土木学会誌6月号モニター回答

観光拠点としての活用

 数年前にアメリカのフーバーダムを訪れた。ダムは竣工後60年以上を経て、まだまだ現役である。ラスベガスという土地柄だろうか、年間70万人以上が観光目的で訪れる。そこで感じたことを列挙すると、先ず売店や食堂等の観光付属施設がダム本体と一体に作られていること。荒々しく野生的な景色を損ねること無く配置されている。次に入場料を払ってダムの堤内を観光地できること。堤内は現役施設としての迫力があり、先人達の苦労の足跡が歴史として記録されている。 またそこで働くスタッフは洗練されたユニホームを纏い誇らしげである。その全てが相俟ってとても印象深い観光地であった。 国内で観光利用されている土木施設のと比べると、何かが根本的に違う気がする。活用・再利用されている施設は、無論それなりのポテンシャルを持った施設である。新たな価値を与えられた土木遺産としても親しみが持てる。しかしそれらは、当所の目的と違った利用を余儀なくされる場合が多いため、現役土木施設と比べると圧倒的に迫力に欠ける。公共施設であるため利潤を追求しにくいというが、人件費や維持管理費を自ら稼ぎ出す施設は市民に歓迎される。ある程度大規模な公共事業においては、予め観光資源と位置づけ、その施設が持つ飾らない魅力を体感させることも、公共事業の姿ではないか。 
 (株)大林組 後藤嘉夫
←戻る