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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2010年1月号モニター回答


■ 社会的要請としての社会基盤整備 阪田 憲次

日本における社会基盤については,高度経済成長期に整備された話を小職も聞き及んでおります。特に,トンネルに関しては,東京オリンピックの開催年である1964年に開業した東海道新幹線を含め,40年以上が経過しております。当時は,『トンネル寿命は,50年』という噂を耳にしており,既に老朽化が進み補修・補強が必須の状況と推測しております。そういった中,政権交代による大幅な公共事業費削減は,社会基盤の荒廃という懸念から大規模な人的災害も起こしかねないと思われます。阪神大震災では,高速道路が崩れ,安全神話として語られていた耐震度に対する限界点に大きな誤差が生じている現状,それに見合う新たな材料・原料・工法を含めた整備が求められるようになると思いました。
(所属:日本ポリウレタン工業(株) 氏名:田中一幸)

適切な社会基盤の整備・維持管理により、国民は豊かで安全な生活を享受し、企業者は生産活動が可能となる。しかし、そのために社会基盤の供給者は、その計画・調査・設計から施工・維持管理へと不断の努力をすることが必要である。目先の財政縮減施策から公共事業費を削減することは、特異な自然条件下におかれた我が国の社会基盤が、まさに直面する地球温暖化や防災上の諸課題を解決し、「持続可能な社会」を提供することが非常に困難になると思われる。土木技術者は、社会基盤の需要者である国民に、社会基盤整備の必要性、重要性を、一層、説明する必要があるだろう。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 第8回 安全の神はいないが 近藤 徹

個々の安全度は小さいが、いくつかの要素が並列に連結して、バックアップをすれば、全体の安全度は飛躍的に高まる、という内容に共感を覚えました。小生も鉄道工事に携わっておりますが、特に保線作業では、列車の円滑な運行を妨げないような施工管理システムの構築が究極の使命です。定められた手順に基づいた作業を行うのは当然ですが、不測の事態やヒューマンエラーが発生した際、大きな災害を未然に防ぐバックアップシステムが不可欠です。安全機器なども効果的ですが、最後の決め手は、基本動作というセーフティネットです。さらに、あたり前のことを、あたり前に実行していく、凡事徹底が大切だと思います。
(所属:清田軌道工業株式会社 氏名:原 繁男)

土木構造物の安全についてのお考えに小生もその通りだと思います。直列的なシステムではなく並列的システムにする必要性は土木構造物が破壊されたときの被害の大きさを考えれば当然のことと思われます。ただ最近のマスコミは想いつきのアイディアや短絡的な提案を取り上げ定説のように報じているが専門的な見地からは首を傾げるものが多々あります。それだからこそ定説が認知されるまで言論を慎むのではなく、専門家集団である土木学会が積極的に取り組み、一日でも早く望ましいシステムを提言すべきではないだろうか。
(氏名:比奈地 信雄)

安全工学の世界ではヒューマンエラーを低減するためにフェールセーフの考えに基づき「バックアップシステム」を構築することが従来から行われている。治水システムにおいては、昨今の環境保全の観点から「脱ダム」による護岸の強化といった一元的な発想が注目を浴びているが、土砂輸送現象を考慮した治水の諸問題を一元的に解決できるか疑問である。河川工学の専門家及び河川・海岸・港湾管理者が河川個別に、流砂系の総合土砂管理を技術的に議論するとともに、地域住民を交えて、ハード及びソフト対策と一体なったバックアップシステムを採用した、適切な治水システムの検討が行われることを期待する。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 環境に配慮した激特事業 神谷 毅

以前このあたりを訪れた際に、幸運にもコウノトリに遭遇したことがあります。田んぼでエサを啄んでいるのを見て、自然の中で人と共生しているんだという印象を受けました。この記事を読み、行政、地域住民、関係団体が連携し、整備の方法を少し変えることで環境に配慮した河川整備が可能であることがよくわかりました。今後の河川整備、さらには公共事業全般において、環境との共生という視点の必要性を改めて感じました。
(所属:五洋建設(株) 氏名:井瀬 肇)

緊急性を要する激特事業でありながら、ユニークな環境配慮対策を含めて事業を推進した事例として大変興味深く拝見いたしました。災害対策事業の中で行政や地域住民との連携、環境配慮、良好な効果の確認のプロセスを経ることができた点で、各事業の便益に関する説明が強く求められる近年の事業の進め方の一つの成功例としてお手本になると思いました。クロスボーダー第11回の記事は、土木事業の様々な付加価値の一例として市民に「ああ、土木事業はこんな点でも役に立ってるんだな」と納得してもらうことができるような事例だと思います。事業に付加価値を与えつつ、事業推進プロセスの中でも説明責任を果たしていくことは今後の土木事業の推進において、ますます重要だと改めて認識しました。このような取り組みを一つ一つ積み上げることが、業界全体の仕事を拡げることに繋がっていくと考えています。
(所属:日本工営 氏名:野末 康博)

■ 日本初洋上風力発電に挑むウィンド・パワーかみす洋上風力発電所 小松ア 衞

クリーンエネルギーの代表である風力発電が登場して久しいが、一方で低周波騒音公害、景観公害、日照障害といった課題も発生しており、近年、適切な建設立地場所が少なくなっている。周辺環境に与える影響が少なく、風況が安定し、かつ膨大な風力エネルギーを有する洋上に、風力発電を建設することは、合理的であり、これまでの海上工事で培われた土木技術が生かされたことは喜ばしい。今後、風力発電建設の可能性が広がり、温室効果ガス排出抑制に期待ができる。新たな生態系への影響、船舶航行安全といった課題も予想されるが、土木技術者の英知を結集して解決できると信じている。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 第62回 政策研究大学院大学副学長、元・内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)
大田 弘子さんに伺いました [聞き手] 窪田 崇斗、神田 佑亮

土木業界・土木技術者が果たすべき役割について、意義深い指摘をいただき、感銘を受けた。土木技術者のモチベーションに響く鋭い指摘であると感じた。土木技術者は、現実に発生している、あるいは発生しつつある困難な課題を解決する訓練を積んでいる。しかもその課題は影響範囲が広く国民生活に密接に関連するケースが少なくない。これが、他の科学分野の技術者と大きく違う点であろう。こうした土木のチカラに加え、「批判を転換への推進力」に変える謙虚で前向きな技術者を待望する応援メッセージとして受け取った。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

公共事業などを通じて建設業界が果たしてきた役割は,景気浮揚など多岐にわたっているが,社会的な要請に応えてインフラを整備するだけという立場に甘んじてこなかっただろうか?いたずらに建設業界の苦境を訴えても,世論が味方してくれるほど景気はよくない.「ソリューション」も提供すべきだとの意見を拝読し,思わず膝を打った.道具を提供するだけではなく,それを使って何をすべきか.そこまで踏み込んでこそ,世間の支持も得られよう.裏方に徹するばかりでなく,ときに表舞台に立って自らの考えを述べることが必要だ.それによって,優秀な人材が建設業界に飛び込んでくるという好循環に結びつく可能性も少なくない.
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

公共事業、すなわち社会基盤整備は、施設の利用者だけでなく、その地域全体としてのプランが明確されて実施されるべきである。そのためには、都市計画学、公共経済学の知見を生かして、面的な開発(再開発)が必須で、不適切な開発が行われると不健全な都市が創造されるであろう。豊かなで安全な国土を将来にわたり持続可能とするために、土木技術者に課せられた使命は大きいと考える。また、グローバル化の今日、経済成長の大きいBRICSの中国、インドを有するアジア経済圏での日本の土木技術が貢献することが十分期待されるし、優位性を確立できると期待している。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

「まちづくりのプランナーを土木技術者が担う」という意見に興味を持ちました。若い世代には、縮小傾向にある土木の世界で今後どうキャリアを積んでいこうかと悩んでいる人が多いと思います。これまでの「ものをつくる」仕事に加え、このようなまちづくりを土木技術者がリードしていくことができれば土木業界に対する魅力も高まるでしょう。実現のためには人材育成、自治体の協力など多くのハードルがありますが、土木技術者の新たな生きる道として取り組んでいく意味は大きいと思います。
(所属:前田建設工業(株) 氏名:奥田文)

■ 企画趣旨 河村 進一

土木のイノベーションを実現する手段として、建設ICTや情報化施工に期待するところは大きい。その本格的な導入に当たって、2点ほど気になったことがある。ひとつは、本特集においても指摘されていたことであるが、建設ICTや情報化施工が単なるツールに留まるのでなく、制度改革にまで結びつかなければイノベーションは実現しない、ということである。もうひとつは、いかに優れたツールであっても、それを有効に活用できる人材の育成ができなければ、片手落ちになってしまう、ということである。情報化施工技術はシステムとしてほぼ完成されつつあるという印象であるが、それをイノベーションにまで高めるには、まだ解決しなければならない多くの課題があると感じた。
(所属:清水建設 氏名:河田雅也)

■ 土木のイノベーション10選 河村 進一

アンケートを拝見して、土木のイノベーションのイメージが、技術革新という狭い意味だけではなく、土木事業推進システムの刷新、コスト削減、人的資源開発など、テリトリーの奥の深さを、改めて再認識いたしました。私たちの周りには、解決すべき問題点が山積みです。それらの問題点について、原因究明を的確に行い、きちんと対策を策定し、改善課題を抽出して、改善活動を実践していくことが必要です。そして、これらの地道な改善活動の連鎖が、ひいてはイノベーションに繋がる原動力になるのではないでしょうか?
(所属:清田軌道工業株式会社 氏名:原 繁男)

せっかくたくさんの新しい技術を紹介しているのに図と説明やタイトルが離れてしまってわかりにくいところがあった。レイアウトをもう少し工夫できないか残念だった。
(氏名:高橋麻理)

情報化施工を中心とした新技術が列挙されているが、企画のキックオフとして、有識者へのインタビューや座談会での議論により将来展望を概観するような大枠からの視点が必要ではないかと感じた。また、社会的要請を踏まえた上で期待されている技術、必要とされている技術など、ニーズの面からの視点、イノベーションによる帰着点からの視点も重要である。例えば、銀行の窓口を考えた場合、営業時間内に支店のある場所に出向く必要があり、時間的・空間的な制約が不便と考えられていたところに、ICT技術によってネットバンキングやコンビニATMが普及した。これがイノベーションであろう。土木のイノベーションによって国民生活にどんな変化が起きるのか、こうした議論も必要ではないかと感じた。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

現在の最先端のICT技術を知ることができ、大変勉強になりました。しかし素晴らしい技術でも、導入の方法によっては現場で「使いにくい」「以前のほうがよかった」と言われかねないと思います。新技術の導入を現場に押し付けるのではなく、現場を含めた関係者間で「新しい技術に挑戦していかなければならない」という認識を共有させ、前向きに取り組んでいく仕組みを作らなければならないと感じました。
(所属:前田建設工業(株) 氏名:奥田文)

■ 特集2 土木設計業務のための電子納品の利活用とその課題 古賀 秀幸

土木設計業務では電子化が進み、情報化施工につながってきている。今後は土木設計だけでなく横のつながりを広げていくべきだと考える。設計に直接必要な測量や地質調査だけでなく、構造物を計画・施工する場合に必要になる地中埋設物や近接構造物などのデータである。 電気、ガス、水道、用水、電話、情報BOXなどこれらの管理者と仕様の統一をはかり必要なデータは管理者に関係なく入手できるようにする。すべての電子データはこれらの管理を専門とする公的な機関で統一的に管理し更新や修正を行っていくことが必要と考える。ただ、このために新たな機関や外郭団体などを設置するのは考え物である。
(氏名:高橋麻理)

■ 特集3 情報化施工の現状と課題 三浦 悟

情報化施工については以前から様々な技術が開発されているものの必ずしも普及していないのが現状であるように思う。特に品質管理の面においては、情報化施工技術を導入しても最終的な検査は従来どおりの検査によることがあるため、現場からすると情報化施工技術を使いこなす手間だけが増えたように感じることもあるだろう。情報化施工技術の普及のためには、技術そのものの信頼性の向上はもちろん、それを扱う側の制度、体制の変革も不可欠であると感じた。
(所属:東日本旅客鉄道(株) 氏名:伊東寛)

現場の大小に関わらず、施工管理に関する膨大な情報を効率的に活用し施工の合理化を図る情報化施工技術は大いに望むものですが、まだまだコストメリットのある大規模現場に限られたものだという印象を受けます。中・小規模工事も含めた情報化施工技術の普及に向けては、個々のモデル事業での適用性の検証だけでなく、建設生産システム全体を見据えてそれぞれの事業分野の関連を含めた生産性向上についてさらに検討する必要があると感じました。
(所属:大林組 氏名:三倉寛明)

■ 特集5 インタビュー 情報化施工と建設のイノベーション [語り手] 建山 和由 [聞き手] 河村 進一

土木のイノベーションとは何か?21世紀型の維持管理・更新に重点が移行するインフラ整備においては、例えば、供用中の施設の機能改善するために、現場状況に応じ非常に高度な技術が必要となり、技術者に高度な技術が要求されるようになる。そのためには、技術者は、日々イノベーションを意識して、新しい技術に挑戦していかねばならないが、そのとおりだと思う。現在、情報化施工がイノベーションとは呼べないかもしれないが、近い将来、イノベーションにつながる道具になって欲しい。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 第11回(最終回) 救急医療と土木 石村 陽介、澁谷 容子

発生現場から高速道路までは救急車、そこからドクターヘリへ引き継ぐことが可能となればより患者にあった専門家のいる病院に緊急搬送できる。高速道路の新たなる活用と、医療への土木の貢献は理想的に感じました。救急車 のように、ドクターヘリが来たら道を空けるようになる為には、一般ドライバーへの周知が必要なると思いました。
(氏名:越石暁)

救急医療と土木では,土木の必要性が再認識できました。当たり前の話ではありますが,道路整備がされていなければ,救急車が患者を搬送できない。まさにその通りですね。また,高速道路の救急車緊急退出路や緊急用河川敷道路,さらには,高速道路本線上へのドクターへり離着陸と最近では,テレビドラマでも有名となった救命救急への対応に土木事業が必須であることを物語っています。第二東名高速では,開発当初は,渋滞緩和や地域(地方)の活性化と言われていましたが,現在では,災害時の緊急道路としての役割が取り上げられています。今後も,土木事業と社会貢献に関する情報を期待します。
(所属:日本ポリウレタン工業(株) 氏名:田中一幸)

土木と全く関係の無いようなものと土木との関係をいろいろな角度から探っていただきました本特集も、最終回だと思いますと少々残念です。最終回は、救急医療と土木の関係でしたが、救急医療に限らず、少しの工夫で飛躍的に発展する身近なものが世の中には沢山あると思います。学生さんの視点から見ると、土木といろいろなものの繋がりが見えると思いますが、社会人になられてからも、この視点を忘れずに頑張って下さい。本特集を執筆された学生委員の皆様、本当にお疲れ様でした。
(所属:首都高速道路(株) 氏名:石原陽介)

“景観の改善や道路スペースの確保のため電線類の地中化は、ドクターヘリ着陸場所の確保にも貢献できる”あまりにも短絡ではないかという意見を持った。しかし事故の発生する交差点、救急車の通る道路を計画、設計、施工するのも土木の分野であることを再認識させられ、多角的な視野・あらゆることを想定できる危機意識を持つことが必要であると感じた。この企画により社会経験の乏しい学生の身分でも、問題意識を持つことや啓発ができ、土木を違う視点で捉える機会になったのでよかった。
(所属:豊橋技術科学大学 氏名:白石直也)

ドクターヘリの利用用途が、緊急を要する患者の病院への搬送ではなく、救急患者の下に医師を派遣し、早期治療を行うことと言うのは、恥ずかしながらこの記事で知った。ドクターヘリの普及に当たって、電線の配置方法や照明器具についての形状の改善が役に立つと言うのも、うなずけるものであった。電線の地中化は、防災機能の面から、その有用性が言われているが、広場機能を持った箇所にヘリコプターが離発着出来ると言う面からも、更に進めるべき分野であろう。歩行者交通や自動車交通と言った平面的のみならず、有事の際に様々な機能が果たせる物を効率的に作るのが、土木の役目だと思う。
(所属:戸田市 氏名:諸井 敬嘉)

電線類の地中化は、景観の改善や障害物の除去に有用であるものと考えていたが、ドクターヘリの着陸場所の確保にも貢献するという話を聞き、私も意外だった。 今回で連載が終了とのことではあるが、新しい視野を与えてくれる本特集は非常によいと思うので、いつかまた復活してほしい。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:梶谷俊夫)

■ 第66回 有明海旧干拓施設群 高尾 忠志

日本の風土に密着した、現在も存在する土木施設を歴史的な観点から見つめた記事で、非常に読みやすく、そして、個人的に見に行ってみたくなった。長い歴史がそうさせたのか、風土と土木が調和して、決してでしゃっばっておらず、控えめで、「何気ない風景」となっている。そういった意味では、遺産ではなく、現財産かもしれない。筆者の書かれている、「地域の人々が長い歴史のなかで、自然と向き合いながら試行錯誤してつくり、守ってきた結果である」ことに共感する。人工的な建築物は、短いスパンではなく長いスパンで見据え、自然と共生しつつ作られるべきであるように思う。
(氏名:横田 美行)

■ 企画趣旨 亀谷 一洋

目次を見て最初に目に飛び込んできたのが、この企画でした。世界から見れば国土の小さい日本ですが、日本国内では各地域により歴史・風土・文化が異なることは面白いことです。土木構造物や土木関連施設が、日本全国で画一的になってしまうより、環境面や安全面で優良であれば、その地域の特性を活かした独自規格は、「地域文化」として、後世に残していきたいものです。この企画では、その地域特性を取り入れた土木構造物等を取材し、その経緯や今後の展開なども触れられる模様なので、私を含む読者の新たな発見や知識となることでしょう。これからこの企画を毎月の楽しみとして期待するとともに、出張や観光で日本各地を訪れた際には、私なりにも発見してみたいと思います。
(所属:(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構  氏名:山崎 功一朗)

■ 第1回 白と緑のアスファルト舗装 山中 稔

これぞまさに土木の面白さ再発見という記事だった.高知県の舗装に白や緑があり,それが石灰石や緑色岩を骨材として使用していたからということは今回の記事で初めて知った.顔料等を用いず,自然資源そのままの色が道路に現れているとは!雨の日には滑りやすくなるという面から,そして業者の廃業によりそれらの道路が減少しているとのことだが,すべての道路が普通の骨材舗装に変わる前に,この目で実際の三色道路を確かめてみたい.土木構造物の日本各地での地域特性について知る機会は少なく,今月より始まったこの特集で今後どのような土木構造物が取り上げられていくのか非常に楽しみである.
(所属:東日本旅客鉄道 氏名:吉田 知史)

環境に配慮しつつ快適に暮らすためのスローガンとして「地産地消」という言葉を最近よく聞くようになった.道路舗装に関して言えば,昔からその地域でとれる砕石や砂を有効活用してきた.石灰岩のように供用していく過程で磨耗しすべりやすくなるというような場合は,適用箇所を選定するなどの配慮が必要だが,可能な限り現地で調達できる材料を利用するという精神は今後も大切にしたい.舗装の色は道路利用者に対して心理面等で少なからず影響を与える.当該記事の写真には,高知県における三色の舗装が示されているが,これを道路利用者がどう感じるか非常に興味深い.アンケートをするなどして是非調べてみていただきたいと思う.
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

■ トキが教えてくれたこと 土木界隈 四季の鳥 番外編 喜多 直之、中田 一真

果たして、本州でいつ身近に見れるようになるのだろうか。人々の生活が安定している日本では、ゲージから出てきた朱鷺はこの先も佐渡島が唯一の生息地になるのではないかと思った。
(氏名:越石暁)

真っ赤な顔に黒く光った眼差しのトキがじっと人間を観察している。彼は、人の手が入らない自然を舞台に生き絶滅の危機を脱した鳥!彼の住む原野は、高山・山岳地帯と深い森。彼等の必要としているものを我々はずいぶんと奪ってきた。山を削り、海を埋めてきた。トキの悲しみがぐっと心に響くくだりである。
過去、高度成長時代から安定成長時代へと社会資本整備を担う建設業は、あらゆる技術開発とともに成長してきた。建設業に携わること40年。土木係りとして技術屋と呼ばれることが名誉であり、その目標に向かって真摯に取組んで来た。「社会資本整備の充実」「豊かな生活」「安心と安全」を求めるがゆえの「品質と安全の確保」そして「経済性の追及」。手段としての技術開発競争は、技術屋として当然の理念であり責任である。しかし、時においてトキや他の生物の生活を脅かしてはいなかったのか?年頭所感に今年の目標を掲げる時「トキが教えてくれたこと」が機と心に疼くものがある。昔のこんなフレーズも思い出した。「狭いニッポンそんなに急いでどこへ行く」現実は「高齢化社会の到来」「保護だ!介護だ!バリアフリーだ!」・・・建設業が社会貢献を目指す時、真の社会貢献としての建設のあり方はどうあるべきなのか?生あるもの全ての命を守るための社会資本整備が重要であり、そのための建設技術の開発が大切であると感ずることは高邁過ぎるのだろうか?寒風のなか、今も真っ赤な顔に黒く光った眼差しのトキがじっと私達を監視している。
(所属:(株)大林組 氏名:大井和憲)

3年前,初めて佐渡島を訪ね,トキ保護センターでトキを見る機会を得た.その時も,何とも表現のできない美しさに感動を覚えたが,今回の特集で拝見した写真ではより一層生命力が増したトキの姿を見ることができた. しかし,一度は絶滅に追い込んだヒトの手によって再び空にトキが舞う.その事実を重く受け止めていきたい.何のためにトキを空に戻したのか.もちろん,絶滅に瀕したトキの保護という目的があるだろうが,それは同時に現代の人々の生活をもう一度考えてみようというメッセージも込められているのではないか.人間本位に開発を進める時代は終わり,自然との共存が叫ばれている今日である.トキという不思議な鳥が,昔と今と,そして未来の生き方を再考する良い機会を与えてくれている,その中で私達が土木技術者として地球の未来に向けてできる事もまた考えていかなければならないだろう.
(所属:東日本旅客鉄道 氏名:吉田 知史)

「われわれの未来の暮らしと,ご先祖の暮らし方とはどこかでクロスする必要があるのではないか」という中田一真氏の主張もさることながら,彼の撮った鮮明な野鳥写真に目と心を奪われた.トキの水浴びシーンやイヌワシ,コウノトリの飛翔シーンは素晴らしく,記事を読まずにはいられなかった.このような一瞬ハッとするような写真が増えるならば毎月の学会誌到着が楽しみになるだろう.
(所属:鳥取大学農学部 氏名:芳賀弘和)

■ 第5回 コンクリート表面を美しく 亀谷 一洋

コンクリートにとってあばたは切っても切り離せないものだと思っておりました。学生時代にコンクリート実験の供試体を打設した後の脱型時にあばたが出たときの悔しさを思い出します。メカニズムや効果については検討中とのことですが、実にシンプルな器具で解決できるのだなと関心致しました。 とても素晴らしい技術だと思います。
(所属:首都高速道路(株) 氏名:石原陽介)

コンクリート構造物の表面に生じる“あばた”は、その大小を問わず「百害あって一利なし」の典型ではないかと思います。見た目が悪く表面強度も低くなる。これを減らそうとバイブレーターをかけ過ぎると、今度は骨材の分離が誘発されてしまいます。本誌ではこの深遠な問題に対し、シンプルで効果が高く誰にでも扱える器具を紹介しています。当記事は実は開発ストーリーなのですが、同時に製品紹介にもなっているのです。ページ数は少ないですが、このことは土木学会誌としてとても重要なことだと思います。学会誌ですからソフト記事が多くなるのは仕方がないとしても、やはり現場や施工方法などハード面にも目を向けないと土木学としては不十分だからです。そういう意味で今回のような器具の紹介は、現場を重視する姿勢が見られて好感が持てました。施工者にとっては簡単で効果のある道具は100の理論にも匹敵しますし、それが高耐久につながるのです。
(所属:岡山県 氏名:松永 誠)

■ 第1回 全国輸出入コンテナ貨物流動調査 松良 精三

5年毎実施される全国輸出入コンテナ貨物流動調査に基づいて、海外トランシップ率が2003年、2008年と20%近くに達していることが紹介されている。我が国の港湾の地位が相対的に沈下しており、国際海上コンテナの取扱量の減少が日本経済に与える影響が危惧されている。日本経済を復活させるためにも、三大港湾のスーパー中枢港湾プロジェクトが早急に推進され、港湾管理者、ターミナル運用主体、さらには、背後商業圏が一体となった臨海部物流拠点の形成が望まれる。国際競争力の強化が図れることで、2013年の海外トランシップ率の推移に注目したい。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 公共事業の必要性は理解されているか 原 恒雄

「公共事業バッシングを嘆いているだけでは進歩が無い。説明責任を果たしていなかったことを反省し、説明に努力せよ」と指摘された。「科学的に解りやすく国民へ説明」できるのは、専門家としての土木技術者だけである。テレビでは、元NHK記者の池上彰氏の「わかりやすい解説」が大流行である。土木技術者も努力しなければならない。
(所属:東日本高速道路(株) 氏名:伊勢田敏)

■ 我が国の子ども達の学力について 木村 孟

ゆとり教育によって子供の学力は大きく低下した。特に理科系科目ではその傾向が顕著であった。ゆとり教育に対する反省から、学習指導要領が改定されてはいるが、大事なことは教える側、すなわち教職員や親の資質であると思う。 現在の日本は子供を育む環境としては非常に悪いように感じる。著者が指摘するようにゴールデンアワーには極めて低俗な番組が流れ、親も一緒になって喜んでいるからどうしようもない。我が国は資源もないのだから、科学技術で勝負していかなければならない。まさに技術の低下は国力の低下を招く。まずは興味を持つことが大切。子ども達が勉強に興味が持てるような環境造りを国民全体で真剣に考えなければならない。
(所属:東洋建設 氏名:澤田 豊)

子供も大人も理科離れが進んでいるというのは嘆かわしいことだ。理科の中でも建設関係は特に興味の外にあるのではないだろうか。毎年、科学技術週間などに各種の研究機関が一般公開を行っているが環境、宇宙、農林食品、物理、化学系の研究所の公開に比べて土木建設系の研究所公開では集客もそれほど多くなく、いまひとつ人気がない。また、毎年、秋に科学未来館で催されるサイエンスアゴラにも建設土木系の展示や発表はほとんどない。小中学生が夏休みに行う自由研究のテーマに土木や建設系が取り上げられているのを見るのはまれなことである。私たち技術者は建設技術に理解を深めてもらう努力をもっとする必要があると思う。そうすることが、公共事業の必要性を理解してもらうことにもつながると考える。
(氏名:高橋麻理)

子供から「どうして勉強しなきゃいけないの?」こう問いかけられて、子供が納得できる答えを言える大人がどれだけいるだろうか。本論説は、この答えを見出す道標ではないかと感じた。日本は自然災害も多く資源に乏しい。このような日本が現在の水準まで発展できた理由は技術である。それを下支えする勤勉な国民性である、と指摘する者も多い。日本の将来を展望した時、日本が生きる道は技術と、それを維持向上させる土壌としての豊かな教育である。理数離れに対する指摘は、小資源国ニッポンの将来を見据えた時、日本における生活水準の低下を意味するのではないか。「一生懸命勉強しないと、楽しい生活ができなくなるんだよ。」「どうして?」このような会話を通して子供にも技術の大切さ、勉強の大切さを教えてあげたい。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

子どもは親の背中を見て育つ.数学や理科が嫌いという子どもが増えているのは,そういう親が増えているからだという指摘には賛同する.しかし,事態を改善するために大人の生き方を変えるのはかなり骨が折れると思われる.そこで,子どもが数学や理科の学習を通じて「成功体験」をつみ,それらの科目が好きになるような仕組みづくりを提案したい.たとえば,数学や理科で,高校野球の甲子園のような場を設けて優勝者を称えるなどしてはどうだろうか?方法はともかく,男女の区別なく「あ〜,数学や理科を勉強しておいて本当によかった!」と思える環境を速やかに整備することが,これからの日本の明るい未来に是非とも必要であると考える.
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

我が国の子ども達の勉学意欲の低さ、また、理数離れが指摘されて久しい。自然資源を有さないわが国は、科学技術に基づいた「ものづくり」ができる子ども達の学力の育成が必要であると思う。現政権下の事業仕分けで科学技術に対する予算を徒に削減するのもナンセンスだと思うが、子ども達の理数離れの原因は、我々大人の科学技術に対する関心の希薄さであり、教員のリテラシー不足であることが指摘されている。「ゆとり教育」のつけに危機感を持ち、学校だけでなく、社会が一体となって、自然現象に感動し、興味を持つ子供を育てる環境を育てることが必要であると考える。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

我が国が高度成長を成し得た要因のひとつは科学技術であった。また、民主党新政権も科学技術を中長期成長戦略の重点ファクターとして位置付けている。にもかかわらず、我が国の子ども達の「理数離れ」の現状を改めて認識し、危機感を覚えた。子どもの人格形成に親が与える影響は極めて大きい。私の父親は土木技術者ではないがエンジニアで、子どもの頃はよく科学に関する話をしてくれた。自分の専門分野を決めるに当たり、父親の存在から少なからず示唆を得たと思う。反対に、「数学なんて難しくて分からない。実社会では役に立たない。」というような話を聞かされていたら、勉強する気も起きなかったであろう。子どもの「理数離れ」を改善するために、大人の果たすべき役割は大きい。
(所属:清水建設 氏名:河田雅也)

日本人の子ども達について、著者は、理数系科目において「学力低下」よりも深刻な「勉学意欲の低下」が進んでいると警告している。記事では子ども達の理数離れについて述べられており、理数離れが危機的状況であることを改めて感じた。その原因について、最も重要視しているのは、「大人の科学技術に対する関心の低さ」であるとしている点に共感できた。理数離れの背景には「文理格差社会」「文系優位社会」が存在しており、これが大人の科学技術に対する関心の低さに繋がっているのではないか。著者の述べるように、教育現場を変えると共に、企業や官庁も意識を変革していかなければ、理数離れは加速するのではないかと感じた。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:山口 洋史)

■ 既設構造物をくり貫く控えアンカー鋼管矢板式岸壁の施工 堀 勇一郎、石崎 誠

鋼管矢板の利用方法について,今回特に興味を持ちました。弊社では,鋼矢板,および鋼管矢板の継ぎ手部分に使用するウレタン系止水材を製造しております。ウレタン系止水材は,海水を含めたアルカリ水でも水道水並みに水膨張する特性を持っています。この技術は,掘削した土にウレタン樹脂を混合し,土壌の性能を上げる用途への展開も期待できるため,鋭意研究中です。
(所属:日本ポリウレタン工業(株) 氏名:田中一幸)

工事現場の様子を見たり聞いたりすることが好きであるため,本記事も興味深く読んだ.大変迫力のある工事内容と感じたが,掲載されている写真や図からは,なぜかその迫力が伝わってこなかった.少し残念である.
(所属:鳥取大学農学部 氏名:芳賀弘和)

■ その他・意見等

忌憚のない意見と書かれていたので、ご参考までに愚見を述べます。会長からのメッセージの5段組となっているのは、読み辛かったです。特に写真が大きく、そのバランスの所為なのかもしれません。また、横書きと縦書きが混在するのも、読みにくく感じました。全体について、初めて拝読いたしましたので、企画趣旨が1ページ目に大きく掲載  されているのも、少し驚きました。これによって、かなり読む前に硬くなってしまう印象を受けました。いっそのこと、「企画趣旨」という言葉をなくしてリード的な文章だけを入れる、もしくは、企画趣旨のタイトルをつければ、どんな内容だろ うと、読者は次のページをめくるのではないか、と思いました。
(氏名:横田 美行)

経費縮減のおり、土木学会誌のカラー頁を削減されていますが、委員会報告「デザイン賞」の紹介についてはカラーにしていただけると良かった。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

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