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土木学会誌

■土木学会誌2012年3月号モニター回答


■ 1─2 岩泉町、陸前高田市 元田 良孝

巨大津波の恐怖を味わいながらも、お二人がふるさとの海を愛おしく思う気持ちに感銘を受けました。 岩泉町が「人の家も心も近くにあるまち」として、陸前高田市が「海を避けるのではなく海を活かしたまち」として復興することを願います。
(所属:メタウォーター(株) 氏名:楠本光秀)

■ 記事2 座談会 被災地域の復興:その苦悩と展望 [座談会メンバー]家田 仁、中井 検裕、南 正昭、平野 勝也 [司会]岸井 隆幸、[コーディネーター] 布施 孝志

震災から1年が経ち,様々なメディアで組まれている特集を見ても,あらためて震災の深刻さを感じています。その深刻さとは,地震と津波による被害の甚大さに加えて,復興の難しさにあるように思います。震災特集(1)記事2のタイトルにある「苦悩」もそれを現しているように感じました。そのような中でも,震災特集(3)―福島県における復興に向けた取組み―に紹介されているように,住民とともに,復興とその課題に立ち向かっている方々には,唯唯,畏敬の念を抱くのみでした。この震災の復興は日本の「まちづくり」にも通じるように考えられ,学会としての全体の取り組みだけでなく,技術者としての具体的な課題について,学会誌を通じて引き続き伝えていただくことを希望します。
(所属:東電設計(株) 氏名:恒國光義)

本記事では、復興の現状・進展とその苦悩が非常にわかりやすく議論されており、特に復興計画についての課題の議論については非常に興味深いものでした。また、復興の検討にあたって、当面の東日本被災地域の復興のことのみならず、今後想定される東南海等の大地震のことも意識して復興プロセスの検討がなされていることに感心しました。本記事には、石巻での失業手当延長と同時に建設業の求人応募が集まらず、労働単価が高くなっているという話や、国が定めた制約である「原形復旧でなければ金を出さない」という話がありました。どちらも国が良かれと判断して決めた内容です。それが、労働意欲を低下させ、内発的な民間活力を活かしきれないといった現状を生んでいるといいます。非常に悩ましい問題です。本記事でもあったように、復興計画は早急な実施を求められますが、一朝一夕にやり遂げられるものではありません。さらには、まちづくりといった人々の将来の生活ひいては人生を左右する事業を進めていくのですから、復興を大枠で進めながら修正を加えていくことが重要なのでしょう。今後、復興が被災地域の住民の方々が納得される形で進み、笑顔があふれる町が形成されることを強く望んでおります。
(所属:電源開発(株) 氏名:小林憂三)

震災復興において、ビジョンとスピードという両立困難なテーマをどうするのか、また、投資は被災地を優先するのか、それとも今後地震が起こる確率の高い東海優先かなど、色々なジレンマが存在していることが分かった。「この悩ましさを、みんなで共有することが原点になるかもしれない」という言葉が、 とても印象深かった。がれきの受け入れを表明する自治体のニュースなど、 共有の意識が高まる話題が少しずつでも増えていけばと思う。
(所属:阪神高速道路(株) 氏名:佐藤彰紀)

■ 3─2 社会資本整備重点計画の見直しと津波防災まちづくりの展開について 福岡 捷二、澁谷 和久、池内 幸司

東日本大震災を踏まえ、わが国の社会資本政策(あるべき姿)がどのような形で見直され、また新たな取り組みについて検討がなされていたかを興味深く読むことができた。津波防災地域づくり法がいかに早く有効活用されるかが課題だと考えるので、土木学会、国交省は各地方自治体が具体的に推進できるよう、地域の特性を考慮した津波防護施設の新設についての積極的な支援、今整備すべき防災・減災の指針作りを早急に行う必要がある。その際に、国民への説明責任をしっかり行うことが、土木のイメージアップにも繋がると考える。
(所属:高山運輸建設(株) 氏名:高澤謙二)

東日本大震災から1年が経過した。私はあの日以来、リスクに対して真剣に考えるようになった。それまでは、発生確率の低い事象は、ほぼ発生しないということであまり重要視しせず、リスク対策も熟慮が足りていなかった。未熟な技術者であり、反省しきりである。低頻度大規模災害のリスクに対してどう備えるのか?本文に記載の通り、やはり人命を守ることが第一の基本であり、減災という視点でハードとソフトを組合わせた総合的な多重防御が必要だと思った。そして、何より、今回のタイミングでその方法の結論・方向性を出した後も、たゆまずに継続して議論・検討を続け、常にリスクへの対応方法をブラッシュアップさせて行く必要があると思った。
(所属:日特建設 氏名:田中 尚)

■ 3─3 耐災信頼性に重点をおいた道路政策への転換 森 昌文、家田 仁

大震災から丸1年が経った節目の日、復興が進んでいる地域、復興がなかなか進まない地域をテレビや新聞からの情報で、数多く目にした。各地域の復興を促進するためにも「道路」の早期復旧が欠かせない事柄であると思いますが、一般道の復旧にはまだまだ時間がかかりそうなため、一日でも早い復興を願います。全国にある幹線道路の中で、優先順位付けし、ネットワークの整備・強化していくことは困難なことであると思いますが、地震大国であるわが国において、災害時でも幹線としての機能を確保できるよう効果的な強化を期待したいと思います。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:勇 龍一)

■  東京港臨海道路( II 期)の開通「東京ゲートブリッジ」竣工 福西 謙

多くの新技術や特徴的な外見が,日本の高い技術として世界から注目されるので,今後もこの様な土木構造物の建設が増える事に期待したいと思いました.また,一般の人の目を引く構造物でもあるので,東京スカイツリーに続く観光スポットの一つとして注目されることに期待したいと思いました.要望としましては,具体的な場所がわかるようなもう少し詳細な地図があるとよいと思いました.
(所属:東洋建設株式会社 氏名:山野 貴司)

様々な土木インフラにあって、「港湾」とは特に市民から遠く感じられる施設ではないだろうか。港湾とは、本質的には物流施設であり、市民の親しみや愛着を集めるということ自体をあきらめてしまっている感がある。また市民のほうも、港湾とは物流の現場であり近づきにくいところだというイメージを持っているだろう。港湾の物流機能や必要性が世間に認知されたり、在り方が市民の間で議論されたりするようになるためには、やはり港湾自体が実体として市民との繋がりを獲得しなければなるまい。そのように考えたとき、記事で「観光スポット」「土木遺産」と評されたように、東京ゲートブリッジの竣工が話題をよび多くの市民が訪ね、そのことにより、港湾への関心が集まるきっかけになるのだとすれば、港湾と市民の繋がりを創出し得る象徴的なプロジェクトだとさえ思うのだ。
(所属:国交省 氏名:鈴木高)

■ 各分野の出来事

脈々と毎月刊行され続けていく土木学会誌にあって、本企画にように“年単位”の年表型式で記録を残すことには、ちょうど索引をつくるような意味があると思う。つまり、そもそも土木学会誌は毎月刊行されるものであるため、年ごとの記録をあえて一から作成するまでもなく、このようなANNUALのページから過去の各月号の各記事への“リンク”ができれば十分とも考えられる。具体的には、新垣氏による「道路」についての記載には「○月号Photo Report」との参照が示されているが、まさしくこういった仕組みこそが、過去の学会誌もまた手にとるきっかけにさえなるような、よい一工夫だと思う。
(所属:国交省 氏名:鈴木高)

■ 記事2 インタビュー 福島県内各市町村における動き

先の学会誌において掲載された岩手・宮城県の事例では、大災害時の対応と復興に向けた土木としての大きな役割が感じとられる内容であったのに対し、3月号の福島県の事例は原発事故対応が多くを占めており、学会誌としては異色の内容の記事となった。実際、私は土木技術職員にとって放射能対策は全くの別次元の問題と思っていたところであるが、今回の原発事故を起因とする道路等の土木施設の放射能汚染により、否応なく放射能問題に巻き込まれ、答えのない対応に非常に苦慮している。人々の生活の基盤となる土木の仕事は、あらゆる危機から逃れることができないようである。そのため、土木技術者は多くのことに関心を持ち、どのように土木に関わってくるのか想像力を持って、不測の事態に立ち向かえる力を得なくてはならない。そうした意味から、今回の記事の内容は、危機的な状況に対し現場の職員が身を削って得た経験であることから、多くの読者にとって教訓となったのではないか。
(所属:福島県 氏名:小林元彦)

福島県内の、まさに震災の最前線となった各市町村で、現在も復興の最前線で働いておられる方々へのインタビューを、下手に編集しすぎずそのまま11篇掲載する。土木学会誌でなければなかなかできない企画だと思います。インタビューに登場した方々は同じ災害に直面し、基本的には同じ問題意識をもって日々復興に向けて苦闘されていますが、インタビューの中の何気ないお言葉からも各地の被害状況や立場の違いが感じられ、今回のような広域災害からの復興の難しさを感じられます。皆様の生の声に対し、自分ならば何ができるだろうかと考えさせられました。
(所属:大林組 氏名:海老塚 裕明)

■ 2-2 東日本大震災への対応と震災から学ぶこと[語り手]小山 健一氏

「市長のせいにして構わないからやれ」震災初動時の相馬市長の言葉には強い責任感が感じられ、職員の士気は大いに上がったと推察できる。その影響もあるのか、誌面における、相馬市復興計画に伴う意思決定のスムーズさが感じられ、早期復興の期待を高めるものとなっている。その一方、がれき処理後の放射能を伴った焼却灰処理についての問題解決が遅々として進んでいないと言う。国が関与することで復興スピードが落ちることは本来あってはならないことであるが、放射能という非常にセンシティブな問題だけに、政府はできるだけ早く、関係自治体とのコンセンサスを得て、その解決に道筋をつけて欲しいと思う。
(所属:高山運輸建設(株) 氏名:高澤謙二)

■ 提言1  地殻変動にみる3.11巨大地震の予兆 神山 眞、杉戸 真太、久世 益充

わが国の社会資本整備が維持管理の時代に突入したと言われ、もう久しく時が経ったように思える。維持管理の概念で最も難しいのが予測であり、突発性の変化を示す事象を相手にする場合は尚更である。地震予知はその最たるものであるが、本稿では着実に整備されてきたGPS観測網のデータを活用し、3.11巨大地震発生前の地殻変動を見いだしている。データとは、個々の値では評価できないものも、数多くあることによって有意な傾向を導き出すことができることを改めて考えさせられました。持続可能な社会を達成するための課題のひとつである予測技術も、工学的な裏付けとなるデータを地道に集めることが肝要であり、そのためにも一見異分野と思われる技術分野にも広くアンテナを張る必要があると思いました。
(所属:開発設計コンサルタント 氏名:野嶋 潤一郎)

地殻の予兆変動がプレート間地震の絶対的特徴とするには早計ですが、今回の巨大地震のプレスリップを暗示するデータが示されていると思いました。地震予知は困難ではありますが、予知ができれば減災効果が大きいことに異を唱える人はいないと思われます。今回示された地殻変位データを始め、種々のデータを総合的に活用した予知システムの構築が待たれます。
(所属:メタウォーター(株) 氏名:楠本光秀)

■ 警戒区域内の国道6号応急復旧工事相原 孝次、福原 哲

本工事に携わられた方々に対し尊敬の念と感謝の思いで一杯です。応急復旧工事の時期からしても、「警戒区域」といわれる情報の信頼性も定かでない状況であったことが想像されます。放射線管理下という平時と勝手が違う状況下での現場作業には、想定外のアクシデントや多大な労苦があったことと思います。自発的な工事への参加を原則とする中で、集われた職員、作業員の方々の使命感と勇気に敬服するとともに、避難住民の一時帰宅に間に合わせるための短期工事のプレッシャーの中で工事を完遂されたことは土木技術者にとって誇りです。本記事のように、震災後、きらびやかなスポットライトがあたらない被災地の各所で奮闘する土木技術者がどれだけいることでしょうか。一番大変な所で頑張っておられる方々は、まさに復旧・復興の陰の功労者であると私は思います。震災から一年経ち、少しずつ震災関連のニュースが減っていく中、今もなお現場で奮闘される方々の安全と健康を願うとともに、これからも自分にできる支援を継続することが重要であると改めて感じさせて頂きました。
(所属:(財)日本水土総合研究所 氏名:橋直樹)

■ 企画趣旨 宮田 正史、田畑 宏司

非常に興味深い内容であり、「土木の世界は、まだまだ面白いことがいっぱいある」という言葉が印象的であった。ただし、「新技術の導入過程とその波及効果」という力強い副題の割には記事の分量が少なく、新技術や波及効果やコスト低減などの具体的な部分についての詳細が分かるような記事ではなかった点が残念である。今月号と4月号とに分けて掲載されるとのことであるが、ひとつにまとめた方がよかったのではないかと思う。
(所属:東亜建設工業 氏名:鈴木 耕司)

■ 第63回 医者、用水路を拓く 岩屋 隆夫

「安全とは」との設問の中で記載されているように、自身が予測できず「安全」と思い込んでいることは数多くあると思います。「今までは大丈夫であった。」「従来はこのように行っていた。」といった事柄に対しても、思い込みにより安全に対する確認を怠るのではなく、何にでも疑問を持って、今まで以上に安全で良い「もの」ができるよう努力していきたいと思う。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:勇 龍一)

■ 構造物の技術基準について 石橋 忠良

構造物の技術基準については、以前より事業者毎に異なることが大きな課題になっていたと思います。これは、事業者の縦割り行政の弊害であり、非常に無駄を発生させていたように感じています。今回の東日本大震災の復旧・復興に関しても、事業スピードに支障する部分であり、論説にあるように統一を考える良い機会(最後のチャンス)と思いますので、学会等が中心になって実行していただきたい。例えば“構造物マニュアル”として一体化できると、設計・施工の品質の向上、技術者の確保、トータルコストの縮減に大いに寄与すると思います。
(所属:小柳建設(株) 氏名:金原義夫)

筆者の提言は、わが国のインフラ輸出戦略に影響を与えるものだと思う。用途が絡み合った重要構造物に土木・建築の国内統一技術基準が設けられていないことは、諸外国にとって理解されないものかも知れない。この問題を解決するための第一段階として、土木学会と日本建築学会との横断的な議論が必要になってくる。国民生活の安全・安心のため、両学会は基準を作る役割を担っている。基準を作るには、まずは垣根を越えた人事交流からスタートしてもらいたいと思う。 
(所属:高山運輸建設(株) 氏名:高澤謙二)

■ 平成23年度 土木の日およびくらしと土木の週間 報告土木の日実行委員会

わが子たちに、土木の日というのがあるが知っているか?との問いに、知らないとの答え。一般的に、恐らく、ほとんどの生徒、学生は知らないのではないだろうか。本誌では、新宿において展示イベントが実施された様子や、各支部のイベント活動の様子も掲載されていた。こうした取組みにもかかわらず、これだけ知名度がないのでは、関係者のモチベーション維持に苦労されるのではないでしょうか。特に土木学会には予算面に課題はあるでしょうが、土木の日の1週間前からヤフートップページなどに広告を提供するなど集中PRをしてはどうでしょうか。その際、社会資本の整備に大切な役割を担う土木事業の必要性を国民に浸透させる工夫があれば更によいと考えます。
(所属:高山運輸建設(株) 氏名:高澤謙二)

全国の支部において開催された各種のイベントや講演会により土木に携わる方以外にも広くアピールした行事が多くあった。一線で活躍されえる方々が一堂に集い語られたシンポジウムにおける、土木への期待と市民へのアピールの難しさについて非常に興味深く感じた。土木と言う分野は、我々の生活に密着しているがゆえに興味を持ってもらうきっかけが難しく、市民目線に立った説明が大切であるという、ある意味、合い反する性質を持っていると改めて感じた。その中で、ダイナミックな工作機械や工事現場、日頃は立ち入る事の出来ない現場の見学会について多くの参加者がある事は、土木の人間では日常である現場の中にも市民の目線で見ると結構魅力をもったものがあるのだと気づかされた。こういった視点をもっと大事にしたいと思う。
(所属:中野区役所 氏名:諸井 敬嘉)

■ その他・意見等

3月号において、初めて自分が寄稿した「モニターの声」欄を拝見した。しかし、「声」の対象にしている1月号は、かなり昔に刊行されたものであるように思えてしまう。つまり、ここに記載されたそれぞれの「声」に、鮮度がないように思えるのだ(さらに「声」が土木学会ホームページに掲載されるのはかなり後だとすると、そちらを参照しようと思う人など、もはやいないのではないか)。もう一点指摘したいのは、「3.11を相対視する」という座談会記事にみられる、「東日本大震災から8カ月(座談会当時)が過ぎましたが」という発言(P.31)。震災一周年特集であるはずの3月号なのに「8カ月」と記載されており、学会誌では4カ月も前の議論を追っていることになるのである。4カ月も前の議論が掲載された学会誌に対して、2カ月後にモニターが「声」を寄せる(さらにそれよりまたずいぶん後に「声」がホームページに掲載される)、という非常にスピードの遅いディスカッションには、オンラインで情報伝達が素早く行われるようになった今日にあっては大いに違和感を抱く。せめて「モニターの声」を翌月掲載にすることができないか。
また、土木学会では昨年にFacebookページも作成され、リアルタイムでの情報発信や議論が可能となったわけだが、そこでの議論ももっと賑やかになればとも思う。
(所属:国交省 氏名:鈴木高)


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