公益社団法人土木学会


令和元年度認定
旧運河橋
石狩市 竣工年:1936(昭和11)年(昭和56年移設)
旧運河橋は、鋼材の節約や軽量化、美観の向上を目標に新技術導入に挑んだ先人の気概を示す北海道で最古、国内でも最初期の全溶接単純鋼鈑桁橋です。
 「旧運河橋」は全て溶接で製作された単純鋼鈑桁橋です。昭和11 年(1936 年)に石狩川につながる志美運河に架設されました。本橋が製作・架設された当時は橋梁における溶接技術導入の初期で、道路橋では北海道内で最初、国内でも昭和10 年(1935 年)の田端大橋などと並び最初期の全溶接橋です。近づけた金属の隙間に高電圧でアークを発生させて、金属を溶かして接合するアーク溶接は当時主流だったリベット接合と比較して高い技術が必要でした。設計・製作に関する基準の制定が昭和15 年(1940 年)で、戦後になってから橋梁で溶接技術が一般化したことを考えると、本橋の技術的先駆性は特筆すべきものです。また、当時は現場に電力設備がなく、上流の工場で組み立てた後、はしけに載せて曳航し、ジャッキアップで一括架設が行われました。このような一括架設も北海道で初めてとされており、当時の技術者が環境の厳しい北海道で新しい技術に挑戦した証を今に残しています。
 橋長16.3m、幅員5.5m のほぼ全体が、昭和56 年(1981 年)に「川の博物館」に移設され、保存・展示されています。

志美運河に架設されていた運河橋(佐々木光朗:北海道の鋼道路橋の歴史、1975.)

「川の博物館」での保存状況

説明板

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関連文献リスト
土木学会鋼構造委員会歴史的鋼橋調査小委員会:鉄の橋百選−近代日本のランドマーク102 運河橋 極寒の地の全溶接橋、pp.204-205、1994.
・遠藤秀臣、石川博宣、安岡富夫:北海道で最初の全溶接橋梁−運河橋の調査報告−、サクラダ技報、No.7, pp.20-27, 1991.
・北海道開発局開発土木研究所構造研究室:北海道で最初の全溶接橋梁運河橋の鋼材について、構造研究室資料第1 号、1989.
・佐々木光朗:北海道の鋼道路橋の歴史、1975.