土木学会誌
土木学会誌6月号モニター回答


時局を論ずる 暗黙知を表出しよう
現場から離れた判断は,問題が起こりやすいとは,良く言われることである。が,なかなか,そのことが実行されていないのが現実である。今回,見えない,つまり,マニュアルにはのっていない,情報が大事であり,この情報・知識を「暗黙知」と呼んでいる。非常に面白い表現と思うと同時に,的確な言葉であると納得させられた。我々は,次世代の為に,様々な「知」をきちんと継承し残してゆかねばならない。
(九州大学 宮脇健太郎)

実際の現場から技術をむしりとることが,真の技術継承につながり,ひいては現場における失敗事故の防止につながるという論は,当たり前のようだが核心をつくものと思われた。建設や生産の現場では,この失敗を防ぐということが重要な目標としてあげられるが,技術力の向上に向けてこのようなアプローチで臨むことは,オフィスワークにおいても有用と考える。現場,現物といったものを重視することで,創造的な仕事につながるだろう。畑村氏が失敗学につづいて創造学を提唱されたことは,なるほどと思われた。
(電源開発 栗原 哲)

昨今の公共工事へのバッシングに対し,こういった事態に陥ったのは情報を積極的に公開し,理解を得る努力をしてこなかったからだとの指摘があります。この記事で指摘されている暗黙知の明示もこの範疇に入るのでしょうか。
それにしても暗黙知を表出し明示するのは難しいことであると思います。この記事で例示されているのは教科書を開けば図解されているような内容ですが,暗黙知と言われるものの大部分はなかなか言葉や図に示すことが難しいものや,当該分野の技術者ですらほとんど意識せずに使っているものが大半であるような気がするからです。
(本州四国連絡橋公団 薄井稔弘)

最近,学生と雑談していたときに教師の教え方が話題になった。その中で,手取り足取り教える教師が素晴らしい教師だという意見がでた。私自身は,どちらかと言えば「でき上がったものを伝えようとしても伝わらない。自らむしり取ったものだけが身につく・・・人は自分の仕事をしながら自分の意思で知識や経験を獲得し,進歩,成長する」と思うのだが,自ら努力,苦労して学ぶというのは今時のスタイルにはあまり合わないのか。近頃は授業評価が当たり前で,それが教員の評価にもつながる。苦心するところである。大きなこと小さなことに関わらず「暗黙知」を自らつかむ経験は貴重なものになると思うが,教育においても,第一に「暗黙知を表出」する必要があるということか。
(崇城大学 上野賢仁)

特集 動き始める首都圏空港整備
羽田及び成田空港は確かに,そのキャパシティーを超えて運行している事実がある。その昔,日本の国際空港は「ソウル」にあり,といわれた時代もあったが,現在の経済状況等鑑みると,そういった事実は今は無いが,空路への需要が伸びていることは確かである。しかし,地方に目を向けた場合,例えば「静岡空港」は建設の是非を裁判で争うといった事態も起きている。
国際地域を時間軸に取った場合に最も早い交通手段は「空輸」である。また,その拠点となる空港整備といったものに対するアクセス手段が重要になってくるものと考え,非常に面白く感じた。
(復建エンジニヤリング 青木喜一郎)

海外との窓口になる成田空港の有り方について,以前から様々な議論が出されてきている。今回この特集では,国際空港として海外との比較,特にアジア地区のハブ空港についての記事は,日本との違いなどがわかり興味深いものであった。実用的な面だけでなく,快適性について日本の空港では,まだ不十分な点が述べられていた。また特集のなかで,空港拡張に関して環境への影響についての記事もあり,現状,人工島を作った際の水域への影響は簡単に把握できないことが述べられている。環境と発展の両者のバランスが大変なのであろう。このところ,羽田空港拡張が話題となっているが,海外との交通を考えた最適な構成となるように進んで欲しいと思う。
(九州大学 宮脇健太郎)

この特集で興味深かったのは,エアラインと利用者の記事が掲載されていたことである。運輸政策の影響が第一に考えられる空港整備事業において,空港の顧客たるエアラインと利用者の意見が聞かれることを新鮮に感じた。この顧客志向のコンセプトが土木学会誌のみにとどまらず,民営化された空港会社でも大いに活かされることを期待したい。今回の記事のように,土木が社会に提供するサービスについての顧客の意見や要望に,我々はもっと真摯に耳を傾けるべきだと思うのだが,我々は顧客を顧みないばかりか,発注者志向,政策決定者志向になってしまっているのではないか。記事の中でもとくに谷川氏の記事は貴重な示唆に富んでおり,私のように世界の空港や都市,交通状況を知らない者には到底考えつくことのないものばかりであり,空港会社にとってすぐさま取り組むべき改善提案でもある。今後とも土木学会誌には,このような特集記事のアプローチを他の分野でも行って頂きたい。
(日本道路公団 谷口 寧)

今回の特集は,土木技術者の観点からではなく,ユーザーの観点から拝読させて頂いた。成田空港が他国の国際空港と比較して特に不便であると感じることは,首都圏へのアクセスの不便さである。以前,赴任していたタイでは空港からバンコク中心街までタクシーで20分程度,料金にして300円から400円程度であった。物価の違いはあるが,成田の鉄道で1時間以上,タクシーを使うと2万円程度というのは異常な金額と感じる。特に日本を訪れる外国人にとって乗り継ぎをしなければならない鉄道より,目的地まで直接乗り入れることの可能なタクシーは便利なはずである。羽田空港の国際化が進めば多少なりともこれが改善されるのではないだろうか?できれば,鉄道のアクセスを改善すればより良いと思う。空港拡張事業やアクセス問題については,多くの諸問題を有していると思われるが,日本の国際化,経済の発展のために是非とも実現して頂きたいと思う。
(三井住友建設 金重順一)

6月18日に入札実施方針が発表となり,いよいよ本格的に羽田再拡張事業が動き出しました。私は,この事業は,首都圏空港整備の第一歩だと考えます。この首都圏空港整備は,国家のグランドデザインの柱として長期的な視野に立って,計画的に効率よく推進めるべきもので,特に国民のメリットとして「利用者の利便性向上」を第一優先であるべきと考えます。地域交流の促進や地域経済の活性化,そして国際競争力の強化は,自ずとついてくるのではないでしょうか。従いまして,この羽田再拡張事業の第一歩をきっかけに,諸課題を解決していくとともに今後のあり方として首都圏第3空港の計画を強力に進めていく必要があると考えます。
(東亜建設工業 川島 仁)

大変時機を得た特集であったと思います。会員各位も出張で羽田・成田を利用する機会が多いと思いますので,興味を持たれたのではないかと思います。また,政策・建設だけでなく利用者の立場での投稿(1-3)があったのが良かったと思います。
個人的には鉄道建設を通じで空港アクセスの整備に参画する立場として,羽田・成田間の連絡に関する政策的抜本策が必要と思っております。
(鉄道・運輸機構 玉井真一)

首都圏の空港整備は,容量不足を短期的に解消する計画ばかりで,長期的なビジョンがほとんど見えてこない。地方の空港の整備ばかりが進み,国全体としての航空政策が見えてこないのである。
首都圏の離発着増が心もとない状態で,地方に空港ばかり増やしていても,飛ばせる相手がいなければ,結局新しい空港が無用の長物になってしまう。このような状態が続くようであれば,地方空港は土建業のために工事だけを作っているという話に置き換えられてしまうおそれがある。全体のバランスを考えた上での航空政策を願いたいものである。
(清水建設 児玉浩一)

便利で速い航空機をほとんどためらうことなく利用しているにもかかわらず,その実情をほとんど知らない。特集の記事は勉強になった。例えば,羽田空港の国際旅客数が平成24年(2012年)には7,320万人,平成14年の1.23倍になるとのこと。また,羽田空港発着枠の不足については,「欧米並みの空港容量を持つとすると3倍くらい必要」とのこと。地方の空港では採算が合うのだろうかと気になるところもあるが,首都東京ではこんなにも事情が違う。これほど必要とされる社会基盤であるが,大規模だけに,環境への影響はどれほどなのだろうかと思ったが,これについても知ることができた。また,旅行者の立場からは「粗末な食事を高価な値段で売る店」のことが書かれているが,"旅行者"として同感である。ボストンローガン空港のHPも興味深い。
(崇城大学 上野賢仁)

日本の空港事情が切迫した状態であることは,なんとなく知っていましたが,単に滑走路の増設をすれば済むと思っていました。しかし,実際には物理的な制約もあること,空港事情の変容,将来的な利用方法の変容を踏まえ,空港整備をしていかなければならないと思いました。
(清水建設 太田博啓)

1-2 インタビュー 航空会社から聞く 羽田・成田に関する意見
日本の滑走路の整備は,アジア諸国に比べて遅れているという。この整備の遅れは日本の経済に多大な損害をもたらし,日本のアジアにおける役割にも影響が出ているのではないだろうか。事業遂行には様々な障害が存在するのだろうが,時代が移り変わるとともに,その国にとって必要なものは随時整備してゆくべきなのだろう。島国である日本にとって,空港と港湾は玄関であり,顔とも言える。滑走路の容量を増やすのはもちろんのことだが,日本の玄関として誇れる空港を造っていただきたいと思った。
(東北工業大学 引地博之)

1-3 旅行者の立場から見た空港評価と提言
利用者の立場からすぐにできる改善策を提案されていてどれも納得のいくものであった。なぜ,現場のエンジニア等からこのような提案が出されないのか不思議である。
予算・規制等の課題があるかもしれないが,ぜひ,空港関係者の意見をききたいものである。
(日本デジタル道路地図協会 安居邦夫)

『旅行ジャーナリストの目から見た提言』という切り口は学会誌では初めて見るような気がします。空港のような公共性の高い施設の計画となれば当然いろいろな目で検討がなされる必要があり,土木技術者としては他の業界からどのように見られているのか興味がありました。チャンギ空港は私も何度か行った事がありますが,成田や羽田とはスケールがまったく違うと感じていました。おそらくあれが世界標準に近いものであり,日本の空港は立ち遅れているという事なのでしょう。成田空港も,予算の問題はあるにしても,まずはチャンギ空港に追いつけ,追い越せという姿勢が必要なのではないかと思います。ソウルへの日帰り出張も(やりたくないですが)可能になってきていますが,その行程の中で一番時間が掛かるのが自宅もしくは会社から成田空港へのアクセスの時間になります。日本航空システムの役員の方のインタビューにあるようにリニアを走らせて都心−成田間を10分,15分でつなぐという事が出来れば飛行機の利用はもっと身近なものになると思われます。(そのためには様々な問題をクリアしなければならないのでしょうが)そのような夢が早く現実になることを願っております。
(東洋エンジニアリング 菅原紳二)

数値データの比較などから,今回紹介されていたいくつかの日本国内の空港が世界的には特異的なのだという事実を知った。確かに,国外で調査を行ったとき,現場での作業による疲労に加え,成田からの帰路の疲労に追い討ちをかけられた経験がある。世界を旅する人たちにとっても,利用のし易さ,食事や景観などにも配慮していただきたい。クアラルンプール国際空港の写真がたまたま記載されていたが,同空港は日本人の設計によるものである。過去にマレーシアの調査の際何度か利用したが,高速道路と直結されており大変利用しやすかった。また,設計のコンセプト『森の中の空港,空港の中の森』の通り,周りは熱帯の植物に囲まれており,内部にはふんだんの植栽が配置されており,マレーシアらしさを感じた。まさに『見せ場』であった。日本の玄関である空港に,是非とも『日本らしさ』が欲しいものである。
(土木研究所 中田典秀)

外国の主要空港の質が全て良いとは思わないが,旅行者として成田空港と主要な外国の空港との比較して私が感じたのと同様な不便さや違和感を筆者は逐一指摘されている。その内容は全く同感の極みでうなずける物ばかり,溜飲の下がる思いがしました。
個々の状況は公共事業の建設から施設運用まで全ての段階で日本独特の世界に通用しない非合理性とも見える論理が反映された結果であると思う。
金を払う側,即ち顧客の視点に立って作られていない,主役である利用客,ホスト側の航空会社の利便性や経済性に対する配慮が薄い。そこに見えるのはコスト主義、管理優先主義である。この背景には公共事業に対する国民の理解と後押しが無いことで作る側の姿勢が後ろ向きになる事と無関係ではないと思う。これは空港に限定されたテーマでの現象でない。国民が公共事業においては自らが注文者であり又エンドユーザーにもなるという意識をもたない限り日本では常に同様な問題点に突き当たる。
そうした意味で,学会誌が公共施設の作る側や管理する側だけでなくユーザーの声をこのような形で掲載した事は素晴らしい企画であると感じました。
(復建エンジニヤリング 永田成正)

土木技術者以外の方の意見がとても新鮮でした。我々にとって,整備された社会資本を実際に利用する方々の意見は非常に重要で,社会資本整備の効果を示す大きな指標の1つだと思います。
(横河ブリッジ 水越秀和)

本記事にも挙げられていたシンガポール・チャンギ空港には数年前,トランジットで初めて立ち寄りましたが,「ここはちょっとしたテーマパークか?」と思えるほど施設が充実しており,その時は次の搭乗便まで5時間以上あったにも関わらず,飽きるどころか,もう少し滞在時間がほしい,と思えるほど魅力的な空港であったと記憶しています。それ以来,日本発着の直行便がない東南アジア方面に出かける際は,チャンギ空港乗り継ぎ便を選ぶケースが多くなりました。
最近,日本に海外からの観光客を積極的に誘致しようという動きが見られます。一方,国際空港は対外的にはその国の玄関口であると言っても過言ではないと思います。成田空港あるいは関西空港をアジアのハブ国際空港に,と言われ始めて久しいですが,日本の空港を起終点とする旅行者のみならず,トランジット等何かの縁で立ち寄った旅行者に,日本に立ち寄って良かった,また来てみたい,と思ってもらえるような空港整備に少しでも貢献できれば,と思いました。
(鹿島建設 嶋村知久)

1-4  The Winged City "The Incheon International Airport"
北東アジアのハブ空港をめざして国際空港都市の整備をすすめている韓国の現状がよく理解できた。わが国も国土のグランドデザインを国際競争力の視点から考える時代になっていると実感できた。
(日本デジタル道路地図協会 安居邦夫)

2-4 首都圏空港整備への道筋と国民的議論への期待
私は昨年まで千葉に住んでいたため,成田空港へはさほど時間も掛からずに行けたのですが現在は川崎に住んでいるため羽田空港の方が使いやすい環境にあります。そのような個人的な理由から羽田空港の国際化に賛成している一人です。飛行機は乗っている時間は鉄道等に比べて短いのですがその前後,つまり,空港へのアクセスに時間が掛かるのが難点になっていると思います。空港へのアクセスの鉄道、バス等を整備して時間短縮を図るとその鉄道,バス(長距離)の乗客が飛行機に移ってしまうという矛盾をはらんだ構造になっているためになかなか利用者が本当に欲しい方向に向かいづらい面はあると思います。また,様々な利権も絡んでくる為に簡単には行かないのでしょうが,何が国民の為になるのかを念頭において議論を進めていって欲しいものです。
(東洋エンジニアリング 菅原紳二)

リージョナルジェットと呼ばれる小型機材を用いて,地方空港と首都圏とのフリークェンシーなサービスを提供するというのは,以前からいろいろなところで議論されてきています。その中で,小型機材のみの運用に着目し,時間的な集中運用による空域内交通容量の増加,小型機専用のハブ空港の整備と羽田・成田両既存空港との有機的な運用などは,非常に興味深い提案だと思います。
しかし以前,機材の小型化による便数増加を航空会社が提案したところ,自治体側が便数の増加よりも大型機材の維持を望んだ例があったと記憶しています。これは,季節波動や団体客に対する柔軟な対応を念頭に置いたものだと思われます。航空会社としては日によって大型機材,小型機材を使い分けることが難しいでしょうから,こういった波動輸送に対する上手い対応策を考えないと,日本ではリージョナルジェットという形態の導入はなかなかに難しいところがあるのかもしれません。
(本州四国連絡橋公団 薄井稔弘)

土木学会誌編集委員長のページ 学会誌をどう作るか?〜「五つの方針」と「五つの方策」〜
学会誌編集委員長が学会誌の方針と方策を明確に打ち出したことの重要性を評価したい。学会誌は,対外的には学会の顔と取られる可能性のある「メディア」であり,また,学会員にとっては,自らの専門領域の外で何が起こっているかを知る重要な手段でもある。このような認識から明確に方針と方策を示したことに敬意を表する。
なかでも「方針3 供給サイドに加えユーザーをも視野に」は,極論すれば,供給者である我々が需要者を明示的にとらえずに仕事を進めてきたことの裏返しでもあり,「視野に入れる」ことを明確に定義したことは画期的である。
また,「方針4 見解の多様性を強調」と明記したことも評価したい。顔の見えない「総意」や,「上司」「クライアント」だけを見て物事を判断したつもりになっていることの多い我々にとって「見解は多様であるはずである」という前提に立つことは,新鮮である。
このように受けるよい印象とは異なり,当記事は全般にわたって「会員の多様性」を想定していないという印象を与えている。意図的に使われているのではないと思いたいが,文頭の「委員・事務局の諸兄とともに」,文末の「読者諸兄のご批判を仰ぎながら」というフレーズは,「諸兄」に該当しない「女性」にとっては,必ずしも気持ちの良いものではない。
このような影響の大きく,読者の目に留まりやすい記事の編集の際にはぜひ留意していただきたい。
(シンクタンク嘱託 河合菊子)

「ユーザー」側(読者)なのでこのページは関係ないように思ったが,「ボランティアベースの会員が編集している」のだから,全く無関係とも言えないと思い直し,内容に目を通した。【方針5】の「人工物ばかりだけなく,自然の保全復元,情報インフラ,風習や制度など無形インフラなどにも関心を広げて損はない」には共感する。また,【方策3】の専門家ではなく「素人」の記者が取材すると確かに読みやすいと思う。一見したときは難しいことを書いていると感じたが,よく読めば納得するところが多い。ただ,個人的には土木界の将来像がまだまだおぼろげにも見えてこない気がする。
(崇城大学 上野賢仁)

プロジェクトリポート  粗朶沈床工 最上川における最近の施工事例と本工法の環境保全上の特徴
粗朶沈床工の水制を採用した根固め工事。鉄鋼,コンクリート,石油2次製品等の素材を使用しない工事は現代のハイテク全盛時代にはローテクに見える。
しかしそのローテクが実は合理性に満ち,優れた特性を発揮しハイテクを凌駕するという。ヨーロッパの伝統工法である粗朶沈床工が日本に伝えられたのは明治の初頭と聞くから130年以上に及ぶ実績がある事になる。それが現代大々的に生きる,そして施工のメカニズムはまさに土木(築土構木)の原点を見るようである。
さまざまな利点がある事は理解出来たが,粗朶の育成と連柴の製作に相当なマンパワー要するように見受けました。このデフレ時代に人手を多く掛ける事は必ずしも悪い事ではないと思いますがコストがどうなのか一寸気になりました。
(復建エンジニヤリング 永田成正)

最近は多自然型川づくりなど,河川整備においては自然環境を意識した開発が身近なところでも見られるようになってきたと思う。当記事の粗朶沈床工も私の住む地域に流れる河川で行われており,その河川の資料館で粗朶沈床工の実物を見て,説明を受けたことがある。粗朶沈床は,この記事にもあるとおり,柔軟性に富み,河床の地形の変動になじみ,耐久性も高く,水生生物の住処にもなる。私は粗朶沈床の利点から,開発は自然の力をうまく借りて行うことが最良な結果を招くのではないかと思った。
(東北工業大学 引地博之)

最近の工事は効率ばかり優先して,景観や周囲への影響といったことがおざなりになっているものも多いような気がする。昔ながらの伝統工法には,今の技術から見れば問題もあるものもあるかもしれないが,それを補うものが絶対にあるはずである。
伝統の工法は,長い間使われてきただけではなく,その間にさまざまな改良や工夫がなされ,特に自然に対してはやさしいものになっているはずである。今回の工法も,魚類の多様な生息環境を創出することや,林業等の経済活動を促進するなどいい面も多いということである。効率も大切だが,自然やそこで住んでいるものたちについても,考えていかなければならないなと感じた。
(清水建設 児玉浩一)

技術リポート 「投稿」聖牛ブロックの開発
一時期,戦国もの小説にこって,読みあさったことがあります。武田信玄,上杉謙信は大好きでした。信玄の治水の成功は非常に有名で,詳しく記載していた小説も少なくなかったと記憶しております。そのような背景もありこの記事は,大変興味を持って読ませて頂きました。近年になって,伝統河川工法の有効性が見直されて各地で整備されているとは意外でした。この記事では,聖牛の課題の克服に焦点が当てられていましたが,課題が多いのになぜわざわざ,この伝統工法に拘るのかがよく分からなかったので,インターネットで調べた次第です。「聖牛」をキーに検索すると長所を解説したサイトがいくつか見つかります。私と同じ疑問を持たれた方は,是非どうぞ。
(清水建設 桜井英行)

伝統的な河川水制工法の種々の問題点を解決し,再生して新しい工法を開発しようとするリポ−トに大変興味をもった。今でこそ,プレキャストブロック等の材料が普及しているので,揚重機械で安定性に優れたものを容易に施工できる。しかし,聖牛がなぜこのような形状になったか,どのように設置したか等を辿っていけば,古来の水制機能の考え方や施工上の工夫がひも解くことができるのではないかと思う。このことが,様々な構造物を合理的に設計・施工する重要なポイントになると考える。
(鹿島建設 田中俊行)

技術リポート 「投稿」アスファルト舗装の長寿命化への提言
道路における利用者との直接的または物理的な接点は,視覚などを別とすれば車を通じた(ハンドルやシートからタイヤまで)舗装である。とくに轍に関してはハンドリングに影響が大きく,安全性との関連も高い。また,平たん性は走行快適性を左右し,とくに有料道路ではサービスレベルの一つと位置づけられる。これら舗装の性能を高品位のまま長期間維持することは,環境負荷やLCCにも関わる重要な課題である。記事にある超寿命化を目指した舗装設計,品質管理,施工管理へのノウハウの蓄積とともに,排水機能の回復,とくに個人的な経験からは改良(切削オーバーレイ)を行う際の既設基層の性能判断が課題と考える。さらには過積載車両による舗装への損傷,積雪地域や数年に一度の頻度で雪が降る地域などでのスノー・チェーンによる骨材飛散やクラックなど舗装技術だけでなく,自動車業界,運輸業界,タイヤメーカー,過積載取締や通行止めに関する権限者,保険会社を含めたリスク管理手法として取り組むことも必要なのではないだろうか。
(日本道路公団 谷口 寧)

車を運転していると突然の渋滞。渋滞の先には道路の補修工事という経験は数限りない。どうして,毎年毎年,どこもかしこも補修ばっかりやっているのかという怒りの声は,建設業に従事している人達からも聞こえてくる。本記事は,アスファルト舗装の寿命が短い原因を規格や施工方法等から分析して明らかにし,京都における新規格アスファルト舗装の実例を紹介している。建設工事費の縮減が続く時代の中にあっても,建設業界には質の高い社会資本を国民に提供し続けることが求められている。本記事によると,今でもすぐに長寿命のアスファルト舗装の建設は可能であるという。建設工事費の縮減や二酸化炭素排出量の減少に繋がる,まさに時代にマッチングした技術レポートであった。
(東亜建設工業 菅本清文)

現在の舗装の維持補修は米国式である対処的な考えであるが,欧州式にみられるアスファルト舗装の個々の損傷の原因を調べた後に補修するものにかわりつつあるという。また,品質の均質な規格化が重要である。施工機械においては,欧州ではアスファルト混合物を輸送するのに専用の断熱材2枚で保温しているのに対して,わが国では,雪・砂利等を運ぶのと同じトラックを使用し断熱しておらず,また,フィニッシャーごとに混合物の冷却状況が異なるというずさんなものである。筆者が述べているように,この命題に今こそ国家プロジェクトを開始し日本の舗装技術を世界標準とすべきである。
(東京都 宮代 尚)

忙中ペンあり 第六回 「ヘルメット精神」と「将たる器」
土木技術者の真骨頂ではないでしょうか。初心者が必ず守らなくてはならないことであり,ベテランは絶対忘れてはならないことですね。
このように良心を持ち続け技術に長けた優秀な技術者はいわば国家的財産ですが,彼らはもっと世の中からなんらかの高い評価を受ける必要があると感じます。
世の中に語りつづけるメディアとしての学会誌の役割は実に重要だと思います。あらゆる方面の読者に「土木」の光をこれでもかと当てて反射させてくださいますようお願いいたします。
(国際建設 佐々木幸一)

「ヘルメット精神を忘れていませんか」の記事に対して,同意見である。『理論や研究』が何のために行うかというと,施工(現場)に他ならない。研究―設計―と施工が密接に関連していることを再認識すべきであると思う。
(鹿島建設 田中俊行)

土木技術者でありながら,学生時から一貫して研究職に従事する筆者にとっては,本記事はとても考えさせられるところが多かった。ヘルメットに象徴される工事現場,研究に従事する土木技術は,現場における職人の声に耳を傾け,職人の技を己の研究に反映させなければならないと痛感しました。
(京都大学 稲積真哉)

海外ほっとライン 韓国留学とソウル最新事情
韓国の大学の教育内容,教育水準,教育環境,土木系学科の人気,社会的評価,人気のある就職先,産官学の連携,研究資金の獲得先と獲得方法,研究評価の方法などについて触れてほしかった。
(日本デジタル道路地図協会 安居邦夫)

大変興味深い企画であり,毎回楽しみにしたいと思う。ただ,今回の寄稿では,土木技術者ならではの経験に触れることができず,残念であった(もちろん,各トピックは初めて見聞きするものばかりで勉強になったが)。今後は是非とも日本にいる土木技術者を鼓舞するような体験談を拝読したい。
(土木研究所 中田典秀)

災害復旧や戦後復旧などリスクと隣り合わせの海外地域で活躍している土木技術者はたくさんいると思われます。そういった技術者の方々のレポートなどはこれまでも特集であったと思いますが,連載記事となるとまた違ったスタイルのレポートになりそうで楽しみです。第一回目の今回はとても親しみやすい内容で興味深く読むことができました。次号以降も楽しみな連載です。
(横河ブリッジ 水越秀和)

話の核が何であるのか,いまいちわからなかった。内容が浅く広くであったことが残念に思う。もっとページを割くか,話題をひとつにして細かく紹介するかにして欲しかった。
(横浜国立大学 栗崎敬子)

海外ほっとラインに期待することとして,その土地で進んでいる土木技術を紹介して頂きたいです。技術が進むと言うことは,そのテーマに問題・課題があり,土木技術の発展のチャンスが数多く眠っていると考えます。
(東亜建設工業 川島 仁)

東京の地下鉄でも駅番号の表示がされるようになったが,この単純かつ明瞭なシステムは国際都市においては重要なことであろう。韓国の交通カードは,一枚で地下鉄やバスに乗車できるというものである。日本ではSuica・パスネット・バスカードというように別れているが,これを統一する仕組みづくりは命題なのかと私も感じている。
また,韓国のタクシーにおいて,英語・日本語・中国語と韓国語を同時通訳してくれるというものはとても素晴らしいものである。
いずれにせよ,国際都市東京において何が必要なのか韓国の事例に限らず世界の都市のいいものを参考にして採り入れるべきである。
(東京都 宮代 尚)

高校時代の一年間を海外で過ごした私にとって,「ふむふむ」とうなずけること,「ん?」と思うことなど,様々な感想を持った記事だった。私の場合は,最初の半年間,日本語を使うことがまったくなかったため,結果的に日本での語学の準備の必要性はなかったし,今のようにインターネットや安価な国際電話がなかったため,日本とのやりとりは手紙のみであったことなどから,現地の人と付き合わざるを得ない環境であった。とはいうものの,筆者の挙げた「可能な限り異文化に接触する」ことは,私の場合にもある程度の日数がたたなければ出来なかったことであった。
積極的に「接触する」意志を持たなければなし得られず…,ということなどは,業務で赴任する方々とは異なる状況であろう。
また,この記事では韓国の人の北朝鮮に対する感情についても触れている。実際に韓国で暮らし,韓国に住む人々の間に暮らさなければ聞くことのできない質問である。このような生の情報が,この連載の目玉となっていくのではないかと期待させる,興味深い記事であった。
(シンクタンク嘱託 河合菊子)

体感できる土木ミュージアム15 見て 聞いて 触れる わくわくフィールドミュージアム ミュージアムパーク(茨城県立自然博物館)
毎号楽しみにしているこの連載であるが,今回は特に博物館の運営に関する記載があったことが目を引いた。博物館と学校教育,リピータとともに行なう地域の博物館の運営などは「箱もの」博物館を,継続的に活用するための有効な方策である。
最近,ある博物館の運営者に聞いた話によると,博物館の学芸員は自らの研究活動の傍ら,訪問者や対外的な活動も行なわざるを得ない状況であるという。一つの解決策として,学芸員は研究者に徹し,学校や来訪者の対応を行なう専門の職員(例えばニュージーランドの例では,School Service Officer)を置くという方法があるという。
「土木ミュージアム」の紹介をする際には,見る側の視点と同時に,運営側の実情についても言及してはどうだろうか。今後,学会として,学会員として,あるいは各分野の専門家として,どのような貢献が可能かについてヒントを得ることができるだろう。
(シンクタンク嘱託 河合菊子)

真夜中の技術者たち 第2回 空港夜間作業
ダイナミックな現場の雰囲気が伝わるレポートであり,学生の視点から分かり易くまとめられているだけに土木学会誌以外にも是非紹介して頂きたいと思う。プロジェクトX日常版と称しても良いぐらい,十分に一般の方々の興味を引く内容ではないだろうか。何より,この記事の素晴らしいところは写真と説明文のレイアウトであり,惜しむらくは工事を行った舗装箇所が供用されている写真(これを目にして感動があると思うのだが)が無いくらいである。似たような現場を経験している我々にとって,土木工事の作業内容や工程管理にそれほど新鮮な驚きはないが,この記事のように素直に人に伝える術を持っているだろうかと考えさせられた。
(日本道路公団 谷口 寧)

たいへん面白い記事でした。特に誘導路の舗装打換工事の様子は時間的な作業の流れがよくわかり,興味深く読ませていただきました。
空港の,特に滑走路は一般道路と異なり,維持管理のために一部閉鎖などということはできないでしょうから,メンテナンスにはシビアな時間制約にさらされているのだと思っていましたが,この記事でその概要が理解できたように思います。
(本州四国連絡橋公団 薄井稔弘)

夜間工事は目立たない仕事である。しかし,彼らがいるからこそ,私たちの日常生活が安全に守られている。そうしたところに着目し,紹介する企画は大切だと思う。もっと公に紹介してもいいと思う。取材する記者の方々も大変だと思いますが,毎回記事を楽しみにしているので是非続けてください。そして,多くの陰で活躍する技術者を紹介してください。
(横浜国立大学 栗崎敬子)

私の勤務先は建設が主体であり,維持管理は構造物の譲渡・貸付先にお願いしてしまいますので,維持管理の現場を紹介していただくことはとても参考になります。設計・施工を行っている多くの方にとっても同じではなかろうかと思います。この企画を長く続けていただけますようお願いします。
(鉄道・運輸機構 玉井真一)

話の広場 先人の知恵が編みだした伝統の技「竹蛇籠」を後世に引き継ぐ
何もない時代に生み出された「竹蛇籠」の技術。先人たちの知恵である。近年, 技術の進歩と共にこうした過去の技が消えつつあるという。非常に惜しいことだと思う。こうした昔からの技術の復興は, 失われた自然環境をよみがえらせる起点になる。後継者を育てる試みに是非期待したい。
(横浜国立大学 栗崎敬子)

竹という自然の素材を用いた蛇籠の技術は興味深いものだ。水中ならば数十年はもつとのことなので,現在多用されている金属製のものと比べても,耐用年数は十分といえる。親水護岸等のように,自然への回帰が盛んにうたわれている現在においては,再度注目すべき技術だと思う.
(鉄道・運輸機構 神田 大)

学会誌全般へのご意見,編集委員会への要望等

土木学会誌編集委員長による学会誌をどう作るか?が発表されました。土木界周辺環境の転換もビジュアルなものに成りつつある事の手応えを感じ取られたので,今後それに反応し,先取りして行く前段としての「五つの方針」,「五つの方策」が示されました。まことに結構な事でこれからも実施方策に則り編集された今以上に充実した学会誌に会えるものと期待致しております。
今後の誌の飛躍と編集委員皆様のご活躍をお祈り致します。
(復建エンジニヤリング 永田成正)

この半年間,学会誌をじっくりと読み,土木に関する幅広い話題に触れることができて大変勉強になりました。私は学会誌から土木と社会の深い関わりを知ることができました。これからも,この土木と社会の関わりを意識しながら勉強してゆきたいです。
(東北工業大学 引地博之)

学会誌の特集は,毎号30ページ程度となっていますが,私には多すぎるように感じます。特集されている内容に興味がなかったり,精通していない場合,目も通さない人は少なくないのではないでしょうか。私には,30ページの特集1つよりも,10ページの特集が3つある方が嬉しく思います。
(東亜建設工業 菅本清文)

6ヶ月間,モニターとして興味深く土木学会誌を拝読させていただきました。
今月でモニターの任期は終了しますが,今後とも興味深い記事を心待ちにしています。
(三井住友建設 金重順一)

粗朶沈床工,聖牛ブロック,竹蛇籠というどれも伝統的河川工法の現代的適用を扱っており,偶然のことかもしれませんが,一体的企画のように読ませていただきました。聖牛ブロックの開発は,小さいものであるという利点はあるでしょうが,複数の案を同時製作して実地検討するという方法に新規性を感じました。
(鉄道・運輸機構 玉井真一)

2点あります。コラムのような簡単なものでも良いので,植物や動物の記事を入れてはどうでしょうか。絶滅危惧種のような特別なものでなくても良いと思います。もう一点は,今"土木"という名称を使わない土木系の学科や大学院が多いようですが,学会の名称はともあれ,新しい学科名称とか教育内容(カリキュラム等)について議論して頂ければと思います。また,決して新しい問題ではないと思いますが,現場・職場が求める学生像や教育のあり方などについても紹介,議論して頂ければと思います。
(崇城大学 上野賢仁)


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