会長新年挨拶


カーボンニュートラル時代の国土を描く
─多様性と結束力を力に


池内 幸司 IKEUCHI Koji 第113代 土木学会 会長


あけましておめでとうございます。
昨年を振り返りますと、全国各地で線状降水帯などによる水害や土砂災害が相次ぎ、夏には記録的な高温と、渇水に見舞われるなど、自然の猛威を痛感する一年でした。熱中症のリスクも高まり、気候変動がもたらすリスクの深刻さを改めて認識することとなりました。気候変動対策は、もはや待ったなしの課題です。
こうした状況を踏まえ、昨年、会長プロジェクトとして「カーボンニュートラルでレジリエントな社会づくりプロジェクト」を立ち上げました。多分野から委員としてご参加いただき、対面で熱心な議論を重ねてきました。各分野で取組は進んでいますが、土木分野として俯瞰ふかん的に整理し、社会に発信することが重要です。本プロジェクトでは、100年後を見据える長期的視点と、国土全体を俯瞰する空間的視点の双方から、カーボンニュートラル(CN)の実現に向けた取組を総合的に検討することを、まさに土木学会が果たすべき役割にふさわしいアプローチとして重視しています。国土利用計画やエネルギー基本計画では方向性は示されていますが、国土全体の将来像の具体化は依然として不十分です。カーボンニュートラルを環境政策にとどめず、エネルギー・国土利用・インフラを一体的に捉えた「CNを支える国土のグランドデザイン」を描くことが求められています。
昨年9月の熊本での全国大会では、このCNを軸に据えた議論が多角的に行われました。地域の現場から、エネルギー転換や人口減少への対応など、多様な実践例が紹介され、CNの実現が地域再生の原動力となりうることが示されました。現場に根ざした活動が、学会の議論を豊かにし、CNの具体化を後押ししていることを実感しました。
また、10月に参加したアメリカ土木学会では、プロジェクトを「人」に焦点を当てて紹介する文化に触れました。関わった人々の努力や思いを通して土木の意義を伝える姿勢に学ぶところが大きく、我が国でも人の姿を通じて土木の魅力を発信していくことの大切さを感じました。
さらに、全国の支部を訪問し、地域特性を生かした多様な活動に触れました。その多様性を尊重しつつ、全体としての「まとまり」をもって社会に発信していくことが重要です。土木学会の強みは、「多様性」と「結束力」にあることを再認識いたしました。
本年も、CNをはじめ、災害に強く持続可能な社会の実現に向けた取組を皆様とともに少しでも前進させることができるよう努めてまいります。引き続き、よろしくお願い申し上げます。
© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会