土木学会誌
土木学会誌5月号モニター回答


時局を論ずる 土木学会論文集に総合0部門の設立を 社会にもの言える土木技術者と新たな建設産業構造の創造のために
個人的には土木技術者,土木従事者にとってもっとも理解が困難な話題なのではないかと思うが,この記事の示唆には,多くの点で共感を覚える。自らも民営化問題に関係していることや,機会があり経済学を少しばかり学んだことなどで興味を持って読ませて頂いた。土木業界に関する我々と社会の認識との間には大きな隔たりが出来てしまっている。また,どちらの認識も正しいとも思えない。我々は客観性に欠けており,世間は主婦感覚である。共に歩み寄る術も無く,両者の理解を近づける者は存在しないし,このことに警鐘を鳴らす方はわずかである。記事にはシステムに関する件があるが,制度設計を駆使して業界における不正腐敗を無くすとともに,世間の理解しやすい土木業界の仕組みを構築するべきだと考える。倫理規定よりも実効性のあるシステム設計に取り組むべきではないだろうかと思った。いずれにせよ,このような議論を,筆者が必要性を訴える議論の場において行っていくことには大いに賛成する。
(日本道路公団 谷口 寧)

建設産業界は今,無駄な公共事業,不明朗入札,手抜き工事等の問題点を認めつつもなお,いわわれなき不遇な扱いを余儀なくされているという被害者意識に近い感慨を抱いている向きが多いと思う。だから公共事業の是非について徹底議論すべし,しかしその場が用意されていないため「物言わぬ土木技術者」になるというジレンマに繋がる。そこでささやかながら土木学会内に論議する場所を設けて世間に対して物を申していこうという今までない筆者の提案には大変注目致しました。
税金を使い社会への波及影響が大きい公共事業だから建設産業受注者として国民に対して説明責任があるのは論を待たないと思う,しかし自ら需要を喚起できない受注産業と言う特殊性を考えるとその任を産業界のみが負うというのでは国民への説得力に欠けるのでは思います。
また公共事業は政官民の三者で執行されるので三者それぞれの立場での説明責任,情報公開は付き纏うのではないか。筆者が「行政という立場の中,その役割を担う者を見出すのは難しい」と断じられたのには些か疑問を感じましたが,その意味で後半に紹介されていた中央公論での論文は現役の行政側の方とのことで心強く感じました。
インサイダー的な土木学会論文だけで国民(外部)を説得させるには些かインパクトが弱い。「国民」という曖昧模糊とした対象を納得させるためには外部への伝達・広報が重要な作業であり,その意味で国民の代弁者として中立的立場に立つ事を期待してマスメディアとのリンクをもっと密接にして協力してもらう事が必要ではないかと思う。
(復建エンジニヤリング 永田成正)

非常に興味深い提案です。確かにこの記事で論じられている内容は既存の7部門のいずれにも当てはめるには難しいものがあるでしょう。土木全体を論じ,社会へアナウンスする部門として,設立を検討する価値は十分にあると思います。また設立するならば,部門内容を考えると非学会員の論文掲載に大きく力を注ぐべきであると考えます。現行7部門の論文集は非学会員の投稿も受け付けているようですが,それが広く周知されているとは感じられません。第0部門に関しては,非学会員の投稿募集を広く行う必要,さらには非学会員への論文集販売も視野に入れる必要があるのではないでしょうか。
(本州四国連絡橋公団 薄井稔弘)

筆者の主張には同感するところが多いのですが,自分から発言となると尻込みしてしまう土木技術者が大半と思います(私も)。土木学会誌に総合0部門を設けるというご主張ですが,本来は土木学会誌がこの役目を果たすべきメディアなのではないでしょうか。かなり前より学会誌は親しみやすく読まれやすいものという方向性で来ましたが,昨今の土木内外の社会状況に迎合することなく,格調高い土木学会誌を目指したいものです。
(鉄道・運輸機構 玉井真一)

土木技術者というのは,技術者の中で最も社会と密接な関わりを持っており,社会に対して問題解決策を提示する社会的責務があるということについて,私もまったく同感である。そのためにも学理と実理の双方に通じた技術者を創出することが必要で,それを進める総合0部門の設立は賛成である。私も社会に対してきちんとした考えを発信できる真の技術者になることを普段から心掛けたいと思う。
(電源開発 栗原 哲)

筆者の分類した,日本の土木の世界に集中している人材の分類とその実態について同感である。「0部門」の設立は,すでにそれぞれの現場にいる「大人への対策であるが,合わせて教育の現場でも,土木技術者が「大きく社会に影響する」仕事をしていること,そのために保たなければならない矜持,目を向けなければ行けない社会,持たなければならないコミュニケーション能力があることなどを教えることで,若い世代への働き掛けを行う必要がある。
土木学会の役割は,そのような教育の必要性を検討し啓蒙することにもあるのではないだろうか。
(シンクタンク嘱託 河合菊子)

特集 新規ビジネス分野の開拓
私は現在学部の4年生で,進路は大学院への進学を考えています。景気の低迷が続くなかで,建設業を取り巻く社会・経済状況は依然として厳しく,私の友人は多くの者が他の業種へ就職を希望し,私もいずれ社会の一員となるものとして土木業界の将来に不安を感じるばかりでした。しかし,今回の記事で様々な方がビジネス分野の開拓に努力されていることを知り,私の中の不安はいくらか減少しました。私が勉強不足なだけですが,私は今まで土木業界は公共事業ありきだと思っており,「ビジネス」との繋がりについては考えたことがありませんでした。しかしよく考えてみると,様々な「モノ」を取り扱う土木にはたくさんのビジネスチャンスが潜んでいるのかもしれない。建設廃材は綺麗なレンガへ再生し,ダムに溜まる流木は商品に変身し,自然を再生することで「空飛ぶ宝石"カワセミ"」がやってくる。土木業界は豊富な資源を抱えているのにも関わらず,その存在に気づいていなかったり,生かしきれていなかったりしているのではないのでしょうか。
私はさらに考えた,これら豊富な資源を生かすためには「ニーズ」を的確に捉える必要があり,そのためには社会の動向を把握するセンスが必要なのではないかと。このセンスはビジネスだけではなく,民意を反映した公共政策の策定にもつながると思います。
私はこのセンスを幾らかでも獲得するように,社会の動向を探りながら学生生活を過ごしたいと思う。
(東北工業大学 引地博之)

建設業界の過剰人員吸収のために新規ビジネスが必要であることは万人の認めるところであり,そのことが業界の閉塞感の打開につながることを期待したいのですが,土木"学会"誌の特集として,"業界"的な課題を取上げる事がふさわしいのかどうか,疑問を感じながら読みました。個々の記事の内容は土木の範囲が広がりつつあることを示しており,参考になりましたが。
(鉄道・運輸機構 玉井真一)

このような特集を組まれたのは,時代のせいでもあると思いますが,土木分野外も含めた新天地の開拓という内容に少々違和感を覚えました。
しかし,Civil Engineeringの「Civil」の意味合いを考えてみると,単に土木という枠にとらわれているわけではなく,われわれが安心して暮らせるようになるための広い分野を対象としていると考えます。 介護や福祉,観光・人材ビジネスといった土木とはほど遠い分野のようでも土木分野とリンクしていて,そうした分野にも活躍の場があることは,不安だらけの将来にもいろいろな可能性があると感じました。
(東亜建設工業 川島 仁)

新規ビジネスの開拓については,私の部署でも求められている。そこではいつも,新しい技術があるだけではだめで,顧客のニーズを知ることが大事だといわれるが,特集で登場した成功事例を見ると,マーケット調査がしっかりなされている点が共通してあると感じた。ユーザーの観点に立った技術提案をしていくことが,新規ビジネスを成功させる秘訣であることを改めて認識させられた特集であった。
(電源開発 栗原 哲)

土木学会誌ではなく,一般のビジネス誌のような発想ではないか。特に面白く読んだのは,「ガーデニング事業関連」で,負の資源の有用化という取り組みだった。自然の問屋という会社名も面白い。この特集には,土木関連業種だけでなくベンチャーなど一般ビジネスのヒントになるものが詰まっているという感じがした。こうした特集を組む新聞があってもいいのではないか,あるいは,この特集を見て報道番組の特集がつくれる,と感じたのは私一人ではなかっただろう。
(山梨日日新聞 中村高志)

1-3 ガーデニング事業関連 負の資源の有用化
新規事業の立ち上げの話として興味深く読ませて頂いた。捨てればゴミとなるものを資源・製品として販売する発想の転換,お客様のニーズに関する主観的な想定と実際の食い違い,製造から販売までの流通やブランド戦略まで多岐・広範にわたる工夫・努力。どれも私にはなじみが無く,新鮮に感じた。土木技術者が直接顧客と接し,代金を頂くことはほとんど無く,このことが顧客満足度の低下とともに土木バッシングに繋がっているのではないかと個人的に感じているところであり,多少なりとも顧客志向,価格に直接関わる事業コスト削減といった民間企業は,当然のことに公共サービスの関係者も注意を向けるべきだと改めて認識した。事例がシンプルであり理解しやすかったことや様々な示唆に富む点など,編集者のセンスも素晴らしい。
(日本道路公団 谷口 寧)

1-6 IT関連事業2 建設仮設資材管理分野へのICタグの活用
今回の記事は建設仮設資材を扱うメーカーの利便性について記述されていたが,これは現場管理の上でも大変役立つと思われる。現場での仮設資材管理は基本かもしれないが,結構面倒なものである。また,必ずといっていいほど,何故か損失する。このICタグとリーダが現場にあれば,受け入れと同時に,個数管理・品質管理・リース計画が出来,大変有効なツールになると思われる。
(清水建設 太田博啓)

プロジェクトリポート 伝統工法による木造天守の復元
天守を復元するプロジェクトがコンパクトにまとめられている。幅広い見識や様々な手続き・作業,いにしえの知恵や工夫への挑戦といった,非常にバラエティに富んだ内容を含む記事であり,歴史に始まる紹介は,個人的に興味をそそられたし,記事に登場する工法や道具などの名称も新鮮であった。きっとこのプロジェクトに関するレポートは別に存在し,もっとボリュームのあることと思うが,今回読んだだけでも十分に雰囲気は伝わってきた。十分にNHKプロジェクトXのプログラムとなるだろう。ただ,細かな説明が随所に寸止めで紹介されている点や写真等の説明資料がやや不足している点で,もう少し知りたいと思う気持ちが消化不良で残されてしまうのが残念だ。勿論,自分で調べれば済むことであるが・・・
(日本道路公団 谷口 寧)

日本の城郭の美しさ・壮大さは,世界に誇ることができる日本の文化である。私はそんなお城が大好きで,旅行先にお城がある場合には必ず足を運ぶようにしている。天守閣を見に行っていつも思うことは,「これが築城当時からの建物だったら良かったのに」ということである。2年前,築城当時からの建物ではないが,往時の技術,材料で復元されたお城を見に行ったことがある。コンクリートやタイルが無く,その素晴らしさに感動した。記事にある大洲城も木材を用いた伝統工法によって復元が進められているという。大洲城の復元工事が終わり一般公開されれば,きっと多くの人に感動を与えるだろうし,地域の人々の誇りにもなるだろう。このような伝統工法の継承が危ぶまれている現在,大洲城には伝統工法の素晴らしさ,日本文化の素晴らしさを発信する構造物として輝き続けて欲しい。
(東亜建設工業 菅本清文)

城郭には興味があるため,深く読ませて頂いた。天守閣は,当時の最高の技術を持って造られた構造物であり,その技等を未来に繋ぐことは重要なことと考えるが,土木というより建築の分野である。学会誌に掲載する内容だったのだろうか。

今回の記事は,土木と少し離れたものであるが,日本古来よりある伝統工法を守る意味からも,このような記事を載せるのもよいと思う。昔の土木構造物にしても,何十年,何百年経っても,実用に当たって問題ないものもあり,土木の古い技術についても見直す機会があってもいいのではないだろうか。
(清水建設 児玉浩一)

山梨県でも甲府城跡に(とはいっても,甲府城と武田信玄は全く関係なく,甲府城は家康が築城に着手して秀吉に受け継がれ,その後再び家康のものになった経過があってその歴史物語だけでも面白いのだが)この四月,稲荷櫓が復元され,さらに県民や行政から天守閣復元の声が上がり始めた。
そうした身近な例を考えながら,大洲城天守閣復元の道筋と伝統工法の復活を本当に面白く読んだ。これも将来,山梨県にとっては(天守閣復元が日程に上がる時に)大いに参考になろう,という意識で読んだ。最後に工事概要が記されていたが,出来ればどの程度の予算で完成したかを知りたかった。
在来のコンクリートによる工法に対して,県内の雑木など木材を活用した復元に賛意を覚えた。それだけに伝統工法と在来工法との工費の比較などもレポートしていただいたら,もっと内容が深いものになったのではないか。
(山梨日日新聞 中村高志)

土木学会誌としては興味をひくタイトルで,土木技術という面から見て何が書かれているのかと思ったが,内容は建築であった。しかし,いずれにしても土木の中で閉ざしてしまうのではなく,この記事のように違った分野との交流がこれからは大事になると思う。
(崇城大学 上野賢仁)

海外リポート 「投稿」2010年冬季オリンピックとインフラの整備
道路の拡幅が困難な区間について,鉄道敷きを2車線の併用軌道に改良するというのは柔軟な発想であり,近年のオリンピックのコストダウン要求にかなったものだと思います。しかし,鉄道と道路の通行時間帯を分けないと,両者とも低速で走行する必要があり,よほど列車回数が少ない鉄道ではないかと推測しました。日本ならそのような鉄道は廃止になってしまうところですが。
(鉄道・運輸機構 玉井真一)

本稿ではカナダのオリンピック開催を目的としたインフラ事業について紹介されているが,我が日本においても長野オリンピックやワールドカップ開催時には多くのインフラ事業が行われた。前述したそれぞれは,考慮の多少はあるが,利便性・収益性・将来性・環境への影響を考慮した事業である。本稿のように事業の有益性について紹介する記事は良く見ることがあり,それぞれ興味深い。一方で,それらの事業のその後についての記事は週刊誌等では見かけるが専門誌ではあまり見かけない。専門的な目で事業の効果を検証し,効果がない場合はその原因を追及したものも将来の事業に役立つのではないのではないだろうか?
(三井住友建設 金重順一)

持続可能性を重視したオリンピックの実現についての取り組み,特に交通インフラとして路面電車型道路の計画は大変興味深かった。
(日本デジタル道路地図協会 安居邦夫)

忙中ペンあり 第五回 ウィリアム・ホィーラー 〜明治期お雇い米国人青年技師に学ぶこと〜
「忙中ペンあり」の筆者はまさに多忙な中,我々読者のために原稿を提供してくれているのだと思う。しかし,私個人の意見としては,もっと多くの方にこうした随筆を書いていただきたい。たくさんの意見を読みたいと思う。
(横浜国立大学 栗崎敬子)

William Wheelerから学ぶことは多々あると思う。本記事に掲載されていたWheelerの言葉として「古い制度からの脱却」や「日本の教育は暗記ばかりで思索力を養うように出来ていない」など現在の日本が抱える構造的な問題を当時から指摘しているところには,現代に生きる私たちは考えることが多いのではないかと思う(もっとも,当時からWheelerが指摘したことが未だに続いているということが問題なのだが・・・)。旧態依然の「お役所仕事」や「学閥」が未だに罷り通る社会に,廣井が切望したと思われる「民主的社会」の到来(土木学会誌2004年3月号より)は難しいなと感じさせられる記事だった。
(東北工業大学 堀原 順)

札幌に住んでいると,北海道大学の前身である札幌農学校の初期に欧米から訪れた教師たちの足跡について目にすることが多い。彼らには技術者であっても,哲学や文学など,複数の専門を持っていたことなどの共通点がある。
理論の研究だけでなく,強く社会に働き掛ける事業を行っている会員を多く抱える土木学会として,「理系」や「技術者」という括りに拘泥していては,いつまでたっても一般社会から受け入れられないのではないか。ダブル・メジャー(同時に二つの分野を専攻すること。米国出身の私の友人は,米国で生物学と英文学を同時に専攻し,日本に来てからは日本の現代文学について研究した)や,卒業生の再入学など,大学を中心とした高等教育機関での教育について,土木学会として提言する時代が来ているのではないだろうか。土木は社会に大きな影響を与えてしまう仕事をしているのだから。
(シンクタンク嘱託 河合菊子)

ミニ特集 発想の転換 現場から生まれた革新技術
「良い技術であれば,需要は後からついてくる。きっと,現場も要求してくる」「ビオ・セル・ショット工法」についての記事を見る限り,この楽観的な意見は正しいと思われる。一方,「良いものを開発しても土木の世界では,すぐに使ってもらえない」と,いう意見もある。「鋼管とH鋼とのハーモニー」の記事を見る限り,この意見も正しいように思われる。両記事の新技術は,どちらも良い技術であると思う。しかし,一方は着実に施工実績を伸ばしており,もう一方は未だ施工実績ゼロという明暗分かれた状況となっている。良い新技術という「シーズ」は「ニーズ」という畑に蒔かれてこそのもの。「ニーズ」という畑を開拓しようとする姿勢なしでは,折角の技術も埋もれていくのみ。技術大国ニッポンを支えていくには,より積極的に良い技術を貪欲に売り込んでいくことも大切なのではなかろうか。
(鉄道建設・運輸施設整備支援機構 清原靖文)

映画館で封切りの洋画を鑑賞中の男性,仕事上のグッドアイデアが泉のごとく湧いてきた。マジックペンは持ち合わせるが書き取る紙が無い,アイデアの泉はどんどん流れていく,もたもたしていると千載一遇の仕事ネタをすべてフイにする。ふと前の客席を見やると年配の紳士が座っている,ためらわずにマジックペンを持つ手を伸ばし禿頭の上にメモをはじめた・・・。某コンピューター会社のテレビCMである。
本記事の,革新技術の発案の瞬間もこのような状況だったのだろうか。脳のサーキットが何かの拍子にショートカットしてランプが灯り妙案を思いついた体験をされた方は少なからずいらっしゃることと思うし,人間が機械より優秀だと再認識できる機会でもある。しかし折角思いついたお宝アイデアも個人へのインセンティブの低さから活かしきれていないのではと疑問を持つ。土木関連も既に国際競争化するなかで,諸外国に勝ち抜くにはマンパワーの発揮と抜擢は不可欠であり,個人の能力に付与するシステムを明確に提示しなければならないと思う。今後の進展に期待するところである。

こちらのミニ特集を読んで,新規ビジネスのきっかけは現場に隠されているような気がした。今後も,新アイデアによる技術の紹介を続けて頂きたいものです。
(本州四国連絡橋公団 池末泰輔)

各種の新技術が紹介されていた。どの技術も最初はちょっとした思いつきや発想から構想が生まれ,新しい物(技術)へと結び付けらていた。アイデアを持ち,それを実現しようとする弛まぬ努力で誕生したこれらの新技術は,現在の土木をとりまく閉塞感の強い状況を,少しでも打ち破ってくれそうな気がする。
(鉄道・運輸機構 神田 大)

商品の紹介のようであるのでもう少し技術開発を進めるうえで参考となる事項を説明したほうがよいと思う。
(日本デジタル道路地図協会 安居邦夫)

「水で膨らむスーパー土のう」には,思わず唸ってしまいました。
若い頃現場で台風対策のために,土のうに土砂を封入した経験がありますが,なかなか重労働だったことを思い出しました。
また,高吸水性樹脂が結構歴史が古いことも驚きました。
少し頭を柔軟にして発想の転換に取り組みたいと思います。
(東亜建設工業 川島 仁)

今回のミニ特集は特に学ぶ点が多かった。まず『苗吹付工による花咲く斜面』では,苗床ごと吹付けるという大胆な発想と,実用化にこぎつけた点に驚愕した。本工法は,"異業種との連携によりアイデアが生まれる"という言葉をまさに実践させた例であり,現在様々な専門家と共同研究を進めている自分にとっては,是非学びたい姿勢だと感じた。次に,『水で膨らむスーパー土のう』では,同じ技術を使い,他の分野へ目を向ける姿勢を学んだ。本稿にも記載されていたが,水害対策として活躍されることを期待している。
(土木研究所 中田典秀)

土木の世界では,新しい技術などはすぐに採用されない事が多い。民間相手なら採用の可能性は高いが,公の仕事ではなかなか難しいだろう。今回のような形で紹介されれば,新しい技術を広く伝えていくことができるし,注目度も高くなると思う。ただ,学会誌の本文のところは,企業の宣伝の場ではないので,あまり載せすぎても問題があると思う。どこまで載せるか,この辺の線引きは難しいとは思うが,技術の活性化のためにも,第2弾に期待したい。
(清水建設 児玉浩一)

水で膨らむスーパー土のう ラピッドワップ
10%塩化カルシウム水溶液をかけるだけで瞬時に水をはき出す機能については驚きをもって拝読しました。項目タイトルにある通り,まさに災害対策の切り札ですね。ただ,最後の方でふれられているMultiple-Useの土のうについては,海水をかけた場合にどのようになるのか,溶液の分離にどのような方法がとられるのかの2点だけでも記述があれば良かったように思います。
(本州四国連絡橋公団 薄井稔弘)

高吸水性樹脂がこんなに吸水性があることに単純に驚きを覚えました。今回紹介されているラピッドワップは吸水性に関して改善したばかりでなく,使用後のことも考えて作られている。今回の記事を読む限りでは使い捨てのようであるが,これが転用できれば非常に有効なツールになると思われる。
(清水建設 太田博啓)

鋼管とH鋼とのハーモニー 連結鋼管矢板
かつて鋼管矢板井筒基礎(円形配置)を設計した経験がある。この記事を読んで円形基礎の継手管部分はここで問題になっている直線配置の場合より微妙な角度で組み合うので杭打ち現場では相当の苦労があったのかと今更のように思う。
一般論として設計と施工(現場)のハーモニーを図ることも設計上の責務であると昔から言われて来た。しかし実際には設計上の要求事項が優先し現場情報も少なく設計へのフィードバックはあまり記憶がない。 現場の苦労から生まれたアイディアーも残念ながら未だ設計実績がないとの事。コスト比較の精査,設計方法の確立などハードルは高いと思いますが新発想の(b)タイプのH鋼連結部分が構造部材としてどの程度の評価が可能なのか,円形基礎のような曲線中で角度のついた場合でも施工可能なのかについて記述があると情報価値が上がり今後の展望に弾みがつくのではないでしょうか。
(復建エンジニヤリング 永田成正)

土木紀行 山梨県御勅川砂防堰堤群
これは「山梨県御勅使川砂防堰堤群」を歩いたものだが,ここに出てきた我が国で初めて砂防事業でのコンクリート使用の事実と,それを取り入れた蒲孚(かば・まこと)のことである。
山梨県に住む私にとって,ここに紹介されている堰堤は,過去に歩いたことのあるものばかりだが,先人の一般に知られざる努力の跡を知って驚いた次第であった。御勅使川というと,古代から暴れ川といわれ,武田信玄が釜無川とこの御勅使川とをぶつけて勢いを削いだ「信玄堤」は有名だが,明治,大正という時代に改修された川については不明ながら知らなかった。
思わないところで,郷土の歴史に触れることが出来たと同時に,もう少し,郷土に関わる先人の努力を真摯に見つめ直さなければ,と肝に銘じた次第である。
(山梨日日新聞 中村高志)

真夜中の技術者たち 第1回 夜間鉄道工事
電車が無事故で走ることが当たり前だと思っている。その裏で,安全を提供するために汗を流してくれる人たちがいることを忘れがちである。人々が寝静まった頃,真夜中の技術者が仕事を始める。仕事は分刻みの計画で行われるそうだ。数百キロの速度で走る新幹線のレールにわずかなずれが生じたら大災害になる。無事故でいられるのは,裏で働く技術者がいるおかげである。当たり前を創る職人の存在はもっと取り上げられるべきであると思う。
(横浜国立大学 栗崎敬子)

工事に携わる方たちの緊張感や責任感が伝わってくるような記事でした。作業終了時刻を遅らせることはできない,しかも工事の完成度も確保しなければならない,そういった緊張感が伝わってきました。このメンテナンスの仕事は,新幹線を利用する人たちが当たり前のように新幹線を利用することができるために,目立たないけれども必ず必要な仕事です。こういった縁の下の力持ち的な役割は,土木の仕事すべてに通じることだと思います。5回シリーズだということで,次号以降も楽しみです。
(横河ブリッジ 水越秀和)

この記事では新幹線の安全な運行のために「縁の下の力持ち」となって働く人の姿がよく伝わってきて良かった。私は改めて,日常の快適な生活が様々な人たちの努力の集積であることを忘れてはならないと思いました。また,後藤さんの工程管理や仕事に対する意識は,学生である私の気を引き締めました。
新しい土木を模索しなければと思う一方で,これからも確実に必要とされる従来型の土木の仕事がある。第1回の夜間鉄道工事もその一つであろう。「まさに,縁の下から支えているという仕事だと思う。」こうした土木技術が社会基盤を支えているということを再確認した。
(崇城大学 上野賢仁)

話の広場 なぜ土木技術者ブルネルは偉大な英国人第2位になったのか? ブルネルの業績と現在における英国での土木技術者の評価等
シールドの生みの親であるM.I.ブルネルが,偉大な英国人として評価されていることは,驚きとともに喜ばしいことだと思う。文中で述べられていたように,組織票なるものが少なからず影響したらしいとはいえ,やはりその功績は称えられるべきものだ。
現在のイギリスと日本とでは,土木技術者をとりまく周辺の環境は似たり寄ったりだそうだが,イギリスではそれなりに存在が認められているのと比べると,やはり,現在の日本における土木悪玉論的な風潮を打破するには,土木がこの世に与える貢献度と意義を知らしめる何かしらの努力が必要だと思う。
(鉄道・運輸機構 神田 大)

「日本人が選ぶ偉大な日本人」の投票を行った場合,どのような結果がでるのでしょうか。名前が一般に知られている日本人土木技術者があまりいないこともあり,日本の土木技術者が,英国におけるブルネルのようにベスト10に入る可能性が低そうであることは残念なことです。その理由として,記事にも書かれている通り,日本では建設産業全般に対する不信感が根付いていることが挙げらますが,それに加えて英国を始めとする欧米と,日本における「組織」と「個人」の捉え方の差にあるのではないかと思います。
今まであまり耳にすることがなかったことですが,最近,所属する「組織」から「個人」に対して莫大な発明報酬が支払われた云々の報道をよく耳にするようになりました。これは裏を返すと日本では「個人」よりも「組織」が前面に出る傾向があるということを端的に示しており,このことが技術者「個人」の名前が一般に知られていない理由となっているのではないかと思います。
(鹿島建設 嶋村知久)

英国と日本との相違は,個人の名前で仕事をしている点が最大の違いであるとのことであるが,現在の日本の雇用動向からを考えると早晩わが国も同様な傾向になるとおもわれるが,土木のような規模の大きいプロジェクトは様々な専門家によるチームの総合力が必要となると思われるので望ましい組織と個人の関係のあり方について考える必要がある。
(日本デジタル道路地図協会 安居邦夫)

話の広場 「投稿」新しいセメント工作
大切なことは興味をもつことだと思う。どんなに楽しいことでも,強制されてはやる気がなくなる。身近にあるのに関心がないセメントやコンクリートも工夫次第で楽しい工作材料になり,多くの人たちの趣味になる。何気ない遊びから生まれた疑問が,大きな発明に結びつくかもしれない。体験して,その面白さを学ぶことで,学問への入り口も入りやすくなると思う。
(横浜国立大学 栗崎敬子)

地域の住民向けに,学校でこの様なイベントが行われている事は非常に素晴らしいと思いました。学校の研究で使用する材料だけでなく身近な材料を加える事で,工作の課程も楽しくなり,また出来上がった作品もより良いものになっています。さらにイベント参加者だけではなく,準備する学生達にも,その過程を通じてセメント等の性質を学習する事が出来るように工夫されている点など,主催者のアイデアに驚かされました。昨今,子供達の理系離れという話題を良く目にしますが,このような楽しいイベントを通じて,子供たちが少しでも科学技術に興味を持ち,将来を支えるエンジニアへと成長してくれる事を願っています。
(横河ブリッジ 水越秀和)

子供達の科学に対する関心を持たせることは,実際の教育の場でも注目されているトピックスであり,国・地方自治体やボランティアなどにより,様々な取り組みが行なわれている。国も「サイエンスレンジャー」などの取り組みを行っている。子供達を引き付けるツールについては,色々なものが公表されているが,この記事に紹介されているようなものについても,一般に公開してはどうか。
また,何をどう見せるかだけでなく,一度切りでなく,子供達に継続して科学への関心を持たせることへの方法は問題になっている。紹介された取り組みが,ツールの紹介だけでなく,どのような子供達を対象として,どのような主体が関わり,どのように開催したか。また,どのような問題点が残ったかについての解説が欲しい。
(シンクタンク嘱託 河合菊子)

子供のころ,セメントでブックエンドをつくったが,重すぎて使えなかった。この記事のようなお手本があれば上手くできたかも知れない。土木構造物に見られるセメント,コンクリートの完成品の質は,その規模の大きさにもかかわらず概して良いように思う。紹介された作品を見ると,そんなことを思う。いずれにしても,子供たちがこうした材料に接することで,土木に対する親しみも増すものと思う。
(崇城大学 上野賢仁)

学会誌全般へのご意見,編集委員会への要望等
具体的にご説明出来る表現が思い当たらなくて申し訳ありませんが,今回の学会誌は従来のものと較べ,読難かったです。

いつも本誌を読んで感じるのは,硬い雑誌ではないかと思いながら開いても,柔軟な思考や内容に満ちていて,読後感が良いことである。
自然と人とががっぷり四つに組む臨場感があるかと思えば,常に新しい取り組みを考えている現場をリポートして興味深い。これは「ヨイショ」では決してなく,普段は敬遠しがちな「土木学会」への,ある意味の偏見を打ち砕かれたことへのお礼の意味で書いた。
(山梨日日新聞 中村高志)

今月の学会誌は,内容(特集)のせいか,生き生きしているように感じた。記事が従来のように内向きではないためだと思う。考えてみれば,読者はほとんど土木が専門なのだから,時には大胆に外の世界を記事にするのは大事なことだと感じた。
(崇城大学 上野賢仁)

4月号に対して寄せられた「会員の声」に対する編集委員会からの回答

学会誌全般へのご意見、編集委員会への要望等
企業倫理に絡む問題は、決して放っておくことはできない問題です。特に公共性の高い事業に関わる機会の多い土木技術者にとっては、非常に重要な問題であると思います。そこでお願いなのですが、企業倫理について考えるコーナーを連載化して頂けませんか。もし、連載が無理ならば特集を組んでは頂けませんか。企業倫理を考えることは、土木技術者にとどまらず、多くの人々にとって有益な内容であると思います。どうか、ご一考願います。
(鉄道建設・運輸施設整備支援機構 清原靖文)
(編集委員会からの回答)
土木技術者の倫理問題につきましては、8月号から4回に渡ってミニ特集を組む予定です。ご期待下さい。
(編集委員会)

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