市街地整備はなぜ進まないのか」内で、東大・寺島美子教授の次のような発言も印象深く読んだ。「日本では自分に不都合なことや損害を受けて苦情を言ったりするとき、法でこうなってますと言っても、反発しますよね。アメリカでは法というのは人民のためにあるはずだという考えがあり裁判で争ったりしますが、判決があればそれなりに納得するのです。そこが違います。法が自分たちのためにあるものと考えるのと、自分たちを支配するために、脅かすために存在すると考えるのとでは随分違うと思うのです」
地方あら都市部への人口の集中といった都市化の成長メカニズム以外に、日本人の意識特性が都市整備を不健全な状態にしておく温床になっているという指摘があり、これは新鮮な思いで読んだ。日本人が民主主義に対する試練や成熟が乏しいことに起因する意識の問題もあると解釈もできる。
私は、アメリカ人の文化や気質を十分理解してない。しかし、寺島氏が日本人の部分を説明する下りには同感だった。確かに、日本は江戸期から国民意識は大きくは進展していないで、法律と聞くと自分たちを拘束するお上の政策の一種であるという意識があり、公共益・公共施設なる概念は、教育施設、農業基盤施設などの受益関係が明確なもの以外は、理解が得られにくいのが現状である。
間接的とはいえ、自分たちが選んだ為政者(国会議員)が策定した法律なのであるが、どうも私達の意識には、「国会議員や中央省庁の官僚=幕府高官」のような意識を持ち、実際には全幅の信頼を寄せているわけではないのが、明治維新後も変わらぬ意識として頭の片隅にはあると思う。
それら意識からの脱却には、参政意識や政治意識の向上は必須で、地域コミュニティ活動、NGO活動参加なども必要かも知れない。
防災問題(水害、火災、震災対策)、防犯問題、過密交通問題、建築上の家屋老朽化問題、地価問題とそれにリンクする土地税制問題、これの支払い能力問題、住人の高齢化問題、部分的なスプロール状の不動産開発など、どれをとっても都市問題を凝縮しているだけに、土地区画整理の推進などの正攻法では解決しない問題だと感じた。
さらに、土木工学の中の各論という程度の認識をしていた都市計画学、防災工学、環境工学といった分野の重要性を思い知らされた有意義な特集号であったと思った。
土木技術者として、こういったマクロ的な視野にたって、物事を発言し、発注者(ひいてはエンドユーザーである納税者)に技術提案していくことが重要であることを認識した。
【投稿】((株)桜井測量設計 飯野己子男)
■密集市街地探訪
これから今回の特集は読みごたえがあるだろうとある種の覚悟でページをめくった時、このような写真の豊富な記事があったことで、気軽な感じで入っていくことができ、また取り上げられている密集市街地の現状について視覚的にもイメージを膨らませることもできて良かったです。
京都の電柱の地下化についての記述(「電柱が歩行者の安全にもなっている」)は今まで気がつかない視点でした。単に合理的に無くしたほうがすっきりすると考えてしまう中で、面白いと思いました。
(日本鉄道建設公団 荒木 聡)
学生会員の一団で探訪を行った記事は、この特集への導入部として出色のものであった。その構成にもルポルタージュ的センスを感じた。スナップ写真とそれに添えられた探訪者の感想・印象の言葉が、密集市街地に知見が無い私などにも訴えてくるものがあった。「実際に足を踏み込んだような気分で雰囲気を味わってもらいたい」という意図は十分に果たせたであろう。また、東京・京都・大阪の密集市街地が紹介されていたが、場所や地域によってその佇まいが異なっており、密集市街地は「文化」を反映してきていることも伺えた。
(千代田化工建設(株) 弾塚雅則)
記事冒頭に述べられているように、写真のような密集市街地は"防災上きわめて危険"であるが"守っていきたい雰囲気"であるのは確かである。何か懐かしい気持ちにさせる街並みでは、人間的な暖かみを感じ安心感からか自然と歩調もゆっくりになる。しかし、老朽化した長屋や消防隊も近づけそうにない密集地は、阪神大震災の記憶が新しい現状では、進んで住んでみたいとは思えない。住宅取得者の都心回帰が起こっている今、災害に強く、便利で人間味のある街づくりの重要性が高まっていると思う。
(財団法人港湾空港建設技術サービスセンター 前田泰芳)
■密集市街地の形成プロセスと今後の課題
越沢先生の本、記事はいつも興味深くかつ楽しみに読ませていただいている。建築線制度が果たしてきた役割と現在の市街地形成の関わりがよくわかった。記事の最後に、全面道路と敷地のルールを簡明でわかりやすいものとすることが大切、とあるがこれに限らず、住民が参加、主役のまちづくりを推進するには、このわかりやすいルールの構築が大事であり、大改正したばかりで恐縮だが関連法体系を見直すことも必要ではと考えた。
(前田建設 岩坂照之)
表題の通り、密集市街地の形成過程について、時系列的に理解しやすく記述されていて良かったと思います。紙面上の都合もあると思いますが、その取り上げている密集市街地や(市街地の)改良前後を比較した具体的な写真があれば(他の記事で一部該当箇所の写真はありましたが)更に理解しやすかったと思います。
(日本鉄道建設公団 荒木 聡)
明治,大正,昭和の歴史的変遷を紐解きながら,日本の区画整理や都市計画についてまとめ,「建築線制度」という視点から今日の日本の密集市街地問題の問題点を指摘しています.記事には,戦後,建築線制度が廃止されるとともに,市街地を能動的にコントロールしようという思想が行政から失われ,各自が勝って気ままに家屋,建築物を建造しているのが現状のようです.このような密集市街地やスプロール化,景観問題などの問題は,土地や家屋,建築物を個々人の自由に任せ,個々人の都合で,自分の利益を追求することによって,全体としては,逆に,大きな欠陥,損失を生み出すような構図の問題で,このような構図は社会ジレンマと呼ばれています.このような社会的ジレンマの解決,調整のためには記事に指摘があったように行政のコントロールが是非とも必要と思われます.
(金沢大学 中山晶一朗)
■密集市街地における高齢化とまちづくり
密集市街地が建て替わらない理由の1つとして、「建替えへの動機付けの弱さである」と書かれていた。日本の貯蓄率は世界最高水準であり、そのうち高齢者の割合は相当高いと聞く。建替えるだけの金銭なら所有しているのである。それが建替えには廻らず、その他の余暇に費やされているか残ったまま相続されるということになっているらしい。この理由の1つに社会補償制度(年金、介護、医療、保険 等)に対する不安がある。高齢者の住宅問題は社会補償制度とは切り離せない問題だと思う。リバース・モゲージ等、住宅と年金をからめた政策に期待するとともに安価で高齢者に優しい借家づくりと借家に安心して暮らせるシステム作りが必要ではないだろうか。
(関西電力 西田 勉)
■2.この人に聞く 木造密集市街地はどうしてできた?これからどうする?
東京の密集地が、土地柄等、どのようにまた、どのような背景で出来てきたかについてわかりやすくおもしろかった。都市計画についても「おせっかい都市計画」等のくだいた表現で、現状の都市計画・行政の問題点がわかりやすく表現されていた。また、今後の都市計画のあり方の著者の考え方についても共感した。
(東亜建設工業株式会社 大野康年)
8月号の特集テーマは「密集市街地にどう取り組むか」であり、各種各様の意見を拝読したが、私にインパクトを与えるものは少なかった。
しかし、本記事における伊藤氏の意見は、一つ一つが日本の都市防災の最先端におられた経験に根ざしているだけに、まことに説得力があり、実に読み応えがあった。しかも(座談であるためでもあろうが)その内容はまことに平易で、耳慣れぬカタカナ用語もほぼ皆無であって、私には8月号記事中の白眉であると思えた。
(有限会社テラパックス・テクニカ 川九邦雄)
伊藤氏のおっしゃられている「本当の都市計画」のありかたに共感を覚えた。合意形成、アカウンタビリティー、ITによる情報開示など、住民参加型の行政運営方針が盛んになっている。しかしながら、今のところ、行政からの一方通行の感はある。今後、住民がどうしても改善を要望する地区に限定して行政が支援し、そこにはお金も人材も入れる。このことで地域間の競争原理が働き、媒地域活性事業コンペ媒のようなイベントが開かれれば、本当に住民の望む街づくりに繋がるのであろう。無論、厳格なルールありきの話であるが...
(五洋建設 細見和広)
インタビュー形式の記事ということもあり,実際の体験も踏まえながら現実の,実際の建築現場,都市計画が分かり,大変興味深いものでした.法の目を,行政の目をくぐって,作られてしまった建物は庶民の知恵とも言えるし,行政の執行力なさ,制度の不備とも言えます.記事で提案があったような公用地を「種地」として順繰りに再開発を進めていくような柔軟な行政政策だけでなく,法整備を行い,土地,建物を行政側がもっとコントロールする,違法建築等へのチェック機能の強化などきちんとした都市計画の体系的な行政施策が必要だと考えられます.
(金沢大学 中山晶一朗)
どうも木造=悪と決めつける風潮があるようだが、少し偏見ではないだろうか。確かに火災対策の上では、木造は不利だが、住み心地、風合い、落ち着きなど、木造にはRC造に比べて優れた面が多々あると思う。また最近では、このような密集地の雰囲気を是非とも残していこうという建築関係者の取り組みもあるようだ。そのような町並み保存から考える密集地再生のアプローチも語って欲しかった。
(関西電力(株) 大江直樹)
■大地震が密集市街地に問いかけたこと
今回の特集は,都市問題の中でも多くの大都市に現存する密集市街地の問題点である.国内における密集市街地は,長屋が連なり裏路地と呼ばれる互いの軒が重なり合った様な狭い通路,そこには隣近所が家族のような,およそ非行少年少女が生まれる隙も無いほどの暖かい雰囲気が漂う歴史的な街である.永い間つちかわれ養われた特異な環境であるが,老巧家屋や零細宅地の密集から防災を考えればその存続を否定されることに成る.室崎益輝氏が分析した内容あるいは提言も十分に理解できる.しかし,特に最近の経済不況や高齢化社会あるいは小家族化は,このような密集市街地の再開発を非常に困難にする要因であろう.また,この問題の解決をより困難にしているのは,突き詰めれば「人の心」の問題が深く係わっているからだと思う.
(名城大学 清水泰弘)
阪神・淡路大震災での人的被害拡大の原因(因果関係)は木造密集市街地にあることがデ−タにより明らかになっていますが、筆者のご指摘の通り「その脆弱な体質を改善するための有効な手立てがないままに、市街地と家屋の腐朽が歯止め無く進行するという悪循環に陥っていた」ことが根底にあることは間違いないと思います。この問題の解決は大変困難なことだと思いますが、解決しない限りまた同じ悲劇が繰り返されることは明白です。「密集市街地の形成プロセスと今後の課題」で述べられているように、名古屋では密集市街地は殆ど存在しないとのことですから、街の成り立ちや環境がみんな違うとしてもここに一つのヒントがあるのではないでしょうか?
((株)荒谷建設コンサルタント 大田俊一)
■3.座談会 密集市街地整備はなぜ進まないのか?
寺尾先生の日米での法に対する考え方の違いについてのコメントが印象に残った。日本では法は義務を規定し、権利を制限するイメージが強い。アメリカのように権利を守るために作られているという意識を持つ必要があると感じた。それにより、法に対する関心度が高まり、不備な点、足りない点が明確になり、よりよい社会を創造するさいの障害が取り除かれていくのではないだろうか。
(大成建設 沢藤尚文)
密集市街地を整備しようにも、住民はその必要性を感じていないため、無理に進めようとするとごり押しとごね得が支配するようだ。みんなが善人で、みんなが一緒に歌を歌えば良いが、そんなことはまれだろうし、日本では現状維持の方に強く保護の力が働き、わずかの反対でも物事が進まないという問題の構造があるという指摘も確かだろう。こんなところにも、骨太の方針でもって、聖域なき構造改革を進めなければ、事態は変化しないだろう。ただ、何でもかんでも密集市街地がダメだとは、、私自身も思えないが、どうなのだろうか。
(関西電力(株) 大江直樹)
■事例-3 区画整理と建物整備の一体的推進
広島市段原地区における区画整理事業の紹介がされていましたが、事業の推進経緯の紹介に終始しており、事業の実施にあたっての体験談、つまり、いかなる苦労があったか、またはどんな工夫をおこなったか等々について、の紹介があまり無かったのが残念でした。
確かに密集市街地は、家屋の老朽化や住民の高齢化など防災上の問題点が多くあり、社会基盤を充実させるためには、区画整理等を実施するのが望ましいのは事実です。しかし、そこに住む住民によっては、利便性もよく、コミュニケーションが濃厚で、親しみやすく住みやすい街並みと感じている場合もあります。
そういった人たちにいかに働きかけ、いかに納得してもらって街を作ったのか。事業実施にまつわる、現場の「生」の声を紹介するのもひとつの事例紹介ではないでしょうか。
(建設技術研究所 福井洋幸)
■提言-1 ギブ・アンド・テイク型の規制緩和
密集都市問題の多くの部分が「都市計画論理」に由来するものではないのかという著者の疑問の部分に共感した。多くの参考書に書かれている「都市計画」とは,過去に提案された都市計画思想と実務における都市計画手法である。しかし,これらが必ずしも普遍的なもので無いことは,本誌に掲載されている他の多くの記事において,計画論とは懸け離れた住民との対話の重要性が指摘されていることからも明らかである。過去の膨大な都市計画事例について,成功例および失敗例とそれらの要因を明らかにし,その中から普遍的なものを見い出すことはできないのであろうか。そのような教科書,参考書の出現を期待したい。
(高松高専 長友克寛)
密集市街地問題の多くの部分は、「都市計画論理」起源のものではないかという指摘は正しいと思う。確かに防災面では、密集市街地は改善要となるのだろうが、ではマンションも「立体的密集市街地」ではないかという指摘は、良い視点だと思う。どうも、思考が硬直的であるため、個々の問題に応えることができていないようであり、ましてやそこに住まう生活者の身になっているかを考え直さなければならないようだ。
(関西電力(株) 大江直樹)
密集市街地問題に対して行政へ3つの提案を示されているが、なるほどと関心させられた。地域住民の理解と協力なくしては絶対に問題解決しない、そのためにギブアンドテイク型の規制緩和は今までになかった具体的方法で地域住民の立場から考えても賛同できるものと感じた。
(西武建設梶@山本敏昭)
■提言-2 「もやい」によるまちづくり
密集市街地の再整備において、住民参加が重要で必要不可欠であるということを改めて感じました。学校の授業でも、住民参加というキーワードがよくでてきたのですが、実際の例を見てみると、非常に困難なことがたくさんあったことを記憶しています。その困難を少しでも取り除くために、行政は住民と行政が手を取り合っていけるような、制度面でのサポートが必要ではないかと思います。
(東京大学 石村隆敏)
■「世界の住集都市」(その8)
オーストリアのフンデルトバッサーのデザインした住宅は、大変興味深いものでした。
彼は今年2月に他界されましたが、遺作ともいえる施設が、日本でも大阪市内北港の舞洲に、ごみ焼却場と下水汚泥焼却施設として建設が進んでいます。公共事業において、デザインへの取り組みについての賛否は別として、現在、ごみ焼却場は竣功しているので、一度見学にいかれてはいかがでしょうか。
(大林組 小石川隆太)
■提言-3 密集市街地だからこそ経済的視点をもつ
ここまでのこの特集記事を読ませていただいて、実際に資金をどう捻出していくのかという議論が(学会誌という性格上、ある意味では仕方ないのかもしれないが)足りないと感じていたが、ここに欧米などの実例から実際に資金を捻出するための提言がなされていて非常に有意義な提言であると感じた。
このような提言の実現には、諸制度の整備に多くの解決すべき問題があるのであろうが、産学官をなす「学」の側からのアプローチをもっともっと強力に行っていく必要があると感じた。
(千代田化工建設 石川史郎)
非常に大事な内容であり興味深く読ませていただいたが、私の理解力の無さから不完全な理解の部分が残った。今後、同内容をもう少し枚数を増やしかつ図を多用しスキーム解説をしていただく記事があると有り難い。
(前田建設 岩坂照之)
近年の厳しい政府財政制約ならびに金融システムの変革を見通した密集市街地整備事業の財源確保方策について、英国の例にならった投資基金の創設,ならびに米国の例にならったTIFの導入が提言されており、興味深く拝読させて頂きました.ただ、米国のTIFについては,以前から開発利益の還元方策としても紹介されている制度でもあり,このような諸外国の制度をわが国に導入するにあたって,具体的にどのような課題があるのかといった点についてもう少し言及して頂ければと思いました.また,今回の記事のタイトルは「密集市街地だからこそ経済的視点をもつ」となっておりますが,この点についても,防災機能の向上など密集市街地整備が持つ公的な役割を踏まえたうえで,御議論頂ければと思いました.
(京都大学大学院 松中亮治)
記事にも書かれていたとおり資金調達スキームは、事業を進める上で最も重要な事項の1つである。間接金融から直接金融に資金調達手段は変わってきており、公・社債で調達するにも当然財務状態を評価される。証券化やプロジェクトファイナンス等、調達手段の多様化が進んできているが諸外国に比べるとまだまだのようである。都市再生が小泉内閣の重点分野の1つになっているが、資金調達・投資家援助についてもスキームづくり・規制緩和・税制優遇等、政府が行うべきものが大きいと思う。
(関西電力 西田 勉)
■提言-4 環7セイフティー・コリドー構想
セイフティーコリドーの構想は33兆円規模のプロジェクトであるということだが、枠組が大きすぎて実現へ向けての提言が欠けているという印象が否めませんでした。もちろん紙面上の制約や、提言中に触れている欧米式の資金投資の仕組みが提言3にて既に詳しく記述されていること、提言の主眼がセイフティーコリドーという新しい考え方の提案に有ることは十分承知した上での感想ですが。
(千代田化工建設 石川史郎)
世界経済を担う日本の首都を安全な都市にする為、現在問題となっている木造密集地区の環7周辺を、全長幅1km、5700haの特別再開発地区に指定した「環7セイフティー・コリドー」は非常に興味深い。地上は緑を取り入れると共に、高速住宅を建設して十分安全を確保し、地下には高速道路・地下鉄といった都市に不可欠な社会インフラを確保するといった大胆な構想。この用地を10年で特別立法により確保すべきとあるが、達成するには具体的にどうしたらよいだろうか。非常にこの立法はこの構想を成功させるのに重要と考える。現在住み慣れた再開発地区に住居を構えている人にとってはこの地区から離れる事は容易ではない。道路拡幅の為、建 築物を後退させたり、土地の買取りをしている道路を度々目にするが、安易に完 成した道路は少ないように感じる。また、日本は、先進諸国に比べて行政が住居までの都市開発を計画的に行うのを怠ったという指摘がある。しかしながら、木造密集市街地はどこか懐かしさがあり、日本の情緒豊かな面が伺える事から、街の再構築に当たり消滅するのは残念とも思える。画一的ではなく、産業・福祉・教育・文化を考慮をした日本らしさがある街作りを願いたい。
((株)熊谷組 波田泰子)
環状7号線に沿って両側500m幅の帯状の再開発を実施する.このような大規模都市再開発プロジェクトが現実のものとなれば,社会・経済に非常に大きなインパクトを与えることでしょう.しかしながら,事業費は計算によると約33兆円.このコストに見合うだけの便益が発生するのかどうか,慎重に検討する必要があると思われます.筆者は,「東京に必要なことは,このくらいの大きなスケールのプロジェクトを矢継ぎ早に行うことである.」と述べておられますが,具体的にどのようなプロジェクトを考えておられるのか,その全体像を拝見させて頂きたいと思いました.
(京都大学大学院 松中亮治)
提言は大変大胆でおもしろい。実施されれば波及効果は大きいだろう。ただ、この提言を実行するためには超えなくてはならない大きなハードル(住民問題、許認可問題、環境問題 等)が色々ある。紙面の関係もあろうが、このくらい大きなスケールのプロジェクトでの、問題点の解決策の提言も期待したい。
(関西電力 西田 勉)
■20世紀ニッポン土木のオリジナリティ考 掘込み港湾の建設の系譜と日本型港湾開発との関わり
現在は埋立による港湾が主流であるため,触れる機会の少ない堀込み港湾について,その歴史や利点などが紹介され参考になった.
堀込み港湾の多くは,長方形の水路形状をしているため,港内の副振動による長周期波が発達しやすい等の問題点もある.機会があれば,これらの問題点も含めてどのような場合に堀込み港湾が適しているのかを整理していただければと思う.
(大成建設 織田幸伸)
興味深い記事であった。専門外の分野であり基本的な知識もなかったため、堀込み港湾が日本で生まれた方式であることすら知らなかったが、歴史の古い海に囲まれた島国であることを考えれば今さらながらなるほどという気がする。
(大成建設 小原伸高)
陸地を掘り込み港を作るという発想が日本独自のものであることには驚いた。必要のないところには発想は生まれないのだろうが、日本では役目を終えつつあるその技術が現在世界に広がりつつあることもまた不思議である。日本には他地域で活用できる技術がまだまだあるのではないだろうか。死んでしまった(現在使われていない)技術を拾い出し、その蘇生可能性を議論する特集も面白そうである。
(大成建設 沢藤尚文)
掘込み港湾は,港湾開発におけるわが国の高度な技術力の証であり,戦後の経済発展に貢献してきたことが理解できた.しかしながら,筆者も指摘されているように,今後の港湾整備においては,オペレーションも含めた「低コスト化」が一つの重要なキーワードとなる.高度な技術力が港湾開発・運営における低コスト化にどのように寄与するのかについて,機会があれば,筆者のご意見をお聞きしたく思う.
(広島大学 山田忠史)
戦後、天然の良港が存在しない場所に掘込み港湾を整備することで、日本の高度経済成長を支えた鉄鋼や石油化学等の産業の発展が促進されたことから、有効な開発手法であったと思います。しかしながら、現在の日本における国内産業の空洞化など産業構造の変化を考えると、同様な港湾整備は不要ではないでしょうか。本文でも紹介のありましたように、海外への技術協力を主な目的として途上国の経済成長の助けとなることを願っております。
(日本鉄道建設公団 岡 康博)
■コラム 世界の集住都市
世界の集住都市であるが,石造りと木造の建物により視覚的にかなりの違いがある.ヨーロッパ・中東では整然とした感じがするが,アジアでは混沌として見える.コラムではなく1つの記事として,日本の密集地と比較するのもおもしろいのではないだろうか.
(立正大学大学院博士課程研究生 地理学専攻 横山俊一)
海外旅行で訪れた都市の街並みに変化を期待し魅了される私にとっては、今月号の特集欄に掲載されたCOLIMN『世界の集住都市』は非常に興味深かった。多くの写真から都市の特徴(歴史・文化等)を得、文面をより具体的に理解する事ができた。今後の学会誌でも、特集に関連する世界の土木を紹介するコラムを企画して頂きたいと思う。
((株)熊谷組 波田泰子)
■砂 侵される砂
いよいよ第4回目。いずれも興味深く拝読しました。今回は「侵される砂」と題して、失われた砂浜を取り戻すための海岸における対策工法が紹介されていました。海の砂がなくなる一因として、ダム建設の影響が考えられます。この対策として、5月号には美和ダムと旭ダムの排砂バイパスが紹介されていました。7月中旬、国土交通省は既存ダムを治水面で積極的に利用することと、排砂バイパスの整備について発表しました。今後、大規模ダムの新規事業を望めないので、環境・生態面からみても排砂バイパスや魚道等ダム改修事業に着目するのも一案かと思います。今夏、妹の参院選立候補に際し、公共事業を考えるきっかけにもなりました。
(阿南高専 湯城豊勝)
海岸の浸食が深刻に報告されている本記事を大変興味深く読みました。海岸保全を計画的に行うため、今年度に全国各地で海岸保全基本計画の策定が検討されており、将来も安心して海水浴や潮干狩りができるよう、行政やコンサルの担当者が知恵と汗を注ぎ、多大な時間を費やしているようです。
本記事では海岸保全のための様々な工法が紹介されているが、個人的には構造物を用いた工法には疑問です。本記事で紹介されているように、サンドバイパス用に海上に桟橋が設置されている写真を見ると、浸食を防ぐことの代償に新たな問題が生じているのではと感じます。この分野における更なる技術革新を望みます。
(日本データーサービス 東本靖史)
標題の下に書かれているように、あらためて砂は河川,海岸,コンクリ−ト,環境,防災といった土木分野と密接な関係があると認識させられました。砂浜は人々の生命や財産を守る場所,多様な生物の生息する場所,人々が安らげる場所として貴重な場であるため、土木分野の一端に携わっている技術者として砂浜の復活に多少なりとも役立てればと思っています。
((株)荒谷建設コンサルタント 大田俊一)
本記事では、消失してゆく砂浜を取り戻すための新旧の工法を写真や図説で紹介されており、大変興味深かった。最近の各地の砂浜は、長年の砂浜のクリーン運動の甲斐あってかなりきれいきれいになったと思うが、その砂浜が年間約1平方キロメーターの割合で消失していることを私は知らず、驚きを感じた。ここでは、砂浜を維持するための工法の1つとして透水層工法が紹介されていたが、これは砂の性質をうまく利用したおもしろい工法だと思う。また、まだ研究段階であると思われるが、バイオテクノロジーを利用して、耐塩性の優れた砂草や成長の早い海草を開発して砂浜維持に役立てるという土木分野以外の手法も紹介されており、砂浜消失問題は土木分野だけでなく、多方面の分野との協力が必要だと思った。
(京都大学 佐藤芳洋)
■失われた砂浜を取り戻すために
各地で砂浜の消失が問題になっており、さまざまな対策工が取られているようですね。今後の対策工法で、従来の狭い範囲の対策ではなく広域の対策が求められるようになったと述べられていますが、全くその通りだと思います。私の専門ではなく、この分野のことはほとんど分からないのですが、広域での対策の考え方をさらに推し進めて、河川も含めた対策が必要になるのではないかと思います。
(日本鉄道建設公団 須澤浩之)
港湾土木関係の工事に携わることの多い私にとって、当該記事の今後の対策工について興味をもって読ませていただきました。建設業に携わるものとして、環境への負荷の少ない対策工は今後重要であると考えます。現状では、このような新しい対策工(工法)が採用に至るまではかなりの時間を要していますが、環境への配慮および建設業の活性化のためにも効率的な工法の採用が進めばと思います。
(東亜建設工業株式会社 大野康年)
グリーンエネルギーを利用して沖に流出した砂を沿岸に戻す手法は、環境・景観面で優れていると思うが、それにより多様な生物が生息する沿岸における生態系にどのような影響があるのか。天橋立における取り組み結果等も紹介していただきたい。
(日本道路公団 福冨 章)
砂浜の消失を食い止める対策として種々の方法についての説明がされていたなかで,バイオテクノロジーによる砂草や海藻の技術開発に興味を持った.21世紀の建設事業は環境保全の創出を図ることが重要課題であり,自然環境に近い状態での開発行為が望まれる.できれば,バイオテクノロジー技術の報告を詳述願いたいものである.
(福山大学 田辺和康)
今回は、砂浜の問題を取り上げられており身近なことでありましたので興味深く拝見しました。砂浜の侵食や美しい砂浜を取り戻すための対策工法の現状が分かり易く説明されていたと思います。個人的な意見ですが、本文の対策工法は応急処置に過ぎないと思います。ダムに堆積している砂を河川に戻すという根本的な解決策を実行することで、対策工法は不要になるのではないでしょうか。
(日本鉄道建設公団 岡 康博)
■レディーミクストコンクリートにおける"砂"の動向
コンクリートの品質の確保が問題となっているが、骨材の品質の確保はこれとほぼ同じ意味を持つ。しかし、環境保全の観点から、良質の骨材の確保はますます困難になってきている。このような状況もあって、記事中の「低品質骨材の利用」が目を引いた。良質の骨材の確保が難しければ、やや品質の落ちる骨材を使用しても、結果として所定の品質が確保されたコンクリートが製造できるようにしようという斬新な発想に、少し明るい未来が見えた気がした。
(大成建設株式会社 上野恭宏)
工学部を卒業した人間であっても、専門分野以外の技術的な記事を読むには努力が必要です。卒業以来技術的な話題から遠ざかっていればなおさら、ですが、それでも普段の生活で話題になる事柄に出会うことがあります。
コンクリートや骨材も、普段の生活で話題に上りましたが、不幸にしてコンクリート片の落下という話題でした。骨材としての砂についても様々な場で議論となりましたが、単に骨材としての適正かどうか、という論点の他、海砂の採取が全国で禁止の方向にあること、海外からの海砂輸入の動きがあること等を知りました。
純粋な技術的側面以外に、経済や環境の面の条件をクリアしたうえで、どのように砂の供給を図っていくのか、そして誰がイニシアティブをとっていくのか、失礼ながら意外に重要な問題だと感じさせられました。
(国土交通省 森橋 真)
性能照査型や耐久性向上が叫ばれているなか、骨材の品質低下や海砂採取の禁止については、日々危惧を覚えている。
今後は、コンクリートの品質のグレーディングを行い、要求される品質の規定を明確にして、それに応じた骨材の選別を行わなければならないと考える。しかしながら、新たな品質を有するコンクリートの物性値の把握や環境に及ぼす影響など品質保証の面で課題は山積みである。再生骨材をあたりまえのように使用しなければならない日が来るのはそう遠くないだろう。そのときに適切な品質が確保されることが今後の課題なのであろう。今後、さらに詳しいレポートの掲載を希望する。
(五洋建設 細見和広)
コンクリ−ト用'砂'の確保に対して砕砂あるいは加工砂で代用せざるおえない深刻な状況下であることを認識した。代用品といえば舗装路盤材において再生砕石が主流となったがリサイクルを優先するあまりに路盤自体の性能は犠牲にしていると思う。今後ますます代用品が建設資材の主流となることは確実であり、それによる品質低下をまねかないための技術開発が急務であると感じた。
(西武建設梶@山本敏昭)
レディーミクストコンクリートにおける"砂"の現状分析が分かり易くて良かったです。最近10年で海砂の採取規制が進み、それに代わり砕石や加工砂の使用が増加している。コンクリート構造物の質が社会問題となっておりますので、材料の一つである砂の品質を確かなものにしていく努力が必要であると感じました。また、資源の再利用や低品位骨材などの利用は、資源の少ない日本ならではの独自の技術を開発できる機会だと感じました。
(日本鉄道建設公団 岡 康博)
■プロジェクトリポート マリンピア神戸
夏期休暇にマリンピア神戸に行って来ました。そこには、従来の漁港のイメージはなく、施設も非常に充実し、洗練されたイメージを受けました。官民一体で成功したプロジェクトのよい例だと感じました。
(熊谷組 浅見恭輔)
「マリンピア神戸」のような一般市民が海に触れ合うことのできる施設は,これからも整備を進めてほしいと思いました.日本は四方を海に囲まれているにも関わらず,同様の先進諸外国と比較してマリーナ等の海洋レジャー関連はあまり発展していない気がします.このような施設を整備することで,多くの人が海辺に訪れて楽しむことができ,また,その中で土木についての認識を深めてもらえれば幸いだと思います.
(日本鋼管 本田秀樹)
この事業は,PFIの事業方式かなと思いながら読みました.
(福山大学 田辺和康)
この記事を読んで是非マリンピア神戸に行ってみたくなった。この事業の目的である「新しい都市型漁業を展開して、市民に新鮮で美味しい魚を供給すること」が、従来のウォーターフロント開発にない新鮮な印象を与えている。商業施設整備に民間活力を導入することで、来訪者により魅力的なサービスを提供することを目指す事業者の採算性へのこだわりが感じられた。また、同施設内のプレジャーボート保管施設整備にPFI方式を採用することが決定されているが、それについての報告もして欲しい。
(財団法人港湾空港建設技術サービスセンター 前田泰芳)
■技術リポート 海洋・港湾構造物、河川構造物、橋梁
これまで防食技術を取り扱う機会がなかったため,維持管理の基本となる防食技術について考える良い機会であった.ただ,自分に基礎知識がないため,もう少し腐食の原理と防食の基本的な技術について詳しく説明して欲しかった.
今回の様に,あまり触れることのない技術について紹介される技術レポートは大変有意義であると感じた.
(大成建設 織田幸伸)
どういう読者を想定して書かれた記事かが良く分からない内容だった。防食に関して詳しい読者にとっては、全く新しい話題ではなく、逆に防食に関してあまり詳しくない読者にとっては、この記事を読んでもあまり理解が深まらなかったのではないかと思う。例えば、環境別の防食技術の分類がされていたが、その理由については全く触れられていない。技術を論じるのであれば「なぜなら〜だから」の視点は欠かせないと思う。
(大成建設株式会社 上野恭宏)
鋼材の防食について平易にまとめられており、わかりやすい内容であった。もう少し紙面があれば、もう一歩踏み込んだ内容まで書いて頂けたのかなと多少残念な気もする。
ただ、こういった技術リポートを土木学会誌に掲載することについては賛否両論ではないだろうか。こういった内容は他の専門雑誌にゆずるべきだと考える読者が少なからずいるような気がする。
(大成建設(株) 松井俊二)
防食技術は土木建築分野で極めて重要な技術であり、近年はさらに船舶塗料等で環境にも深く係わる問題になってきている。したがって、本記事は多大の興味をもって拝読し、今後も期待するところ大である。
ただし、腐食は電気化学と不可分であろうが、電気化学は化学分野のなかでも最も理解しにくい分野でもあると考える。したがって、多くの土木技術者にもなじみがあるとは考えにくい。そこで、電気防食等の原理などについては、是非とも、子供にもわかる程度に平易に説明していだくことを希望したい。8月号を拝読する限り、私には、このあたりの原理が分かりにくいと感じられた。
(有限会社テラパックス・テクニカ 川九邦雄)
構造物毎と腐食対策例、腐食と防食の原理、関連規格基準がわかり易く説明されていて読みやすかった。腐食コストという言葉は初めて目にしたものであったが、ライフサイクルコストでの評価が重要視される昨今では当然考慮すべきことなのだろう。腐食コストの増大は施設管理者あるいは一般の住宅購入者におけるLCCに対する意識の高まりを示しているのかもしれない。他のメンテナンスコストと比較し、腐食コストの比率はどの程度なのだろうか?桟橋の腐食に対する対策工についての検討業務を行ったことがあるが、電気防食のための外部電源が使用期限を過ぎた状態で放置されている例があった。ハード面の技術開発だけでなく管理するためのソフトの開発も大切である。
(大成建設 沢藤尚文)
公共投資の減少が避けられない中で、今後ますます既存ストックの有効活用、維持管理費の縮減が求められる。高度経済成長時代に建設された大量の土木構造物が、更新期を迎えており、コスト面・環境面に優れた防食技術の開発が急務と考える。
(日本道路公団 福冨 章)
住宅・社会資本整備事業の老朽化対策として重要な技術であり,今後の報告に期待したい.できれば,予告的な紹介があればよかったかと思われます.
(福山大学 田辺和康)
■学生のページ 海外に羽ばたく
このコーナーは海外で働いた方や、外国人の方の貴重な体験を知ることが出来、毎回楽しみにしています。今回の新庄光男さんのお話では海外青年協力隊についての貴重な意見を知ることでき、大いに参考になった。見知らぬ海外における仕事はその土地に慣れることから始まるため、多くの困難を伴うと感じられたがその達成感も又格別のものなのであろう。私も将来一度はそのような仕事に携わりたいと感じた。
(東京工業大学大学院修士課程 川島広志)
日頃、アフリカ及び中近東の人と接する機会がないので、実際に現地で仕事をされた方の意見は非常に興味深い。彼等の習慣・物事の考え方の違いは大いに関心を持った。
「技術移転」は、「相手が教える側と同等の能力を持つこと。」とあるが、人を育てる重要さ、その苦労は共感できる。また、それには双方の信頼関係が大切とあるが、これは相手が外国人に限らない。何事も一人で行うのに限界があり、信頼関係の重要さは日常的に実感する。今後も、日本は建設市場のポテンシャルが高い発展途上国へ、日本の技術を継続的に伝え、役立つ事を期待したいと思う。
((株)熊谷組 波田泰子)
持続的というキーワードが氾濫している昨今、海外における技術移転は難しい課題である。記事中では現地に合ったものは現地でしか見つからないとあるが、日本の技術者が帰った後の維持・補修や技術の横断的発展まで考えると解答探しは複雑なパズルなのだと思う。この点については後の記事、メコン河での祖朶沈床にも見られるポイントである。
日本の最新技術が現地で受け入れられない例も耳にするが、教育的精神の発揚を従来以上に求められるのが、これからの海外建設市場における我々なのであろう。
(前田建設 岩坂照之)
海外勤務に興味のある者としていつも興味深く拝読している。今回は「サウジアラビアでは技術は必要な時に購入すれば良いという考えであり、そういう所での技術移転は難しい」とのお話に目がとまった。なるほど、そのように考える文化の国々は世界中に少なくないかもしれず、それならば我々はもっと日本の高度な土木技術・施工技術を「売る」ことも意識的に考えていくべきなのかもしれない。この体験談をきっかけに気づいたことである。
(大成建設 小原伸高)
一つの工事が竣功すると、また工事を求めて移動し、期間的には、2・3年毎の短期的なものから長期的十年単位にもわたる、土木施工に携わる技術者の仕事環境・家族周囲の環境の変化は、避けられない共通の問題だと思います。ある方は、単身赴任で孤立した山奥での作業をし、また家族と共に暮らしていても、昼夜突貫の職場環境で、家族の顔が見えない人など、その人その人なりの人生模様が存在するでしょう。海外での仕事内容も大変興味深いものですが、(個人的な問題なので、なかなか掲載は難しいかもしれませんが、)個人の次の最小単位である家族をも含めた、生活ぶりについて、インタビューしてみては、将来の土木技術者としての方向性を、模索する、学生にとっても、より有意義なものになるのではないでしょうか。
(大林組 小石川隆太)
インタビューの中で新庄さんが仰っていた「技術移転には、まず信頼関係を築くこと」という言葉に感銘を受けた。そして「"焦らず諦めず"が大切です」と。発展途上の国でのプロジェクトでは、"Training Program"が入札時でも重視されるようになってきた。実のある Trainingを行うには、実際の作業を通した研修(オン・ザ・ジョブ トレイニング)が有効である。次からは研修を受けた者たちが中心になって、新たな研修者を指導していく。そして「研修」を超えて、あるレベルまでの工程計画と技術指導は現地のエンジニア達に任せていく。長い目での技術移転は、コストを低減化し続けるという企業の命題としても、積極的に取り組む方向にある。
(千代田化工建設(株)弾塚雅則)
ここの記事は、毎回楽しみにしている。「学生のページ」と名を打っているが、学生と思われる取材者の顔が見えないのが残念である。インタビュー時の写真を入れたり、学生らしい率直な意見も当コーナーに取り入れたら、もっと読みやすいものになると思う。
(西武建設(株) 三村 卓)
私も青年海外協力隊隊員として1994年から2年間ブルガリアに派遣されており今回の記事は共感できる部分が多く、当時のことを思い出しました。私の職種は水質検査であり、黒海およびその周辺河川水中の微量重金属の分析を現地のブルガリア人とともに行っていました。特に新庄さんが最後に述べられている「一度は海外を経験してほしい、海外を経験することで人間一人の力の大きさ、小ささを感じらる」という一節は同じような経験をした私からするととても共感できる部分でした。海外において短期間でできることは少ないかもしれませんが、若いうちに経験することはその後の人生にかならずプラスになると思います。文部科学省の提唱する「ボランティアの義務化」をいい意味で活用し、すべての若者が1年間ぐらい海外で奉仕できればいいのになあと思うこのごろです。
【投稿】(交流研究員 岡田拓也)
■土木紀行 埋め込まれた遠近法
この記事を読んで,猿島を知りました.掲載されている写真を見ると,緑豊かな自然と軍事基地という人工物のコントラストが,現実世界とはかけ離れた独特な雰囲気を醸し出していると感じました.一度訪れてみたいと思います.
(京都大学 倉内文孝)
家が近いせいか猿島は小さいころよく遊びに行った思い出がある。ここは大きな迷路のようなところでそのころの印象は楽しくまた薄気味悪い場所というようなものであった。その場所が実は土木遺産だということは大きな驚きとともになにかうれしいものであった。あのころ何気なく遊んでいたものが今の自分にとって非常に興味深い物だということは奇妙な感じである。また訪れたいと思った。
(東京工業大学大学院修士課程 川島広志)
東京湾という、汚いイメージを浮かべてしまうようなところに、猿島のような自然島があるとは全く知りませんでした。この猿島の複雑な歴史と、その歴史と調和している自然は、一度行ってみたいと思わせるのに十分な条件であると思います。ぜひ、不必要に人間の手を加えないようにしてもらいたいです。また、信仰の場から軍事拠点、そして現在のレジャースポットと移り変わっていくこの歴史は、今後どうなっていくのか、つい想像してみたくなります。最終処分場になってなければいいのですが、、、
(東京大学 石村隆敏)
猿島砲台の歴史は列挙されているだけなのでイメージしづらく理解しにくかった。現在の猿島の様子や横須賀市が計画している猿島公園整備について内容を詳しく知りたいと思った。今は静かな、歴史ある猿島が魅力あふれる場所となる事を期待したい。
((株)熊谷組 波田泰子)
■海外リポート メコン川での粗朶沈床の試験施工
ODAでは現地で実際に役に立つような援助が求められており、メコン河での粗朶沈床の本リポートは、その部分をどのようの実施したかが説明されており、分かりやすいものになっていると思います。このような技術は大規模河川改修等の大事業に比べると、日本でもそれ程活発に実施されているような種類の事業ではないのではないかとも思われます。他自然型工法の分野に入るような技術で、今後、海外および日本の必要とされる場面で、このような技術を積極的に用いていって頂きたいと考えました。
(宇都宮大学 都筑良明)
より自然環境に近い水制工として,日本でも粗朶沈床の技術は見直されているが,日本の伝統的な土木技術が遠く海外でも利用されていることをうれしく思う.
今回の様に,海外への技術支援は,現地の技術として根付き,支援なしに事業を継続できるようになることがもっとも大切なことだと感じた.
(大成建設 織田幸伸)
恥ずかしながら石積みの水制工といい粗朶沈床といい、今回初めて知りました。発展途上国への技術移転は、相手国のおかれた環境や技術レベルを無視しては成功し得ないと言われいますが、本文から読み取る限りでは、メコン河の河岸侵食の状況、材料の入手可能性、ラオス人の技術・技能などが適切に評価された結果の技術移転であると感じました。
(日本鉄道建設公団 須澤浩之)
日本の伝統河川工法はしばしば高い評価を受けていますが、現在の日本に於いて純粋な形でそれらの工法が使用されているのかというと、不勉強のため、わからないというのが正直なところです。
一方で、この記事のように、海外で実用に供されている事例を見させて戴くと、単純な喜びと同時に、大規模施設建設ではない技術協力の可能性を感じさせられます。工法の原理、アイデアを現地の状況にあわせ適用していく、という道程が技術移転の本来の形なのでしょう。逆に、現状を考えると、技術面に限らず、日本が学ぶことも少なくない気もします。
(国土交通省 森橋 真)
水制工はこれまで聞いたことがありましたが,粗朶沈床という工法は今回初めて知りました.日本とラオスでは河川の条件は全く異なるでしょうが,水制工や粗朶沈床といった日本独特の工法をラオスで適用させた日本人、ラオス人技術者の努力には関心しました.日本は世界で最も多額のODAを出していますが,無駄になるものが多いといった批判の記事をよく見かけます.今後は,このような現地に定着できる技術の提供が多くなればと思いました.
(日本鋼管 本田秀樹)
河川の規模や気候風土が日本とあまりにも違う外国で、日本の伝統的な河川工法が適用可能できるとは、大変驚きました。また、その工法が現地で受け入れられた理由が、「メコン川の気候風土にも耐え得る工法であること」だけでなく、「材料が現地調達可能で、自分たちでも事業展開が可能だから」というのにも驚かされました。
技術移転と聞くとつい、自国の最新技術を思い浮かべてしまいますが、経済的に豊かでない国ではその技術を維持できない。当たり前のことなのですが、今までそのことにまったく気が付かなかった自分に赤面してしまいました。
一時的なものではなく、現地に定着することを目的とするこの国際協力は、文中にもありましたが、まさに「途上国への技術協力の一つの方向性を示す」ものだと思います。
(建設技術研究所 福井洋幸)
メコン河での河岸浸食対策として,日本の伝統河川工法である粗朶沈床が導入されていました.粗朶沈床は材料を現地調達できること,地域の労働力と技術を応用することで製作,設置が可能であることから,新たな浸食対策として注目されたそうです.この工法の利点は,何より自分達の努力と工夫で継続的な事業展開が可能であることにつきるでしょう.途上国への技術援助は,とかく先進国の押しつけになりがちですが,自分達の手で事業を展開できることは何より自信になり,精神的自立にも繋がります.
我が国でも,この粗朶沈床は環境に優しい護岸工法として地域の市民活動でも取り組まれています.多くの子供達がこのような活動を通じて日本の土木技術を学ぶことで,将来環境に対する視点を持った土木技術者に育つことも期待できるでしょう.
(五洋建設 島谷 学)
メコン河での粗朶沈床の試験施工を読んで,このような国際的技術協力が行われたことに大変感心するとともに,土木屋として何か気持ちが明るくなる思いがした.
国際的技術協力というと,世間一般では押し付け的な,何か大規模なプロジェクト工事を連想してしまうが,この河川工事では,現地の経済状態や技術レベルなどを熟慮し,日本の伝統的な河川工事技術である粗朶沈床を試験施工したものである.
このような,現地での継続的施工が可能な技術導入こそ本当の意味での国際的技術協力であり,この工法が現地において成果を上げ,技術が根付いていくことを心から願いたい.
(東海大学海洋学部 川上哲太朗)
■会告
中部支部行事 「これからの技術者像と地域の安全・安心を考える」講習会の中身を詳しくは知りえなかったが,この表題から日頃憂慮していることは,昔からの消防団や組という地域防災共助活動と技術,特に土木技術者である我々が疎遠であること。所詮はサラリーマンの我々は日頃の業務で精一杯だが,その分を退職後に多少ではあるが地域防災に活かしたボランティア活動をやりたいと思う。橋梁や橋脚,堤防はどこにでもあるが,これらの構造物の専門家として活躍後には地域のこれらの構造物の観察(パトロール)ができると思うのだ。
(熊本大学 重石光弘)
■学会誌全般へのご意見、編集委員会への要望等
学会誌を手にするのは学生のとき以来かもしれません。以前はあまり細部まで読んでいなかったかもしれませんが、久しぶりに手にして、記事の内容、構成、編集が、随分読み易いようになったのではないかと考えました。今後とも有意義な学会誌の作成をお願い致します。
(宇都宮大学 都筑良明)
普段は自分の専門分野の技術ばかりに接しているため,学会誌では,"技術リポート"の様に,シリーズで様々な土木技術を紹介する講座のような記事を増やして欲しい.
(大成建設 織田幸伸)
今月号の特集の目次をみると,コラムの目次がたくさん出てきているため,全体的な流れがわかりづらくなっているような気がします.メインの記事とコラムなどの付随するする記事の目次を,フォントを変えるなど,で工夫した方が,目次をみただけでどのような内容がかかれているかがわかりやすくなると思います.
(京都大学 倉内文孝)
学会誌が各分野の専門家を対象としないのならば、特に技術リポートに関してはもう少し教科書的な解説が欲しい。今回で言えば防食技術の記事がそうだったが、その分野の知識が浅い人にとっては、なぜという疑問ばかりが頭に残り、その記事を読んだことでどういう知識が得られたかがはっきりしない。
(大成建設株式会社 上野恭宏)
モニターの回答期限をもう少し長くできないでしょうか。業務が繁忙なときは3週間弱では、学会誌を一通り読むのが結構大変で、今回は目次を見て興味のある部分だけを読んで回答してしまいました。
(日本鉄道建設公団 須澤浩之千代田化工建設 弾塚雅則)
先(新会長インタビュー)に、土木学会誌は「売り物」である、と書きました。とは言え学会誌ですから、専門的、先見的記事も掲載する必要もあります。
ですが、今回の特集記事などは、多少形を変えても、広く一般の方々に知って戴き、議論していただくための端緒となりうると思います。政府は都市再生本部を設置し、「都市」については来年度予算に於いても重点配分される分野の一つとなっています。
何より、都市は住民の方が主役です、「国民(住民)不在の公共工事」の様な批判を受けること自体が許されません。
学会として対外的に主張することの是非はともかく、学会はこのような情報を持っていますので議論のネタにしてください、というスタンスは許されないでしょうか。
都市問題に限らず、土木が日常生活から遠くにあるものではない、ということを国民にわかって貰うことは非常に重要だと思います。これは私の所属する組織の課題でもありますが。
(国土交通省 森橋 真)
学会誌が届いてからモニター回答までの期間が短いように思われます。学会誌はその月の初めに届くことになっているようなのですが実際に届く日はもう少し送れています。
学会誌の製作の関係があると思いますが、このように遅れますと学会誌を十分に読む時間がなくなってしまいます。この点を学会誌送付日を早めるか、回答締切日を遅くするか等の検討をお願いいたします。
(北海学園大学大学院 盛 亜也子)
巻頭の密集市街地を知ろうは柔らかくてイントロダクションとしてよかったのではないでしょうか。土木紀行の記事も一気に学会誌を読む場合の良いアクセント(一休み)になります。
(前田建設 岩坂照之)
今月号は写真が多く、そのせいか「読む気」になり、また読みやすく感じた。内容によらず、様々な実例を写真で紹介して頂けると嬉しく思う。
(大成建設 小原伸高)
今回の内容が,密集市街地における都市防災や都市景観といった視点に重点がおかれたものが多かったことに,多少,物足りなさを感じました。と言いますのも,冒頭論説の中で触れられているような,都市の再構築に対する提言として,人文・社会学的な見地からのものが少なかったことにあります。
人間の高齢化の進行に伴い,都市自身の高齢化も今後の社会問題となるはずであり,これらを踏まえた「人と人」,「人とまち」との関わりなどの提言をテーマとした特集など,機会があればご報告いただきたいと思います。
(株式会社水建設コンサルタント 中尾 毅)
子供向けの絵本を土木学会で作成したそうであるが、今まで余り学会誌を読んでいなかったため存在を知らなかった。学会で作成した一般向けの資料等の一覧を定期的に学会誌に掲示してもらうとありがたい。
(日本道路公団 福冨 章)
子供(小学生高学年から中学生ぐらい)と一緒に読める記事があったらおもしろいと思う。長い目でみた土木のイメージアップと家庭内のコミュニケーション改善に(お父さんの地位向上にも)貢献するのでは?
(大成建設 沢藤尚文)
海外に羽ばたくは第9回を迎え、今回は海外で技術の伝承に取り組まれた体験談が記載されています。第7・8回は外国人のかたへのインタビュ−もあり、学生のペ−ジとはありますが、社会人にとっても貴重な体験談は非常に参考になります。今後ともこのような記事は是非続けていただくことを願っています。
((株)荒谷建設コンサルタント 大田俊一)
せっかく特集にて都市問題に取り組んだのだから、最近話題の「都市再生」に関連するものも提供して欲しかった。
それから、今回の特集を組まれた編集委員の方々のコメントが編集後記にあったが、この方々の思いをもう少し語ってもらっても、興味深かったのではないかと思った。
(関西電力(株) 大江直樹)
特集には、時節にマッチした題材にしていただけると興味深くてありがたい。
(西武建設梶@山本敏昭)
資金調達スキームとして紹介されている様々なものを具体的にもう少し詳しく紹介してはどうでしょうか。紹介されているものを再掲すると、英国と同様な投資資金(仮称:Japan artnership Investment Fund)の創設、ギャップ・ファンディングの考え方の導入、米国のTIFの導入、Revenue Bond、Special Districtへの課税権の付与、Tax Creditの売却による資金調達、TDRの活用等とありました。土木学会としてはこのような特集を組むのは、あまり適当ではないでしょうか。
(関西電力 西田 勉)
土木学会誌には、「会員の入退会」のページがあります。平成13年6月末時点で、正会員(個人)が35,016名、次いで学生会員が5,427名 その他を含めた合計 41,160名となっておりました。国内、海外を含め土木に関係する方は相当数おられるのに学会を活用されていないのは残念だと思います。学会の発展には、より多くの方の参加が不可欠であるし、様々な立場の方の意見を求めていく必要があります。学会の活動をアピールし、活動に参加して頂くといった配慮がもっと必要かと思います。
(日本鉄道建設公団 岡 康博)
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