土木学会誌11月号モニター回答
■今月の表紙
毎月、表紙で取り上げられている写真はどのように決めているのですか??いつも楽しみに拝見させていただいています。
(清水建設 賀屋 絵里菜)
■巻頭論説 土木技術に期待する
「技術者個人としても同様に技術により評価され、結果として収入や地位が向上する仕組み作りが必要である」という筆者の意見に賛成だ。しかし、現実の業界では、プロジェクトへの入札準備や設計の提案などの「ソフト」に対して、所謂サービス(対価を支払わない)扱いで、下請け業者やコンサルに協力を求める元請業者の慣習が蔓延っている。対価の対象になるのは「ハード」の部分であり、「ソフト」は付け足しという風潮は、結果として技術・提案力を軽視することにつながっている。ソフト・サービスに対しても対価を支払う形態に変えていかないと、技術者の地位の向上は、本音と建前の中で形骸化する懸念が強い。これは、建設業界のビジネス・モラルの問題でもあり、大手ゼネコンや官の発注者側から率先垂範する必要がある。
(千代田化工建設 弾塚雅則)
土木技術に期待するということは、土木技術者に期待するということに他ならないでしょう。技術の向上の源は、やはり技術者のやる気にかかっていると思います。土木学会では技術者に関する新しい制度を創設するということですが、資格制度、評価制度などの存在は、技術者のやる気を起こさせる要素の1つになり得るのではないでしょうか。
(東京工業大学 山口亮太)
今後の土木技術については、方向性をだれが決めるのかが大きな問題である。外的な仕組みが整備されつつあることは、われわれ技術者にとっての活性剤となることを期待したい。また土木学会の新制度は、目的と理念を明確にしてしなやかに浸透してゆくことを望む。
(西武建設(株)三村 卓)
■特集 土木技術の市場価値を高める
技研にいる人間にとっていつも感じることは,例えば新工法を開発しても,公共工事では採用されにくい現状(入札では1社しかできない技術は公共性から採用されにくい,実績重視など)があり,この辺を解決しない限り技術開発したものが広まらず,更に技術開発の大きな妨げとなっていると思います.不景気が続く中,企業は技術開発への投資を減らす傾向にあり,益々技術開発できない状況となってしまうような気がします.
(前田建設工業(株)技術研究所 勝又正治)
今月号の特集「土木技術の市場価値を高める」は面白く、また刺激を受ける記事であった。日本の土木技術は世界に誇れる高いレベルのものであり、日本の土木技術者もまた然りであるにもかかわらず、実際に海外に出ていくとなると競争力は必ずしも高くないだろう、と常々感じているのは私だけではないと思う。今のままでは市場価値がさほど高くないことを感じつつも、国内において土木技術の定義、そしてその価値について曖昧なままにしてきた体制、個々の技術者の意識を変えるべき時がきているのかもしれない。
(大成建設 小原伸高)
最近、技術力の低下をくいとめるべき、教育を改革すべき、官民の連携をはかるべきとの話を耳にするたびに、なぜこのような状況になってしまったのかと思う。今まではどうだったのだろう。諸先輩達が築いてきた土木技術でこんなにも豊な生活を得たのに、何が変わったのかと思う。それに加えてこの不況の世の中でなかなか明るい気分にはなれない。昔と今とで世の中の状況も違うが、同じ人間として世の中を動かす力は誰しも持っているはずである。土木屋であればその力が土木技術である。人それぞれ様々な意見があるだろうが、一人一人が一歩ずつ何かを改善していく以外に土木技術の市場価値を高める方法などないと思う。
(栗ア 夏代子)
土木事業により整備がなされるもの,これらの大半は社会資本施設で占められています。国民の安全で快適な生活環境を提供するという基本的な姿勢のもと整備がなされる社会資本施設を市場価値で判断することは,極めて難しいものであると感じます。
言い換えれば,これらの社会資本施設は市場価値として当然,高いレベルでなければならない責務を負い,社会資本施設を構築する我々技術者のレベルも常に高いものでなければならないということに直結します。
とはいうものの,何をもって技術者のレベルを測るのかという問題に直面するわけですが,技術的知識が豊富なだけでは通用しない世情となっているに違いありません。
社会経済情勢が大きな転換期を迎え,「低迷する経済情勢」,「環境へのニーズの高まり」,「少子高齢化に伴う生産人口の減少」などの制約を理解した中で,新たな社会資本整備を進めることが我々技術者に課せられた義務と考えます。
これらの中でも来年の発効がほぼ確定した「京都議定書」などから考えても,「環境」に対するニーズ,いや制約は土木という分野において今まで以上に厳しいものとなることが予測されます。
このようなことを踏まえると,今後,土木技術の価値を高めるためには,やはり「環境」を抜きにして語ることはできないはずです。それゆえ,土木分野への環境経済学の導入が不可欠ではないかと常々考えています。
大袈裟な意見かもしれませんが,早期に環境経済学がこの業界に取り入れられることを強く望んでいます。
(株式会社水建設コンサルタント 中尾 毅)
「技術開発と市場メカニズム」において、「提案可能な市場を開くこと」の重要性が指摘されていることに共感を覚えた。技術を持つ側から積極的に提案するようなことも必要となっていくのであろう。その場合には、技術者側とその利用者側(発注者側)を結びつけるような機能を持つような組織や人が必要となる場面も多々生じるであろうと考えると同時に、既に商社、コンサルタント等がそのような役割を果たしている部分もあるのかとも思われる。特に公共事業の場合には、そのような役割をオープンな場で議論していくとともに、そのような調整的な役割についても、できる限り予算化するような仕組み作りが大切になるであろう。
「技術開発における産学官の連携」の中で、図2として維持修繕工事比率の推移が紹介されている。平成11年度には19%弱まで上昇しており、今後どのように推移していくと予想されているのかに関心がある。
この問いへ一つの回答と言うべきものが、第2編の「投資環境の変化と技術のあり方」の表1、図1に示されている。全体は公共事業、公務員試験、技術士等の状況についてコンパクトかつ的確に概説されているものだが、ここでは2020年以降は新規の投資余力はほとんどない、というような展望となっている。今後のこのような大枠の方向性について、状況に大きな変化があるのがそれほど先のことではなさそうなので、議論の中から合意形成を行っていくことが必要だろう。その枠組みとなるのは、国なのか県なのか市町村なのかというところからの議論も必要だろう。また、教育のレベルアップの必要性や責任システムの導入について考えることは、今後も大切だと衣思う。教育や人材育成は大学だけの努力では限界があり、学会として、初等、中等教育への要望を発信していくことも今後は意義深いものとなるのではないだろうか。最後に、特にわが国の技術開発の方向性について考えるときに、西洋の石の文化に対して日本の木の文化というものがあるとすれば、持続可能性、バイオマス資源等の観点からも、寿命の長い木造建築を再度見直すような方向での技術的展開を強調することはできないのだろうかと思う。
(宇都宮大学 都筑 良明)
■技術開発と市場メカニズム
特集記事の巻頭を飾る当記事は 、目を見張るような内容というわけではない。
筆者は、特集のテーマ(土木技術者の市場価値を高める)が生まれた暗黙の背景(土木技術者の市場価値は低下の一途?)を塗り替える手だてとして、突飛な発想ではなくギリシャのリオン・アンティリオン橋の事業を担当したフランスの企業の取組を紹介している。しかも、その内容が具体的で、私は「フーム、なるほど」とわからないながらも基礎断面図に見入ってしまった。
この筆者は他にフランスのある土木会社のユニークな取組やシステムを紹介して、それを許す社会の土壌についてもふれている。はたして、我が国でそのような社会的背景が短時間で構築できるのか極めて疑問であるが、それをやらなくては総倒れになりそうな状況でもある。長い文章ではないが、重い読み応えがあった記事であった。
(有限会社テラパックス・テクニカ 川九邦雄)
これまでの日本の土木技術開発の歴史が簡潔にまとめられており大変参考になった.日本では,施工業者が工事を受注するために無償で技術を提供するケースが多い.この場合,技術に対する評価は,施工費に暗に含まれる形となり,純粋な技術に対する対価が表面に表れない.論旨にあるように,経営環境の悪化する中で,今後継続的な技術開発がなされるためには,技術に対する正当な評価が得られる市場の形成が重要であると思う.一方で,その技術は本来誰が開発すべきかという点についても,今後業界全体が再構築される必要があるように思う.官公庁,大学,コンサル,施工業者等のそれぞれが,技術開発に果たす役割を考え直す時期に来ているのではないだろうか.
(大成建設 織田幸伸)
我が国の土木技術発展の歴史について歴史的背景と共に詳しく知る事ができ非常に勉強になった。技術開発の必要となった発端や社会的背景を今まで知る機会がなかったので興味深かった。さらに、技術開発と市場について欧米の事例より技術の価値を高めるには何が必要なのか理解する事ができた。
((株)熊谷組 波田泰子)
我が国の建設業の市場メカニズムと欧米および他産業の市場メカニズムを比較することにより、我が国の特に公共工事の市場メカニズムが特異であることが明快に表現されていた。要素技術やエンジニアリング技術を含めた技術開発が、その価値を高めるには、著者と同様、従来型の公共工事発注システムではなく、技術のコンセプトを競う技術市場が必要であると思うが、それらの技術を適正に評価するシステムが不可欠であると感じた。
(東亜建設工業株式会社 大野康年)
この記事の中では,リオン・アンティリオン橋を設計したフランス企業の例をひき,個々の要素技術に加えて,それらを構造的・経済的合理性に立脚して組み合わせるコンセプトの重要性を述べている。学校では,個々の要素技術を開発するための基礎理論は教えるが,それらを総合して何かを構築する能力の育成はなされているだろうか。そのためには,学生も教官もその必要性を自覚せざるを得ない状況をつくり出すことが必要である。記事の中で指摘されているように,優れたコンセプトを積極的に採用する市場の存在のさらなる広がりを望みたい。
(高松高専 長友克寛)
この文章を読んでいると、なぜ、日本の建設技術開発がイマイチなのかがわかってくる。独創的・経済的な技術開発を行っても採用されなかったり、協会を作って誰もが使えるようにしないと日の目を見ない。どう考えてもおかしいというよりもったいない現状である。しかしこれから日本でも経済性を追求されるのは間違いなく、デザインビルド発注がスタンダードになるであろう。そこにこそ、技術者が最も腕を振るえるおいしい部分が残っているはずだ。日本人には、フランス人に負けないような実直さと改良の技術が残っているはずである。
(五洋建設 細見和広)
■事例から探る活きた土木技術
日本の技術が世界でも有数、と言われる分野は多いですが、土木技術もその一つに数えられているのでしょう。本稿で挙げられている具体的事例からも、それは伺うことができますし、大規模な事業が目に触れる機会が多く、「納得できる」ものでした。
しかし、私を含め、現場を知らない人間は、更なる技術開発の必要性は薄い、逆にいえば、現在の土木技術はほぼ完成の域に達しつつある、と思うのではないでしょうか。ひとえに技術開発のニーズを意識することがない故であると思われますし、ある意味では喜ぶべきことなのかもしれませんが、技術開発に携わっている人間としては自らの行為に何らかの評価が得られればそれに勝るものはありません。
ここでも、土木技術が直面している、そして今後直面するであろう問題について、どのような技術が求められるのか、それがどのような効用をもたらすのかについての情報発信が必要となります。産学官が連携して取り組むべき課題でしょうが、実際にどのような技術的課題とニーズが存在しているのか、それを知りたかったところです。
(国土交通省 森橋 真)
活きた土木技術とは何かということについてわかりやすく書かれ、興味深く拝見しました。技術ばかり先走っても社会のニーズと反していたら技術は全く活きることはなく、また他の分野と協力し合ってこそ技術は高度化され活きていくという事は全くその通りだと思います。そして技術者一人一人が社会で起こっていることを広く深く考え、各々が持つ知識や経験を技術にプラスしていく事でさらに技術は活きていくと思います。また技術を活かすためには、過去の技術を見直すことも重要ではないかと思います。
(清水建設 賀屋 絵里菜)
いくつか事例があげてありましたが、例えばシールド工法の中で新たに開発された施行方法について、名称の例示だけではなく、その特徴(開発理由、他の工法と比較しその工法の適している場所、具体的施行例等)、また、一律に算出する事は難しいのかもしれませんが、その工法を用いた際キロ当たりの工事費について、一覧表的にまとめてあれば更に資料的価値も高まり良かったのではないかと思いました。
(日本鉄道建設公団 荒木 聡)
■技術開発における産学官の連携
新技術の採用、実際の工事への導入がなかなか進まない大きな原因は、その経済性の効果が実施前に検証できない、又は検証の説得性が弱いからであろう。「新技術は素晴らしい、しかし高くつく」では、発注者に益する効果は甚だ疑わしい。良い物を安く早く欲しいのは、万国共通のテーゼであり、新技術の導入がその経済的側面とともに語られなければ「技術力の向上」の掛け声は絵に描いた餅になってしまう。国立大学の独立行政法人化が追い風になって、産学官の連携が進むとしたら、このブレークスルーの契機となるかもしれないと感じた。発注者のニーズに敏感な「産」が、基礎的又は個別的な技術に長けた「学」と、より提案的な連携を組み、「官」も長期的・普遍的研究が生かせる事業計画を推奨していく。建設エコノミクスを取り入れるなら、他分野の専門家(経済学、エコノミスト的コンサル)を参加させていくことも重要になると考える。
(千代田化工建設 弾塚雅則)
■企業経営における技術開発の課題と方向
建設大手の幹部である著者の意見には非常に説得力があった.業界の裏まで熟知している著者の提案は,現在のゼネコン幹部の誰もが思っていることであろう.今後は各社生き残りをかけて熾烈な争いになるのは不可避である.競争力のない企業は今後ますます淘汰されるであろう.
しかしながら,過渡競争が進むと著者が最後に述べている「社会的責任の遂行」が難しくなる状況も出てくるのではないか.企業倫理を促す単なるスローガン的な提案ではなく,今後生き残りを掛けた争いの中では「社会的責任の遂行」を疎かにした企業は決して生き残れないといった具体的な事例を提示して頂ければより興味深く拝読できたと思う.
(横浜国立大学 島谷 学)
■新たな建設産業構造の構築と建設マネジメント技術
日本は、大規模プロジェクトを全て官主導で行ってきた。特に戦後はスピードが要求され、結果として「工期」だけが尊重される建設業になってしまったように感じる。マネジメント技術で海外に大きく遅れている日本の建設業が変わるには「サービスの対価」をもう一度見直してシステムを構築する必要があるだろう。大変参考になる記事であった
(前田建設 岩坂照之)
"本当に国民の必要とするものを造ってきたのか?""わが国の建設マネジメント技術は、SkillやTechniqueの範疇である。" とは耳の痛い言葉です。この言葉を含めここに記述されている内容は、建設産業に携わる"技術者"として反省すべきは反省し、また経済の低迷が続く社会状況の中で、"これからも建設産業に携わっていくため何を為すべきか"を考える上で大いに参考となりました。
((株)荒谷建設コンサルタント 大田俊一)
建設産業が国民の信頼を失いつつある状況に陥った原因として、「本当に国民の必要とするものを造ってきたか?」という指摘は、ある意味正しいと思う。ただ当初は、本当に必要なものを1人の国民のためにでも造り評価されてきたのだろうが、その後「隣の芝は青く見える」根性で無駄の競争を演じた結果がこうなってしまったようにも感じる。
そこで、あらためて信頼を回復するために、果たして必要かを技術者として認識できるよう、単なる「造る技術」から「造るプロセスを管理する技術」への科学的成熟度向上が必要という指摘は、まさにそのとおりだと思う。
(関西電力(株) 大江直樹)
■土木技術者の市場価値向上に向けて
海外での体験を踏まえ、自分の市場価値から土木技術者の市場価値へとつなげていく構成は説得力があり、引き込まれた。単なる語学力の問題以上に、日本の土木技術者が抱える問題、ニーズの把握、ソフトからハードを構成する能力、リスク管理とコスト意識などについてあらためて考えさせられた。
人件費が安く優秀な技術者が多いアジアを考えれば、最近取りざたされている中国問題も、電器/家電/IT業界だけの問題ではない。すでに少なくない日本企業が外資CM会社と仕事をしている。
(前田建設 岩坂照之)
全く耳の痛いタイトルです。土木技術者とは、土木工学を学び、その専門性をバックボーンに、様々な分野で活躍し得る人材の筈です。本来ならば。
全ての業界、業種に栄枯盛衰が存在する(存在した)なかで、現在土木・建設業界が迎えている状況は初めてのものなのでしょうか。社会から必要とされている、と意識できなくなった時にパニックに陥らないようにする為に、どのような思考が求められるのでしょうか。
およそ学問を通じて得ることのできる共通の事柄は論理的思考という手段です。土木技術者は土木工学を通じてそれを取得します。しかし、自戒を込めて言えば、時とともにそれを忘れ、結論ありきの思考に陥っていた気がします。
初期条件が大きく変化したとき、モデルを見直し、確認する作業が自ずと生じます。環境が大きく変化したとき、ビジネスモデルやコストなどの(新たな?)変数を考慮し、自らについて論理的思考により再度評価する必要があります。
(国土交通省 森橋 真)
非常に刺激を受ける記事であった。我々日本の会社員の賃金も、業績により給与・年棒が決まる時代に変わりつつある現在、「自分自身の価値を市場で測る」ことを自分の問題としてきちんと考えることから初めてみようと思う。
(大成建設 小原伸高)
11月号の特集は「土木技術者の市場価値を高める」である。毎回特集のねらい(希望するところ)はよくわかるのだが、いかんせん、今月の特集にしても、「そんなの、誰だってそう思うけどさ、みんなそれがどうやったらいいか分からないから、こんな不況になってるんじゃないの? 今さら糸口が見つかるの?」と、思う。
そう思って読み進むと、案の定、聞き飽きた感じの空疎な紋切り型の論調も目に付く
その中にあって、本記事は、タイトルから正攻法で、特集の他の記事とは力の入り方が違うと直感で感じた。
読み出すと面白い。書いている当人が与えられたテーマを消化できずに堂々巡りしているような記事と違って、「自分(この記事の筆者)は、ゼネコンで海外技術を経験した土木技術者から銀行へ転身し、さらに、今、アメリカの建設や投資運営を行うコングロメレート企業にいる立場から、日本の土木技術を俯瞰する」という明確な視点を持っている
そして、本四連絡橋公団の橋梁技術者を例に出し、「その技術の価値をいかに市場で高めるかという発想はどこにもなく、また自分の価値を市場で測るという発想も皆無といういうのが現実であろう。」と一刀両断している。
本四の技術者集団のレベルがどの程度なのか、私にはわからないが、建設分野の仕事をしてる人間としては、たしかに我々の技術の価値をいかに市場で高めるか、というような発想は平均的に技術者に不足していると感じる。市場につながる部分は、ともすれば談合やネゴに強い営業マンという独特の雰囲気を持つ人々に任せきりで、技術の説明が必要になったときだけ、技術者が登場するだけという感じが極めて強い。
本記事の筆者は、そんな技術者の視点からすれば目をむくような発想で次から次へとたたみかけてくる。中にはダムの代わりに保険デリバティブ商品で対応などという、目が白黒する論理もあり、私の理解を超える部分もあるのだが、とにかく、こういう議論が百出すれば、世の中もっと進歩するだろうと、つくづく思う。
一人でも、多くの人に目を通していただきたい記事である。
(有限会社テラパックス・テクニカ 川九邦雄)
ハードからソフトへという項の中での天候デリヴァティブを使った保険商品という考え方に非常に興味を引かれた。文中にも書かれているように単純に効果対費用で割り切れない事業である事は確かだが、建設事業(あるいはもっと大きな意味での Old Business)にはこのような発想の転換が求められている時代なのだと感じた。
(千代田化工建設 石川史郎)
日本のゼネコンと筆者が勤務している米企業との経営比較や両国の市場比較は非常に興味深いものだった。客観的に日本の市場・ゼネコンの問題点を再認識する事ができた。競争力を付けるには自由市場にまかす事が最善であり、縦社会の日本とって大きな課題だという事を痛感し、改革は急務であると考える。日本市場において、従来のものづくりという意味での建設は成熟に向かっており、今後は国際市場を視野に、その中で競争に勝つには、まず自己の高い技術に自信を持ってPRできる力が重要であると思う。
((株)熊谷組 波田泰子)
大変興味深く読ませて頂いた.土木工学科出身でありながら数々の業種を渡り歩き,様々な挫折を味わいながらも現在海外の企業で活躍されている氏の持論には非常に説得力があった.旧態依然とした日本の建設市場に警笛を鳴らしながら,我々土木技術者にも自身の価値を市場で測るという考えをもつよう期待している.
恐らく従来の土木技術者の中には「外様」である氏の意見に反発を持たれる方も多いであろう.しかしながら,今後ますます建設市場の混迷・流動化が進むのは間違いなく,私個人としては「個」としてより一層独立しなければと少々焦りを感じた.
(横浜国立大学 島谷 学)
非常に興味深い文章であり、ゼネコン各社がバブルに踊った理由が解るような気がする。それはそうと、これから競争激化は間違いなく、土木技術者 各個人の能力が問われることになるだろう。この個人の能力が組織もしくは建設業界をどこまでリードしていけるのかが重要なことになるのであろう。そしてグローバルな立場での自己価値のポジションと強味を理解し、価値をどうしたら高めることができるかに力を注ぐ必要がある。なかなか手強い課題であるが、避けては通れない道であり、チャンスだと考えたい。
(五洋建設 細見和広)
今後、公共事業の計画段階で代替案も含め幅広い選択肢を住民に提示し、計画に対するコンセンサスを得ることが必要となるであろうが、常に「つくらない」ことも選択肢の一つとして説明することが求められると思われる。
ダムの代わりに天候デリバティブ使った保険商品というのは、非常に乱暴な意見ではあるが、そのくらい幅広い知識の柔軟な思考を土木技術者は持たなければならないと思う。
(日本道路公団 福冨 章)
「土木建設市場は、…Commodity(常時どこでも利用可能な汎用品)商品を扱う超成熟市場になりつつある」「土木の専門家からの、ダムをつくらないことも含めた、積極的で未来志向の発言を期待する」「異分野へ挑戦すること。他業種から人材を導入すること。」「大学で何を専攻したかは、…あまり意味を持たない」等、興味を持って読ませてもらった。今後建設市場がしぼんでいく中でどう進んでいったらよいのかの参考にさせてもらいたい。「自分の価値を市場で測る」とあるが、土木技術のように、市場というものが小さいところで「市場で測る」のは難しく、今はまだ「新たな市場環境を整えること…を期待する」状況であり、土木屋が現状の規制下で「価値を測る」にはどうしたらよいのかと考えを巡らしている。
(関西電力 西田 勉)
土木からも日本からも離れた方から見た、ゼネコン・バブルの背景の分析や、技術者の市場価値向上に向けての提言など、冷静かつ的確な指摘には大いに感心した。そして、その提言の中の1つに、「ハードからソフトへ」として、ダムを造らずに治水事業を行うべく天候デリバティブを使った保険商品の例え話が出てくるが、今後このように物を造らずに活躍する土木技術者が増えてくるのかもしれない。
いずれにしろ、今後ますます混迷、流動化する建設市場においては、このような多様かつ個性的なビジネスモデルを立案する能力が必要となるのだろう。
(関西電力(株) 大江直樹)
興味深く読ませていただきました。
筆者は土木技術者からまったく違った職種に4度も転職され、違った職種における冷静な視点で従来の建設業界および土木技術者を見つめ直し、今後土木技術者の市場価値向上のための提言をされている。今後社会資本整備の減少は明白であり公共事業依存型からの脱却、また土木技術者の価値向上の必要性はだれもが反省し理解しているところであります。しかしながら具体的方策、方向性が見つからずに自信喪失状態にある我々にとって率直で、衝撃的な提言に感謝の意を表します。
(西武建設梶@山本敏昭)
混迷を深める今日の建設業界を覆う閉塞感を打破するためのたいへん示唆に富む内容となっている。土木屋としてあえて"異端"のみちを選んだ筆者が、これまで何を考えてどのように行動したか、また日本の建設市場と土木技術者に何を期待するかについて、率直にわかりやすく述べられていると思う。新しい時代に生きようとする日本の土木技術者への応援歌として拝読した。
((財)港湾空港建設技術サービスセンター 前田泰芳)
■技術力の競争にするための入札・契約制度はあるのか
近年,技術を評価するための様々な入札・契約方式が導入されており,それらの現状が簡潔にまとめられている.特に,それらの方式の現在の活用状況と,そこに生じている問題点について明確に示されているように思う.施工業者が工事を受注するために技術を無償で提供するという日本独特の業界構造を考えると,海外の入札制度をそのまま導入したとしても上手く機能しないだろう.建前でなく現実を踏まえたより有効な入札・契約制度について,今後も議論が続けられることが望ましいと思う.
(大成建設 織田幸伸)
VE方式についての日本国内・公共事業での現状・問題点についてよく理解できる内容であった。海外での私企業に対する設計施工業務を主担当業務としている私としては、受注の為のVE提案は必須とはなっているもののある種の閉塞感も感じていた。顧客(ここで論じられているのは当然官庁)側の姿勢に大きく左右されてしまう制度であるからである。受注者・発注者の積極的関与があって初めて有効になる制度なので、今後の普及のために双方が歩み寄っていくべきであると感じた。
(千代田化工建設 石川史郎)
いずれの入札・契約方式においても、設計技術、施工技術に対して適正な対価を支払うという考えが根底にあるべきだと思う。ソフトに対する適正対価を念頭において、発注者、設計者、施工者、施工管理者のいずれにとっても合理的で適正な発注方法を見直す必要がある。
(大成建設 沢藤尚文)
VE方式や総合評価方式等新しい入札・契約方式は、従来の価格競争に比べて技術提案を行う入札参加希望者及びそれを審査する発注者双方にとって負担が大きい割に落札機会やコスト縮減などの成果が小さいのではないだろうか。発注ロットを大型化し、双方の技術者の負担を減らすことにより、1件の技術提案で大きな成果が得られるようにすべきである。
(日本道路公団 福冨 章)
昨今、国土交通省を中心に盛んに検討・試行されている、新入札・契約方式の利害得失や問題点等が簡潔に述べられており、たいへんわかりやすい内容となっている。そもそも、入札・契約方式の選択肢が増えることは発注者にとり利のあることであり、工事特性と発注者のマネジメント特性に見合った的確な入札・契約方式を臨機応変に選択できる環境が早急に整備されることを望む。
((財)港湾空港建設技術サービスセンター 前田泰芳)
■土木技術の国際競争力の強化に向けて
日本がいまどのような状況にいるのか客観的に判断することは重要であり、日本の技は本当に国際社会において一流と認められているのかどうかは非常に興味深いところである。日本語というハンディを考慮しても欧米諸国の日本の技術への関心は思っていたよりも低いと感じた。もっとグローバルに物事を捉えていき、国際競争力を身につけなければいけないということを感じた。
(東京工業大学 川島広志)
■失敗から学ぶ創造学
"実感なしの作業ほど怖いものはない"―失敗に学ぶ例3― には、「"体感・実感"をもたない技術者・作業者が生まれ始めている。」と記されていますが、事実その傾向にあります。実際に現場で"もの"造ったことがない技術者が、スペック(仕様)やマニュアル(基準書)に基づいて助言や設計を行った場合、シュミレ−ションだけで技術が解ったつもりの技術者と言われても仕方ありません。
(財)国土技術研究センタ−の小沢理事がP26.−技術力の競争にするための入札・契約制度はあるのか−で述べられている「実施設計段階におけるノウハウ、さらには架設計画など施工上のノウハウは、設計業者に乏しく・・・」は、全てがそうだとは言いませんが反省すべき点です。ただし、この問題は特集−土木技術の市場価値を高める−の中で随所に述べられているように、単に組織や技術者個人の問題として解決できる内容ではなく、わが国の建設産業全体の問題として取り組む必要があることを認識させられました。
((株)荒谷建設コンサルタント 大田俊一)
広島新交通システムの事故の主原因がH型鋼の使い方のミスであるということを知り驚いた。同様な架設方法はおそらくそれまでにも行われていたのであろうが、落下した橋桁はそれまでの実績よりも大きなものだったのではないだろうか。実績のある工法、構造については、実績があるが故に条件の違いが過小に考えられてしまう可能性があるようなような気がする。
(大成建設 沢藤尚文)
失敗を生かすことの重要性について興味深く拝見しました。失敗を生かしてこそ技術は進歩し、またその技術を適用する際に、技術の定式化は不可欠であると思います。 そして、ここで重要となるのは、技術が定式化され生み出されたマニュアル等をどう利用するかであると思います。自然を相手とする土木には同じ条件というものは少なく、どんな事が起こるかわからない中で、ただマニュアルに従うだけではなく、マニュアルを1つの手段として利用し、様々な知識、経験とを交えて設計・施工していくことが大切であると思います。今後、技術が形骸化しないためにも、技術者一人一人が体感・実感する必要性がおおいにあると思います。
(清水建設 賀屋 絵里菜)
実感を持って読ませていただきました。昔から土木工学は経験工学と教えられて来ましたが、経験というものが如何に大切かを改めて認識したような気がします。失敗することにより物事への注意力や慎重さが増し成功への礎が築かれるという意味で「失敗は成功のもと」ということわざがあります。教育機関などない昔は、まさに現場でいろいろなことを経験し同時に多くの失敗を繰り返して技術者が育てられて来たのではないでしょうか。現在の社会情勢は不況等で各種の経験を積むことさえ難しいものとなってしまいましたが、このような時こそ、もう一度原点を見直して仕事を進めていくことが大切ではないかと思いました。
(水資源開発公団試験研究所 吉田好浩)
"失敗は必要だ"という言葉を見て安堵したのもつかの間、直後に"同じ失敗を繰り返してはいけない"を見て気を引き締められたような気がします。人は失敗をすることで体感・実感をし、それによって成功にたどり着こうとしますが、土木という分野はその性質上、安易に失敗することは許されません。筆者は"失敗の痛さと事故の怖さを知らない人達が続々と生まれている"と危機感を募らせていますが、失敗をしないで多くを学んでいく方法を考えていくことも必要であるような気がします。
(東京工業大学 山口亮太)
土木という分野は事故や失敗が人の生命を脅かすことにつながる。しかし、「失敗は必要だ」と言い切る筆者の「真の科学的理解」までの論拠はとてもわかりやすく、そうでなければならないことだと強く感じた。特に、失敗に学ぶ例3における「"体感・実感"を伴わない単なる知識の請け売り」の教育にはかなりの問題があると思う。これは安全教育に留まった話ではない。机上の空論のような教え方、マニュアル通りの授業が目立ち、学生は単位修得に力をそそいでいる。その上、社会に出た後、一から勉強し直すことが当然のように考えられている。少子化し、学生数が減るからには"体感・実感"を伴った教育をしていくべきである。しかしながら唯一の救いは、土木に関係した資格のほとんどが実務経験を有さなければならないことである。このとこはやはり、土木技術者にとって"体感・実感"からの"経験"が必要不可欠であることを裏付けているものだと思う。
(山梨大学 今尾友絵)
■プロジェクトリポート 近接ダムの連携活用による相互機能向上への挑戦
2つのダムを放水トンネルを使ってつなぎ,機能を相互補完することによって,全体でのダムの能力を高めるという考え方,興味深く拝読した.融通をしあうことで,様々なメリットが生まれると思う.地理的な条件や,それぞれのダムの持つ問題を十分吟味する必要があるとは思うが,他地域においても検討すべき方法と感じた.
(京都大学 倉内文孝)
鬼怒川上流ダム群連携事業ということで非常に興味深く読ませていただいた。
鬼怒川3ダムの開発は、1つのダムが竣工すると次のダムが着工するというサイクルで行われており、計画性をもって流域開発を行っていたものと推察される。しかしながら、相互機能向上を図るという考えはいつの頃から計画されていたのであろうか?既存構造物の機能アップを図るという考えは時代の流れにもマッチしていると考えられる。
全国的に見ても稀な地理的条件とのことであるが、同様の考え方が幅広く展開されることを望みたい。
(大成建設(株) 松井俊二)
本文中にも述べられていますが、既存の構造物を維持・修繕しつつ、より長くより効率的に使用することが重要になりつつあり、その好例として興味深く拝読させていただきました。近接しているにもかかわらず性格の異なる2つのダムを相互に補完することにより、比較的少ない投資で大きな効果が期待できる良い事業だと思います。2つのダムの地理的条件は全国的にも稀だそうですが、ダムの機能を維持していくための事業は大変重要で、どの程度離れたダムまで同種の事業が摘要できるのか、コストと費用の分析があればより良かったと思います。
(日本鉄道建設公団 須澤浩之)
近接ダムの連携活用は、治水・利水面でお互いの欠点を補完する意味で非常に有効な方法である。ただし、五十里ダムと川治ダムは同一河川ということで問題はないが、水系の異なる河川ではいかなるものであろうか。生態系への影響が危惧される。河川は水系が異なっていても直線距離では比較的近いものである。現在の土木技術をもってすれば簡単にトンネルも掘れるが、やはり環境問題には慎重さを要する。
新規ダムの建設が困難になった現在、既存ダムの排砂トンネル・魚道や維持流量のための放流設備建設などが注目されている。再びダム問題から目が離せなくなってきたので、引き続きダムの有効活用や改修に関する事例紹介をお願いしたい。
(阿南高専 湯城豊勝)
鬼怒川流域のダムを中心とする今度の姿が描かれるとともに、現在の工事が自然環境に配慮している様子も紹介されている。本文中でも指摘されているように、宇都宮近辺でも、鬼怒川の現在の維持水量は水辺環境を維持するためには十分でないと言われている。一連の工事により、一先ず、平成14年度にはその環境が改善されるというので期待したい。一方、「脱ダム宣言」のような流れもあり、そのような観点から鬼怒川流域を考えるとどうなるのかが気になる点ではある。また、「ダムのリフォームは材料工学上問題ない」とされているのは、コンクリート強度が継時的に増すことから、リフォームは基本的に必要ないという意味か。
(宇都宮大学 都筑 良明)
■技術リポート 地震防災に向けた常時微動の活用例
我が国において地震防災は、常に研究と実用化に向けての努力が継続されるべき課題と考えられ、構造物の設計・計画における耐震解析技術の進歩はめざましいものがある。それに対して、地盤そのものの特性把握については、研究はともかくとして、実務上は昔からさほどの進展が無いようにも思われる。本文中にもある通り、N値という非常に便利でかつ膨大な実績のある指標があることによるのかもしれないが、ここで説明されている「振動のことは振動で知る」手法は場所ごとに小回りの利く対応を行え、より合理的な設計・計画に適用できる可能性があるという意味で興味深い。
(大成建設 小原伸高)
1ヶ月ほど前に社内で、常時微動を地質調査に活用している事例の発表を聞いたばかりで興味深く読ませていただきました。観測が安価で、精度も悪くないということで、今後ますます注目される手法になると思います。今後の課題として本文にも述べられていますが、不整形地盤における適用方法について、今後の報告を期待しています。
(日本鉄道建設公団 須澤浩之)
私は、地盤振動工学に無知ですが、非常に分かりやすく紹介されており常時微動を利用して地域防災や耐震設計に役立てる手法はコスト的に安価であり将来有効な手法になりえると感じました。今後のさらなる研究成果を期待すると共に防災マップ等の充実に利用されることを期待します。
(西武建設梶@山本敏昭)
■土木紀行 意図された姿
この記事を読んで、昔の人と現代人との時間スケールと自然に対する向き合い方の違いを再認識させられた。土木構造物が数十年数百年経過し自然と同化して、その時初めて完成した姿となるといった雄大なスケールの設計は、現在ではなかなか困難なものである。土木構造物の短期的経済性や効果が求められている今日、昔の人の時間スケールと自然との共存の考え方は、今後の土木工学の一つの指針となりうるとの提言は説得力のあるものであった。
(東海大学海洋学部 川上哲太朗)
構造改革の目指すところ・行き着くところそしてその結果業界に生じる影響が的確にかつわかりやすく簡潔に論じられていて、思わず家族にも読ませたくなった。
(千代田化工建設 石川史郎)
水制が好きでした。歴史的所産として、土木工学の分野のみならず、一般に広く評価される工法について目にする度に、今でも少し嬉しくなります。流れをおさえこむのではなく、弱めていくという考え方は、平野部では当然の帰結だったのでしょうが、そこに水と人間との関係が見えるような気がします(ありきたりの言い方ですが)。
そして、木曽三川の分流計画という大きな計画を、水制工法をはじめとする多くの地味な技術が支えていたという当たり前の事実が、何の技術も持たない私に何かを突きつけてくるような思いです。
閑話休題。日本にも古来から水制は存在していた、にもかかわらず今回紹介された「ケレップ水制」が採用されたとのこと。オランダにおける水制に対する視点は日本と相違するものがあったのか、なぜ日本古来の水制ではダメだったのか、と広がる疑問についてはいつか調べてみることにしましょう。
(国土交通省 森橋 真)
現代の技術であれば,コンクリートで固められた堤により強制的に水制出来るであろうが,強制的に自然の姿を変えればどこかにそのひずみが生じる.完成形を自然の力に委ねるという当時の技術は,ある意味現在の技術よりも進んでいるのではないだろうか.河川構造物のみに限らず,これからの土木構造物の技術のあるべき姿の1つであるように感じた.
(大成建設 織田幸伸)
故郷の話という事もあって、最初に読ませてもらった。宝暦治水・明治の三川分離事業など地元では良く知られた話で、小学生で学んだ記憶があり懐かしく感じた。
(千代田化工建設 石川史郎)
著者は,ケレップ水制について,その計画者デ・レイケは完成形を自然に委ねることを初めから意図してその堤防や水制の計画図のみを描いた,と分析している。現在の土木構造物も周囲の環境や景観に配慮して計画されているが,果たして将来にわたる変化をも考慮に入れているだろうか。そして,住民が日常生活で使用していくうちに,本来設定した機能以外の付加的価値が産まれているのだろうか。さらには,それらを予め想定した構造物の設計は可能なのであろうか。時間の経過と共に別の味わいの出てくる構造物が数多く産まれることを期待したい。
(高松高専 長友克寛)
■20世紀ニッポン土木のオリジナリティ考 合併処理浄化槽の技術と制度
2年半前に家を建てたが、浄化槽を設置する必要があるということで何の疑問も持たずに設置した。我が家の浄化槽が記事中の合併処理浄化槽なのかどうかは不明であるが(現在は住んでいないのですぐには確認できない)、身近な問題に感じた。おそらく、環境への影響、処理効率のジレンマが存在する問題なのだと思われるが、今後の人口減少をも考慮した定量的な検討についても記述して貰いたかった。
(大成建設 沢藤尚文)
合併処理浄化槽について多面的にまとめられている。合併処理浄化槽は、1980年代後半、昭和の末期に、当時は例えば「石井式」のような名称で技術開発されていたものもあったが、国レベルで制度的に導入されてきた経緯を改めて拝読すると、特に公共的な性格の強い分野では、技術が認められるようになるまでのラグタイムをどのように短くするかが今後の課題であろうと考えられた。先の「石井式」を初めとするいくつかの合併処理浄化槽の場合、余剰汚泥の引き抜きが不要と言っても良いようなレベルの技術や実施設が開発されていたと記憶している。この点も含めて、今後の海外への技術移転については、継続して行って頂きたい。この際に、流入水がし尿、台所、風呂を含む生活用水全般であるのかどうか、という点についても留意すべきであろう。と同時に、本報の最後に紹介されている事例のように、今後は庁舎排水のような対象にも有効な処理方法であるのかどうかを、引き続き多面的に検討して頂きたいと思う。
(宇都宮大学 都筑 良明)
とかく注目されがちな下水道であるが、合併処理浄化槽も着実に浸透しているとの報告に、認識不足を感じさせられ、興味深い報告であった。制度の変革については、詳細を記述されており理解しやすかった。ただ技術的な面や今後の動向について、もっと突っ込んでほしかった。
(西武建設(株) 三村 卓)
■話の広場
以前の号に説明されていればすみません。「独立行政法人」自体の説明があまりに少なく、「独立行政法人」になることによって何がどうなるのかがあまりわかりませんでした。変更点、資金の流れの違い、事後チェックの説明、弾力的・効果的で透明性の高い行政サービスとはどんなものか、といったところが知りたかった。
(関西電力 西田 勉)
記事で、国土交通省関係の各種研究所の紹介が行われているが、どうもそれ以前にある特集「土木技術の市場価値を高める」にて指向していることと、少し違和感を感じた。
特に造ることを前提にした研究であるせいもあるだろうが、各種の規制やハード指向が逆に研究(技術開発)を必要としてはいないだろうか?
ちょっと視点を変えて、最近話題のリスクマネジメントの発想に立ち、「転嫁(保険、証券化など)」による造らない研究も進めてはどうだろうか。
(関西電力(株) 大江直樹)
■支部のページ 中部支部「なるほど!なっとく!どぼくのはなし」
市民ゼミナールの報告については、簡単な2ページのものだが、興味を引いた。中部地域ということもあり、愛知万博や東海豪雨に関する講演があったとのこと。土木は本来、地域のインフラや景観と密接なものなので、地域毎の身近な話題や問題を題目に据えたこうした企画は、土木を知ってもらう試みとして是非各地で推進していって欲しいと思う。参加者の輪が、一般の多岐にわたる市民に広がっていくことを望む。
(千代田化工建設 弾塚雅則)
■編集委員会から 全国大会 全体討論会速報
恐らく全体のページ数の制約から省略されている部分が多いためであろうが、個々の話題提供者の意見、討論会での発言の流れが分かりにくく感じた。さまざまな話題が出されたであろう討論会の内容を整理する編集委員の方々の苦労も感じられましたが・・・
(大成建設 小原伸高)
9月号を読んで以降、土木学会で「あなたは土木に何を求めますか?」という討論会を楽しみにしていた。学会には参加できなかったため討論会の内容が学会誌に載るのを待っていたが、今回速報という形で掲載頂いたため、9月号同様、「田中角栄が首相になって以降、土木構造物は脆くなっているのではないか」、'お偉い様の博士号の話し'等、興味を持って読ませてもらった。今後は討論会の掲載をノーカットでお願いしたい。ただ、コメントの真意を知りたいが…。
(関西電力 西田 勉)
全国大会に出席できなかったので、このような形で速報を取り上げていただきありがたい。学生編集委員の方々の意見もあわせて再度考えさせられた。今後、学会としての全体討論会に対する総括が求められてくるであろうし、市民に説明する義務もひしひしと感じた。
(西武建設(株) 三村 卓)
■委員会報告 高齢者疑似体験による地下街のバリアフリー点検
非高齢者はやがて確実に高齢者になり,健常者は障害者にいつなるとも限らない.
しかし一方で,非高齢者や健常者は,高齢者や障害者の感覚を今ひとつ掴めないのも事実である.その点で,地下街の平常時のバリア状態を点検するために,高齢者を疑似体験するシ
ニアグッズを着用された点がとても面白かった.点検結果として,14項目にわたる望ましいバリア
フリー対応策が示されている.その中には,照明を明るくする,案内表示の文字を大きくする,エ
レベータの設置を充実させるなど,非高齢者や健常者にとっても望ましいと考えられる方策が多く含
まれている.高齢者や障害者に対する対策が,非高齢者や健常者へのより高度なサービス提供に繋
がることをアピールすれば,高齢者・障害者対策について,非高齢者や健常者の興味・関心・理
解をいっそう高められるのではないだろうか.
(広島大学 山田忠史)
高齢者が多い国なのに日本はその設備が行き届いてないというのは明白である。2,3階段があるだけで高齢者にとっては(特に車椅子の人にとっては)かなり困難な道となってしまう。そのような場所は辺りを見渡せばいたるところに存在する事がわかる。その反面年金など個人個人へのお金の工面はそれなりに行き届いていると感じる。お金を与える時に個人個人に与えるのではなくより高齢者のためになるような生かし方を考え実践することが必要な気がする。
(東京工業大学 川島広志)
クリスタ長堀のように,最近オープンした地下街でさえ様々な問題点が指摘されていることに驚いた.今後高齢者比率が激増することを考えると,早急に対応すべき課題と感じた.ただし,全てのニーズを路側側の設備のみで充足することは困難と思うので,今回の報告であったような問題点を考慮しつつ,ハードウェア整備だけでなく,移動体通信等を活用したソフトウェア的方策も視野に入れて,より高齢者・障害者にとって移動しやすい環境を構築すべきと思った.
(京都大学 倉内文孝)
高齢者擬似体験について興味深く拝見した。とくに高齢者社会が問題になっている日本では、精神的バリヤが大きいのはもちろんのこと、物理的にも地下街に限らず都市・住宅内にも随分バリヤが多い。しかし、一般の人はこのバリヤを感じなく、自分が障害を持って初めて実感することが多い。
本校では、5年生の選択科目として女性教官による「ヒューマンヘルスケアリング」という介護に関するユニークな授業が行なわれている。本誌にも紹介されている「シニアグッズ」を着用したまま、車椅子に乗って最寄の駅までの移動やコンビニでの買い物体験、構内を歩いてバリヤの多さを実感させている。
このような授業・研究においては、介護の専門家と建設系教官が連携して、バリヤフリーのシビックデザインや住環境整備を考えるのも面白いと思う。さらに、他学科(機械・電気系)教官とは、介護用ベッドや車椅子等使いやすい介護用品の開発を考えることも、「モノづくり」教育を目指す高専教育・研究において大切なことと思う。
(阿南高専 湯城豊勝)
高齢化社会を向かえる日本では、高齢者を配慮した公共施設は不可欠となっている。本文では、地下街のバリアフリー点検として、東京(新宿)、大阪(長堀)、福岡(天神)の3箇所について、疑似体験をすることにより改善事項をわかりやすく提示していた。現状でバリアフリー対応がされている事例があれば紹介していただくとよかった。
(東亜建設工業株式会社 大野康年)
バリアフリーが叫ばれるようになってから、バリアフリー点検なるものがいつごろから、どのように行われていたのかその経緯は知らないが、この報告にあるものが初めてならばかなり驚くべき事実だと思う。今現在使われている施設の点検を行い、どこに不備、不具合があるのかを知ることはとても重要であり、それがなければ全く見当違いなバリアフリーになってしまいかねない。それこそ、今回の特集の「土木技術の市場価値」に多いに関係してくるのではないだろうか。また、このような点検は報告に終わるのでなく、実際の現場に対応させ、更にその点検を積み重ねていくべきものだと思う。今後の動きとその報告に期待し、注目していきたい。
(山梨大学 今尾友絵)
■この本 平野弥十郎幕末・維新日記
ゼネコンの奔りである明治時代の請負業をおこした人物の日記として、興味がもてる本の紹介であった。先駆者の一人として尽力されているので、現在の閉塞感をうち破るためにも一助にしたいと思う。個人的な心情も表されていると思うと当時の貴重な史料であり、是非とも読みたい。
(西武建設(株) 三村 卓)
■学会誌全般へのご意見、編集委員会への要望等
建設会社以外の民間企業に、漠然と土木についてするような企画があっても良いような気がします。
(前田建設 岩坂照之)
私にとって、読んでいて不満を感じる記事はいくつかに分類できるようです。
@内容に興味を持てるが、もう少し情報が欲しいと感じられるもの(誌面の都合か)
A論旨は概ね理解できるが詳細な内容の理解が不安なもの(特に専門性の高い記事)
B単なるお知らせのようなもので、その内容をどうアピールしたいのか不明なもの
といったところでしょうか。@、Aは仕方の無い部分もありますが、Bについてはどうでしょうか。誰に知って欲しいのか、どのように利用して欲しいのかが明確にわかるような記事、タイトルとすることで、多少は理解しやすくなるのではないでしょうか。
(国土交通省 森橋 真)
特集テーマなどにご苦労されている編集諸氏には申し訳ないが、毎回土木学会誌で楽しみなのは、
(a)表紙を飾る写真とその説明
(b)土木紀行
この2つの記事(?)である。
(a)の表紙は実に面白い。今月は古市公威を中心とした写真で、毎回、我が国の技術の基礎を築き上げた若きエリート達の姿が見られて感慨深い。
(b)の土木紀行派手ではないが、いつも楽しみにしている。今月はデ・レイケ(デレーケ)の木曽川ケレップ水制群である。いつものことながら、この記事を読むとやたらそこに行きたくなってくる。毎回、キラッと光る、良い記事ばかりである。
(有限会社テラパックス・テクニカ 川九邦雄)
学会誌を編集される上でご苦労が多いと思いますが、巻頭に「会員増強にご協力下さい!!」と記されているので敢えて要望いたします。紙面や予算の都合でやむを得ないのでしょうが、読みやすい学会誌にするためのお願いです。
@ 1ペ−ジには1箇所必ず着色した図か写真を入れ、彩りを添えればより良くなると思います。特にこの11月号は少なかった気がします。また、支部のペ−ジや学会の動きなどは2色刷りをやめ、カラ−ペ−ジにして土木学会をアピ−ルしたら如何でしょうか。
A 土木紀行のペ−ジを増やし、北海道から沖縄まで各地方のトピックスを載せて戴けないでしょうか。いろいろな地方の話題を横並びさせることも面白いと思います。
((株)荒谷建設コンサルタント 大田俊一)
特集はいろいろな立場の方々からの意見が掲載されており話題提供となっていると思うが、企画趣旨だけでなく各意見を受けての総括的な記述を入れることは出来ないでしょうか?
(大成建設 沢藤尚文)
会員の声について、学会誌でのモニター回答の一部掲載は必要なのだろうか?
土木学会のHPにモニター回答が全て掲載されるが、ささいな事でも記事に関していろいろな人の貴重な意見を読む事は勉強になる。一部掲載は紙面上スペースの都合やHPを閲覧できない人の為なのかもしれないが、学会誌上で"詳細についてはhpアドレスを・・・"という記事をよく目にするし、学会誌に興味を抱く人の中でインターネットが利用できない環境の人は少ないと思える。
また、■学会誌全般へのご意見、編集委員会への要望等での質問・意見についてHP上に多くの意見がよせられているが、編集委員からの何らかのコメント・回答を全てにつけて頂く事はできないのだろうか。毎月、学会誌を通読するのは非常に労力がいるが意見・要望をしても編集側から何もアクションがないのであれば、モニターする側も意欲を失うかもしれない。もっと会員の声のコーナーを気楽で自由に意見交換できる場にしてはどぉだろうか。
((株)熊谷組 波田泰子)
以前、学会誌のモニター回答までの期限が短すぎるという意見が載っていましたが、私はむしろ「翌月号にモニターの回答を見たい」と思う輩です。前々月の回答を読んでも、間延びした感じなので。例えば、毎月10日をモニターの締め切り(実質的に1週間の「熟読期間」がある!)としたら、編集と印刷を含めて翌月号に間に合いますか?日々の業務で読み込んでいる書類と書物の量に比べたら、学会誌を1週間で読んで感想を纏めるなんて朝飯前!と言ったら、他のモニターの方々に怒られますかね?
(千代田化工建設 弾塚雅則)
今回の内容は、「土木技術者の市場価値の向上にむけて」や「近接ダムの連携活用による相互機能向上への挑戦」など、今後土木工事を行っていく上で必要だと思われる新たな視点からの考え方がまとめられていて良かったと思います。
今後予算・環境面から既存の施設が充分機能しないために、全く新しい代替のものを造ることは難しくなってくると思います。そのような状況下で既存のものを使用しながら行う改良工事等の例、またその際使用された技術についてまとめ紹介していくことに期待しています。
(日本鉄道建設公団 荒木 聡)
記事に関する意見を書いた後、編集後記を読んだ。「市場価値」について編集者が目標としていることを実践している、ということを意見として書いていた。まんまと編集者の意図にはまってしまったような気がした。編集者の「最後の塩のひと摘み」が料理をうまく仕上げた様である。
(関西電力 西田 勉)
今回の特集の中にもあったが、各種技術基準や規制などが当初の意図と異なり一人歩きして、がんじがらめになって土木界から活力を奪っているという指摘があったが、これについて掘り下げて特集できないのだろうか。
大胆かつ柔軟に…はちょっと掛け声倒れになりつつあるが、構造改革は土木界に多大な痛みもあるだろうが、事業チャンスも大きいと思うがいかがだろうか。
(関西電力(株) 大江直樹)
■編集委員会より読者の皆様へ
10月号に対して寄せられた「会員の声」に対する編集委員会からの回答です。以下に掲載した他に多くの企画提案および表記の改善提案をいただきありがとうございました。これらのご意見については個々に回答はいたしませんが、編集委員会で検討させていただき、今後の土木学会誌に生かして行きたいと考えております。
【ご意見・ご要望など】
1.土木と建築。今回の特集は以前から興味のあった対比ものの一つであった。ただ、大学教授の記事が多く、建設会社関係者の記事が材料等に偏っていたのは残念である。実務者としての意見をもっと多く聞きたかった。実務では、土木と建築はきっちり分かれており、人材の行き来もない会社が多いと思う。そういった人たちへの異業種への関心の動機付けとなればと思い、今後も同様の対比ものを期待する。土木と都市開発。土木と環境。土木と不動産。土木と金融。等。
(関西電力 西田 勉)
【編集委員会からのお答え】
執筆者に関するご指摘は以前にもいただいており、編集委員会でもできるかぎり、いろいろな分野の方に執筆をお願いするようこれからも心懸けていきます。また、様々な特集の内容を提案いただきありがとうございます。
【ご意見・ご要望など】
2.毎回思う事ですが、特集記事の内容がとても多くて正直読み疲れてしまいます。充実させようという編集委員の方々の気迫は伝わってくるのですが・・・現在の2/3から半分程度の紙面でよいのでは?数回シリーズに分ける方法もあるかと思います。そうすることで最終回には読者の声も反映したものにも出来るかも。
(千代田化工建設 石川史郎)
【編集委員会からのお答え】
同様のご質問を以前から多く頂いております。現在、編集委員会で特集の見直しを進めております。
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