2024年7月号 会長就任挨拶
土木学会の新しい風景をともに描こう!
早稲田大学で建築、東京工業大学で景観を学び、2003年より早稲田大学教授。土木学会では学会誌編集委員会、景観・デザイン委員会、D&I委員会の委員長などを経験。NPO郡上八幡水の学校副理事長。博士(工学)。 |
この度第112代土木学会会長に就任しました。まずはご推薦、承認くださった皆さんにお礼申し上げます。土木学会にそろそろ女性会長を、という声があったためかと思います。それは、これまで大変永きにわたって土木界における女性の地位向上に尽力されてこられた皆さんの成果の現れであると、素直に喜びたいと思います。
さて、一昨年秋、次期会長候補者に推薦いただく際、所信を示す必要がありました。そこで私はおおよそ次のように述べています。
「土木学会会員としての経験の中でも、土木学会誌編集委員長、D&I委員会委員長としての活動は、土木学会が専門性のみならず人間として実に多様な力をもった人々によって構成されており、その多様性を発揮することが土木学会の強みになることを教えてくれた。初の女性会長が誕生するということは、依然としてマイノリティーである女性技術者や女子学生の希望に、そして土木学会が多様性を重んじているという社会的メッセージとなる。それゆえD&Iの実践に取り組んでいこう。しかしそれは単に女性や外国人といった属性の多様性を重視することではなく、会員一人一人の人としての多様性を尊重することである。また元来土木はそれが形となる地域それぞれの固有性を大切にしてきた。このことを景観デザインの観点から向き合ってきた風土と文化を尊重した土木の仕事を通して広く社会に伝えていこう」
この所信をもとに対話を重ねて、「土木学会の風景を描くプロジェクト」を企画しました。土木界に限らず世界には課題が山積しています。それらを解きほぐしていくためにも、インフラの未来をけん引する土木学会の会員一人一人が、互いを信頼し、自由に交流することが今、求められていると考えます。そして「土木学会という共同体はそのためのインフラである」、と全ての会員と職員が思ったなら、学会活動のかたちも変化し、その風景も新しくなる。そのきっかけとして、「交流の風景」、「広がる仕事の風景」、そして「土木学会のDX」を柱に、些細(ささい)なことから時間のかかることまで、少し欲張ったプロジェクトに取り組みます。失敗を恐れず、でも遠くに据えたなりたい姿は見失わず。そしてこの学会活動の新しい風が4万人の会員一人一人を通じて土木界に、各地に吹き込まれ、あちこちでアイデアが生まれ、形になっていくといいな、と思っています。1年間どうぞよろしくお願いいたします。